蛍の住む庭
4.5年前に外構工事をやらせていただいたお客様のところへ 久々にいった。
その時に取付させて頂いた日除け用オーニングの角度調整の為だ。
お世話になったお客さんの家に 久々にいくのは 僕の楽しみの一つだ。
きれいになっている家もあり 汚くなっている家もあり・・・・ いずれにしても 一回きりの付き合いでないこと自体が うれしい
「うっ」
正直 驚いた。
「変わりましたねー」
当時は ほとんど なにもなかった庭。
植木屋さんが 少し大きい植木と 庭石と 芝生を 貼っていたことは 記憶にあった。
「ほとんど 自分で やったんだよ」
「えーーー こんなに立派に作られたら 僕らの出番は ないはずだ」
「あれ なんですか? 川作ったんですか?」
広い芝生の中に 幅30cm程度の川が 流れている
それなりの水流もある
「フフッ そうなんだよ。 これが作りたくてね。井戸まで 掘ったんだよ。でも これは 水中ポンプで 循環させているけれどね・・・・・・・・ 社長 よーく 見てみてよ 川底に 貝みたいのいるだろう」
「あれ これって もしかして カワニナじゃないですか? とすると もしかして・・・・」
「そうなんだよ 蛍を 飼っているんだよ 今 結構 夜になると 飛ぶんだよ」
「どこから 蛍捕まえてきたんですか?」
「いや 社長 それが 今の時代は インターネットで 蛍も カワニナも売っているんだよ。それを知ったら どうしても 庭で 飼ってみたくてね。一生懸命 穴掘って 作ったんだよ」
「へー この流れは この池に 最終的に流れ込むんですね。でも この距離だと 結構 水が 蒸発しちゃって この夏は 大変だったでしょう?」
「おー さすが 社長だ!細かいところ知ってるね。 じゃあ これ見てよ」
お客さんは 池の脇に隠されていた水中ポンプと配電盤を 見せてくれた。
「この水中ポンプの脇の浮玉(フロート)が 水位の変化を感知すると センサーが 働いて 井戸の圧力スイッチに対応して 自動で 井戸水を池に供給し 一定の水位を 保つように・・・・・ナントカ カントカ・・・・」
配電盤の中には オリジナルで 作られた基盤が ビッシリと取り付けられていた。
「旦那さん・・・ 昔 何屋さんだったんですか?」
「僕はね 工場プラントを設計するエンジニアやってたんだよ」
「なるほど・・・ はっきり言って ここまで システマチックにした人 みたことないですよ。 このシステム 売れるんじゃないですか!いやー貴重な物を見せて頂き 勉強になりました!」
「ハハ 庭に蛍を 飼う人が いっぱいいればの話だけどね」
そんな風に照れながら言う旦那さんの顔は 確かに輝いていた
エンジニアとしての知識を使い 自分で 庭を作ったという満足感は 庭を乱舞する蛍の光を 一層 輝いてみせることだろう。