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冬の西芳寺

テーマ:ガーデン
この1月、娘の冬休みを使って再び京都を訪ねました。
2泊3日の慌ただしい旅でしたが、まだ雪の残る修学院離宮、仙洞御所と京都御所、桂離宮、永観堂から法然院に至る哲学の道、仁和寺の大伽藍と、厳しい寒さの中、古都の冬を満喫しました。

どの史跡も素晴らしかった中、それでも圧巻は西芳寺だったと思います。

花の季節でも、最も美しい紅葉の時期でもなく、たしかに冬の庭園は淋しいと思いながら巡って来ただけに、西芳寺庭園の鮮やかな美しさはとても新鮮な驚きでした。

西芳寺01

もともと西山のこの地は水の豊かなところ。
日本の冬の、あの乾いた風の影響さえ受けなければ、苔の緑はかくも鮮やかなのですね。

西芳寺02


そうすればここには冬の枯れ木立は無く、あるのは豊かな緑と水面の輝き、そしてかすかなセンリョウやマンリョウの実の、朱ばかりです。

西芳寺03


いやむしろ、西芳寺庭園の真価はこの冬にこそ発揮されるのではないかとさえ、感じ入ってしまいました。

西芳寺04

西芳寺05

ね、ほら、分かりますか?

光が庭のずっと奥まで届いています。

西芳寺06

冬の角度の低い光線だからそれは遠くまで届き、夏のように強烈な光が乱反射するのでなく、まっすぐな光線はくっきりとした影を産み出すのです。
明暗のコントラストが景色に奥行きを与えます。
そして、紅葉を散らした落葉樹のおかげで随所に明るい空間が生まれます。

その不思議さ。

西芳寺07

何とも言えぬ美しさに酔いしれました。

西芳寺08

そして、苔と石たちのコラボレーションの妙。

西芳寺09


西芳寺10

忘れてはいけません。
この西芳寺庭園は一時期忘れ去られてすっかり苔に覆われてしまう以前、池泉回遊式庭園と枯山水の、ふたつの
庭園から構成されていたのでした。
上段の枯山水もすっかり苔の中に埋もれてしまった訳ですが、だからこそ生まれた景色がここにあります。

西芳寺11

西芳寺12

石と苔と赤い実が織りなす様々なバリエーション。

西芳寺13

さらに飛び石、というより延段…

西芳寺14


その幾何学的な意匠が、苔の庭に産み落とした思わぬモダニズム。

西芳寺15


とても面白いと思いました。

冬の京都。
本当に身の凍る寒さでしたが、心から楽しむことが出来ました。

西芳寺16




よろしければ、ホームページもご覧下さい。
 http://www.yui-garden.com/






















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ハムステッド・ヒース~イングリッシュ・ガーデンの旅 16

テーマ:イングリッシュガーデン
イギリス最終日2008年6月25日。
この日は完全フリーの一日でした。

当日の記録があります。

イギリス旅行7日目 /終日単独行動/ホランドパーク~ケンジントンパレスガーデン~ホームズ博物館~ハムステッド・ヒース(ガーデン、ケンウッドハウス、森散策、キッチンガーデン)~フェントンハウス・ガーデン~ハムステッドのパブにてビール~チェルシー・フィジック・ガーデン周辺散策~ナショナル・ギャラリーにて絵画鑑賞(夕飯も)

このうちの今回ご案内するハムステッドの森は、さる解説書によれば、


ロンドン北部に位置するハムステッド・ヒースは、起伏に富んだ丘陵地に手つかずの原生林が残る貴重な公園である。敷地面積は約790エーカー(3.2平方キロメートル)とロンドン最大。いくつもの小高い丘、広々とした牧草地、鬱蒼(うっそう)とした森林地帯など多彩な表情を持ち、18の池が景観にアクセントを添えるように点在している。


その森をぐるりと1周しながらなおかつこのスケジュールがこなせるのは、昼間が17時間もあるこの時期のイギリスならばこそ!

この日、他のメンバーはショッピング組の他、観劇グループと折しも開催中のウインブルドン観戦グループとかに分かれましたが、同室の建築家の佐野さんは一人建物の探訪に、そしてわたしは一人森の散策に!

とにかく広大な森を歩きたかったのでした。

ハムステッド

ハムステッドはロンドンから地下鉄を使って20分で行ける閑静な住宅地です。
その町中を抜けて…

ハムステッド・ヒース01

途中、整備された美しい公園や庭園も有りましたし、ケンウッド・ハウスという著名なカントリー・ハウス(現在は公開されその絵画コレクションも魅力的)も有りました。キッチン・ガーデン(と呼ぶには余りに広大)も印象的でしたが、今回はその主な目的である森の散策に絞ってご案内します。

ハムステッド・ヒース02

ハムステッド・ヒース03

ハムステッド・ヒース04


この辺は景色としてまだメリハリのある辺りですね。

だんだんとひたすら森だけになってきます。


ハムステッド・ヒース05

ハムステッド・ヒース06


湖を巡り、木々を抜け、草原に分け入り、ただひたすら歩き続けました。


ハムステッド・ヒース07

ハムステッド・ヒース08


大好きなガーデンを見て歩いたこの6日間に何ら不満があろう筈ありません。


ハムステッド・ヒース09


ただ、あまりにその6日間が濃厚すぎたのでしょうね。

とにかく一度バカになりたかった。
森に還って心の中をいったん真っ白にしないと、次に進めないといった感じでしょうか?


ハムステッド・ヒース10


これはね、バッキンガム宮殿を見てもビッグベンを見ても、ウエストミンスターでもソーホーでもきっと駄目だったと思います。
このハムステッドの森でなきゃいけないという…


ハムステッド・ヒース11


うん。
この樹を見れば、それが正解だったと分かります。


ハムステッド・ヒース12


ハムステッド・ヒース13


じっさい、この後わたしはハムステッドの街中にあるフェントンハウスを訪ねてそこの今も生きているガーデンを見学し、ロンドンの市街地に颯爽と戻っていく訳ですが、


ハムステッドのパブ


その前に(真っ昼間から)パブに寄り道してビール一杯、力強く引っ掛けさせていただいたこともご報告させていただきます。





よろしければ、ホームページもご覧下さい。
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昨年のしごと~熊谷O様邸

テーマ:しごと
たまには仕事のお話しも…

と言っても昨年紹介出来なかった、5月から6月にかけて手がけさせて頂いたお宅です。

01 着手前 アプローチ 3.5.

見ての通り、建物の外観といいすでに出来上がったお庭の景色といい、随所にこだわりの見てとれるお宅で、自分がどれだけお手伝い出来るのか、どこまでお手伝いして良いものなのか…
最初、困惑したのを覚えています。

02 着手前 フロント 3.5.

最初の訪問が3月5日ですからまだ芝は茶色で宿根草も土の中でしたが、季節になればこのお庭が充分素敵な表情を見せてくれることを、見て取る事が出来ました。

03 着手前 花壇 3.5.

駐車場の整備とか、フロントを除く3方の庭の雑草対策とかのご依頼もありましたが、わたしはこのお庭全体の空間構成から踏み込んでいくことにいたしました。

04 着手前 アプローチ脇 3.5.

この3月の時点で目を惹く緑が、僅かに大きく育ったローズマリーだけだったことも有ります。
常緑樹が欲しいと思いました。

そして3方のお庭に点在する山野草やそれに近い宿根草、低木たちをどこかにきちんと居心地の良い場所にまとめてあげたいと思いました。
そうすれば、あとは防草シートと化粧砂利で覆ってしまっても差し支えないでしょう。

営業さんからもいくつか提案があったようで、わたしはそれらを盛り込んだデザインをさせて頂いたところ、お話しはすんなりまとまり、宿根草の出揃う5月に着手することが決定いたしました。
(でないと、どこに何が隠れているか分かりませんからね)

5月の連休明けに始まったお仕事は、国際バラとガーデニングショウを挟んだりして5月下旬から6月にかけて本格化します。

ガウラとエリゲロンが見頃を迎えた頃です。

05 ガウラ、エリゲロン 5.22.

場内の樹木を移動し、宿根草を堀りあげ、芝を切り取ってユーカリ・レッドガムの新材枕木でキッチン・ガーデンをこしらえて、夏野菜の苗を植えたり、

06 キッチン・ガーデン 6.5.

その合間に移植した樹木に水をやりつつ、

07 花壇 6.5.

石張りなども施工しました。

09 石張り 6.5.



およそ工事現場らしくない優雅で楽しげな仕事ぶりは、ご近所の皆さんにもさぞ楽しんで頂けたことと思います。




11 アプローチ脇 6.16.

アプローチ上に立ったとき、つい目が届いてしまう西側の庭の入口には3本のシマトネリコを植えました。
3角に組んで重ねると視線を遮りながらも、間を縫って通行が可能です。これは同時に、右手居間の窓から左手隣家の玄関を結ぶラインの目隠しにもなってくれています。
いずれ、ここはシマトネリコの小さな林が生まれることでしょう。

12 坪庭 6.16.

こちらは北側に作った坪庭です。
この庭の各所に育ってきた低木や宿根草を集めて、和室の低い窓からの眺めを演出しました。
建物に合わせてちょっとだけモダンにしたのが、並行に並べたサビ御影の延石です。

13 トウネズミモチ 6.16.


その背景を務めるのが、背景のクセして季節ごとに彩りを変えてくれる頼もしい常緑樹、トウネズミモチ・トリカラーなのでした。



6月の下旬。
植栽の一部を手伝った娘と一緒に完成パーティーに招待していただきました。

その頃になるとご家族の愛情を受けたキッチン・ガーデンはさらに充実し、夏野菜とハーブと夏の一年草が競演を始めておりまして、

10 キッチン・ガーデン 6.16.

玄関脇のオリーブもしっかり根を下ろし、移植した木々も落ち着きを見せて緑を輝かせ、

14 フロント 6.16.

お庭は、最初に訪問したときにわたしが想像したとおりの彩りに溢れ、きっと次の初夏にはさらに目を楽しませてくれることでしょう。

15 花壇 6.16.

実はこちらのご家族を起点に、じつはこの後さまざまな出会いや楽しい出来事が続いていくのですが、それはまた、次の機会に!



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 http://www.yui-garden.com/











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向井康治

ガーデン工房 結 -YUI-は、埼玉を起点に植物を中心に据えたガーデンデザインと設計・施工を仕事とする会社です。
ただし、面白い仕事であれば時には利益も距離感覚も忘れ去る脳天気ぶり。
だから、この仕事にはいつも様々な出会いがあります。人、植物、もの、本、言葉、音楽…。

結 -YUI- はネットワークです。
それは多彩な技術や知識を持った人々が持てる力を共有し合うこと。
人と自然界の美とが満を持して出会うこと。

わたしが文芸、農業、インド、土木、外構、アウトドアと巡ってきた先の到達点は、おそらくそれらみんなの要素を遺憾なく結集することのできる、小宇宙 「ガーデン」でした。

ガーデンデザイナーとして、ガーデナーとして、これまでの、そしてこれから先の「出会い」を余すことなくお伝え出来ればと思います。

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