「Z」は 停めるな!
小学校の時からの友達から 「ちょっと 見てくれないかなー?」と 呼ばれた。
階段脇の土留めにヒビが 入り 泥が 流れてきてしまうので モルタルで 埋めてほしいという簡単な仕事の依頼だった。
「うっ ムムムム・・・・・」
「これは まずい まずい・・・・・ いつも この土留めの下に車 停めてんの?」
「そうだよ 軽自動車2台と たまに 俺のフェアレディZが 停まってる」
「うーん 今日からでも 停めるの やめたほうがいいよ 絶対」
このヒビは つい 最近 できたものではないらしい。
2.3年前に いちど 隙間にモルタルをつめて 修復したことが あったらしい。
ヒビは それから さらに 拡大している
と いうことは すなわち この土留めの傾きが 大きくなっていることを 意味する。
「これは 補修じゃ すまない。 下から 全部 直さないと 大変なことになるよ」
隙間を 埋めるだけと 思っていたお母さんの表情は固くなったが 僕は もう 代替案なしに とにかく早く この土留めを 壊すことを 主張する。
今回は 絶対に 妥協しない。
取り壊すことで 納得してもらった。
工事開始までの間に 東北で 地震が 発生した。
「まさか あいつ 車 停めてねーだろうな」
ブロック屋とは 一度 現場を見てしまったら 寝ても覚めても その現場の事を 考えてしまう人種なのである。
「あっ おかあさん あのー 地震のテロップがテレビで流れるたびに 僕 不安になってしまうので 明日 とにかく 壊します。」
「えっ 植木とか いろいろ片づけようと思っていたのに・・・・・」
「とっておく植木だけ 選んでくれれば あとは 僕たちがやるから 土留めに近づかないで」
次の日
道路に ブルーシートを敷き その上に さらに道路に傷がつかないようにベニヤ板を敷く
土留めの高さを計り 重機の停める位置を 微調整する
ヘルメットよし ゴーグルよし 退避よし
僕が 土留めブロックを ちょっとだけ 重機で ひっぱる
「バーーーーータン!」
見事に そのまま 倒れました。
重機と倒れたブロックとの距離 15cm 計算が うまくいった
グッドジョブ
土は 崩れず そのまま 自立していた。
約30年間 よく これで 大丈夫だったもんだ。
今度は 丈夫につくるから 「Z」を 停めてもいいよ
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