最終講義
先日やった部屋の模様替えの際 卒業した大学の会報が 出てきた。封がしたままだったので 「後で読もう」と思って 部屋の片隅に積んでいたのだ。
その中の1ページに 目が とまった。
法学部の学生時代に お世話になった山火正則教授の退任報告と その最終講義の内容が 掲載されていた。
一生を刑法の研究に捧げた人の大学での最後の講義
先生が 選んだテーマは 「犯罪と刑罰を考える」
なぜ 人は 罰せられるのか
なぜ その行為が 犯罪なのか
なぜ 国家は 人を罰することができるのか
なぜ その犯罪に対し その量刑なのか
最終講義にふさわしく刑法の根本的なテーマだった。そして もっとも 熱いテーマなのだ。
学生時代 このテーマをめぐり 取っ組み合いに近い議論が できたかどうかが 法学部生として 幸せだったかどうか 決まると 僕は 思っているほど 重いテーマなのである。
現学部生 そして 教授を慕う卒業生 同僚の教授達を前にして 先生の考えが 簡潔だが 強く 主張されていた。
文章にしても この主張の強さ 熱さが あるのだから 当日 この最終講義を聞けなかったことを 大変残念に思った。
当時 先生の指導のもと 議論を交わしていた二人の友達は いま 法律の道を 歩んでいる
ひとりは 国家公務員一種試験に合格し 法務省に入り エリート官僚として 刑務所の運営改善について 尽力している
もうひとりは 裁判所職員になり 現在 最高裁判所に席を置き 裁判員制度の事務方として頑張っている
二人とは 毎年一回は会い 守秘義務以外の話を 聞いている 興味本位で国家機密を 飲み会の席で聞くのは やはり 友達同士でも マナー違反なのだ
スピード違反で捕まって 腹を立てている僕と 同じ気持ちで 二人が この最終講義を 読んだかどうか 今度 膝を突き合わせて 議論してみよう