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早春の京都 Ⅰ

テーマ:ガーデン

3月の彼岸の頃、かなり強引な日程調整をして昨年の夏に訪ねた京都を、再び訪問しました。

わたしには見たい庭があり、娘は娘でいくつか見たい寺があったようですが、何せ車を使った2泊3日の強行軍。
後にしわ寄せを残すことになりましたが、それはさておき…

初日最初は、参観予約を入れておいた京都御所です。

京都御所庭園01

急な事でしたので、桂離宮や修学院はすでに予約がびっしりでした。
御所もわたしにとってははじめての訪問で、源氏物語や平家物語に登場する建物を見てしばし感激。

でも、お目当てはやはり庭です。

京都御所庭園02

池泉回遊式庭園である御池庭。
特に名園として数えられることはありませんが、とてもよい景色でした。


京都御所庭園03


手前の州浜側から眺めるばかりなのが残念ですが、橋の先には茶室も見ることが出来ます。

早い桜はすでにほころんでいたものの、ソメイヨシノのつぼみはまだ固い、肌寒い彼岸の京都です。

京都御所庭園04


銀閣寺庭園。

わたしが以前に訪れたときに、こうして庭園を散策することは出来たかどうか…
まあ、何十年も昔のことでしたから。

銀閣寺庭園01

下段の庭の、著名な向月台や銀沙灘よりも、わたしには野趣溢れる上段の庭の方が好みでした。

銀閣寺庭園02

東山の自然の景色を取り入れた、それもまたワンダーランド。
自然を模して、けっして自然ではない。
人の手がほどよく加えられ、いつか雨風が丸くなじませた…

里山の景色の美しさに、どこか通じるものがあります。


銀閣寺庭園03

 
慌ただしく見学した御所と違い、心和むひとときでした。

銀閣寺庭園04


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サクラ~遅ればせながら

テーマ:思い
山桜

4月になっても繰り返される寒さのせいで、ふだんよりもずっと長く楽しめた今年の桜…

でも、さすがにこの関東ではそろそろ時季外れとなりました。


この季節になっていつも思い出すのは、神戸時代、住宅メーカーの年度末決算のアオリを食らって2月半ばから4月半ばに掛けて、1日も休むことなく朝の6時から夜は11時過ぎまで走り回ったころのこと…


その頃に書いた詩に、「超過勤務のはて」というのがあって、いつもこの時期には決まって思いだしてしまいます。


     およそ人間に
     やれる仕事の量じゃないぞ
     殺す気か
     と会議の席上
     苦言だけは呈してみたものの
     それでもこなしてのけるよりない事は
     誰にもまして知っている
     年に一度の年度末決算
     と
     我々のハードワークの必然性との
     連関なんぞ
     理解すべくもしたくもないが
     それがお前の仕事と言われれば
     誇りも自負も
     情熱も持てぬままに
     すでに充分疲れの溜まった身体を
     現場まで引きずっていくより
     ないのだ
     
     何の為に働くのかという
     命題に明確な解答を見出せぬ以上
     私は今日を
     明日につなぐだけの不毛を繰り返すよりなく
     つまりは昨年以来の
     ジューニシチョーのカイヨウを元気づかせ
     不意の胃痛の眠れぬ夜をやり過ごし
     運転中の記憶を失い
     幾度となく段取りミスを重ね続ける
     そうまでして
     人間と人間の時間を擦り減らす
     仕事というものを
     尊大にせねばならぬのか
     
     辞表を書いては破り捨て
     果てしの無かった二ヵ月を乗り切らせたのは
     ふいに優しい言葉を発する
     人間たちの身近な気配と
     つまらぬ見栄と
     鼻持ちならない自尊心だ
     見事
     こなし切ったという実績が残り
     この実績は確実に
     一年後のさらなる地獄を約束する
     さんざ働き
     超過勤務の代償のすべては
     跡形もなく
     妻との休暇に使い切り
     残せば何やら
     仕事におもねる自分が始まるようで
     痕跡すら預金口座に記すものかと
     完膚無きまで使い切り
     肉体の磨耗だけが私の蓄財だ
     
     そのようにして
     ようやく試みた人間の主張も
     さらに引き続く不毛に呑み込まれ
     私はここに居る
     自分を誇る何物も持たずに
     疲労して救われず
     傷めた身体を大の字にして
     思い出したように
     ここに居る


 18年が経過した今も、なにやら身に迫ってくるものがあります。

普光寺の桜2

 あの頃は毎年の春がそんな具合でしたから、当然ながら花見など楽しんだことはありませんでした。
 うーん、だから花見という言葉にはつねにある種のトラウマが伴います。

普光寺の桜3


 そんな毎日の中、休日に仕事で走り回る内に折りからの行楽日和で渋滞に巻き込まれ、ふと、桜が続く土手の上で花見を楽しむ大勢の人々を見たことがありました。
 心中はお察しのとおりですが、感情が半ばマヒしてしまっていた当時のわたしにとって、それはすでに現実のものではないどこか遠い次元の景色のように思われて、不思議な感覚にとらわれたのでした。

 別の次元に生きているのは、おそらくわたしの側だったのでしょうが…


 そんな景色を詩にしたのが次の「異形の川辺」です。

 今読むと、自分で読んでもとても難解なのですが、まあ疲れ果てて屈折しきった心の表現だったのでしょうね。


     薄紅の花の見事に
     打ち興じる人間の季節
     川べりの土手に憩う精霊は
     おぼろの空を見上げては
     決まってそこに置き忘れられる
     人間たちの古い時間を清算する
     つややかに照り映える
     土手の緑までもが意匠となる
     まどろむ時間に似たそよぎの中で
     人間はそしてどこへ行ってしまったのか
     
     真実をめぐる探究に疲れて
     鮮やかに演出された虚構に身を潜めれば
     もはやそこには
     群れた魚の影の揺れる
     川面ほどの画像が映るばかりだ
     液晶ディスプレイの中に宿った精霊は今や
     語り継がれた虚構の中の
     切ない希望を読み取る術も意志もなく
     真実すら語る間の無い
     高精度の地上を造形する
     
     人間は二進法の土手を下って
     美に関する言葉のすべてを検索する
     図らずも精霊たちと同じ方角に顔を持ち上げ
     ほのかに季節の香を含んだ
     宇宙を呼吸すれば
     濃い蒸留酒の中に秘められた記憶は
     人間がいつでも人間以上のものになれることを
     思い出させる
     
     そこに居てそこに居らず
     やがて虚構そのものとなる人間が
     それでも舞う花片の妙を愛でる夕べ
     歌い継がれた唄の繰り返される
     川岸の艶やかな樹木の下では
     愚かな生命を愚かなままで
     慈しむ懐かしい精霊が
     今もひとつふたつ
     静かに安らいでいる


桜の土手


 春になれば必ず思い出す、これもひとつの風景です。


普光寺の桜1





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4月の仕事

テーマ:しごと
なかなかリズムが戻らないリハビリ期間中なので、頑張って毎日投稿していくつもりでいますが、さて、いつまで続いてくれますやら…


以前に施工の状況を報告させて頂いた東松山のA様邸の庭園が、この4月上旬にとりあえずの完成をみました。


東松山A様邸1

幾度となく雨や雪に悩まされて、実質3週間の工程ながら1ヶ月半を要した仕事でした。

途中、彼岸の頃の強い風でメインに据えていた20メートル級のシラカバの根が浮いてしまい、泣く泣く思い出の樹を伐採するということもあって、急きょデザインをし直したりもしました。

掘り上げておいた樹木や宿根草、球根類も新たな庭園に植え直しましたが、彼らにとって遅く訪れた春と長く続いた雨は、恵みとなったと思います。

東松山A様邸3

なにより、施主様ご一家に心から喜んで頂けたのがありがたく、GWの再訪をお約束いたしました。

東松山A様邸2



このために着工が1ヶ月近くも遅れてしまっていた熊谷のI様邸が間もなく完成。
GW中には1月から準備してきた桶川のY様邸を仕上げる予定で今はその準備に余念がありません。
GW明けには2軒のお宅の工事も控えておりますし、今年は西武ドームの国際バラとガーデニングショウにも急きょ応援という形ではありますが、参加させて頂くことになっています。
…気が付いたらかなり忙しい事になっていますが、その他メンテのご依頼もたくさん頂いていて嬉しい悲鳴…。

以下、その作業や打合せに出掛けたお宅で久々に対面したガーデンたちです。

熊谷S様邸1

熊谷S様邸2


今年は昨年より多く原種のチューリップが咲きましたよ。

今年のベニバスモモの花はとても綺麗で、ご近所の評判でした。

このトキワマンサクがこんなに花をつけたのは初めてよ。

と、そんなお話を伺うのが何よりも嬉しくて楽しく、
つくづくガーデンの完成は最低でも3年。いや5年は必要かなと思いました。


深谷市N様邸1



深谷市N様邸2


今年の5月は例年以上に忙しくなりそうで、楽しみです。



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プロフィール

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向井康治

ガーデン工房 結 -YUI-は、埼玉を起点に植物を中心に据えたガーデンデザインと設計・施工を仕事とする会社です。
ただし、面白い仕事であれば時には利益も距離感覚も忘れ去る脳天気ぶり。
だから、この仕事にはいつも様々な出会いがあります。人、植物、もの、本、言葉、音楽…。

結 -YUI- はネットワークです。
それは多彩な技術や知識を持った人々が持てる力を共有し合うこと。
人と自然界の美とが満を持して出会うこと。

わたしが文芸、農業、インド、土木、外構、アウトドアと巡ってきた先の到達点は、おそらくそれらみんなの要素を遺憾なく結集することのできる、小宇宙 「ガーデン」でした。

ガーデンデザイナーとして、ガーデナーとして、これまでの、そしてこれから先の「出会い」を余すことなくお伝え出来ればと思います。

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