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フェントン・ハウス・ガーデンⅡ~イングリッシュ・ガーデンの旅 18

テーマ:イングリッシュガーデン
引き返してさらに下の段に下りると、

10 果樹園

そこはリンゴの果樹園。
まだ実の色づきには早いながら、快い間隔に植えられた果樹園の中はとても涼しくて気持ちの良い空間でした。

その北側、ノース・テラスのベンチの下あたりに温室があります。

11 温室外観

小さいながら、とても生活感があって、こんなところでこの庭園が今もしっかりと生きていることを教えてくれます。

12 温室内部

その傍らの雨水タンクも、日本のみんなが欲しがりそうな姿をしていました。

13 雨水樽


壁面の泉水は眠っていましたが…

14 壁面水栓

果樹園の南はとても充実したベジタブル・ガーデンでした。

ガーデンのスタイル展示というのではなく、本当に自給を実現出来る広さがあります。

15-3 ベジタブル・ガーデン03

15 ベジタブル・ガーデン01

15-2 ベジタブル・ガーデン02

少々雑然としていても、全体を眺めて美しいと思えるキッチン・ガーデンを、今回の旅行ではたくさん見ました。
これはもっと勉強して、日本でたくさん作っていきたいと思っています。
…だって楽しいですからね。
実用的だし!

その脇、果樹のエスパリエは壁面でなく、西側を南北に結ぶ小径とベジタブル・ガーデンを仕切るようにして並んでいました。

16 エスパリエ

16-2 西側の小径


歴史がありながら今も生きて、しかも大切に管理されているガーデンからは、本当にたくさんのものを学ぶことができます。

結果的にこのガーデンが今回イギリスで見た最後のガーデンとなったわけですが、このガーデンならぜひとも欲しいと思いました。

シシングハーストもキフツゲートも素敵でしたが、(もちろん誰かがわたしなどにそれらをくれる筈はありませんが)それを自分が欲しいとか面倒見たいとか思ったことは有りませんでした。
まあ、あまりに広大すぎて手に負えませんし…

でもフェントン・ハウスのガーデンは、このガーデンなら面倒見たいと思えるような、両手を拡げれば隅々まで手が届きそうな、そのあらゆる場所を好きになれそうな、そんな身近で居心地が良くてとても気持ちの良いガーデンだったと思います。

22 レンガの外壁



よろしければ、ホームページもご覧下さい。
 http://www.yui-garden.com/


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フェントン・ハウス・ガーデンⅠ~イングリッシュ・ガーデンの旅 17

テーマ:イングリッシュガーデン
ハムステッドの森を歩いた後、体力と時間に余裕があって、しかもちゃんと辿り着けたらぜひとも行きたいと思っていた場所がありました。

01 外観

フェントン・ハウス。

ハムステッドの街中にあってこの街でもっとも古い建物なのだそうです。
1693年というから名誉革命の直後、ステュアート朝のメアリー2世・ウィリアム3世共同統治時代でございます。

02 エントランス

イギリスに行く前にはかなり庭園史と並行して英国史も勉強しましたが…。
それもすでに過去の遺物となりました。

でも、ここで復習。

英国庭園史的にはこの時代、フランスやオランダの影響を受けて流行した整形式庭園がやや下火となり、18世紀になって後にイングリッシュ・ガーデンの代名詞となる風景式庭園が誕生するまでの過渡的な時期でした。フランスからオランダを経て小振りになった整形式庭園は、イギリス人の好みにあったようです。
まして、田舎の地主のみなさんにそれほどの敷地がある筈もなく…
かくして、郊外のマナー・ハウスに居心地の良い、気持ちのよいこぢんまりとした庭園が誕生したのでした。

03 フェントン・ハウス

この日は確か水曜日。訪れたのは15時前。
まさにピタリと公開時間に訪れることができたのは天恵というべでしょう。

フェントンはかつての所有者からとった名前のようです。最後の所有者の死後、ナショナル・トラストの管理下に入りました。
とてもしっかりと丁寧に管理された素敵な庭です。

まずは案内図を…

フェントン・ハウス ガイドマップ


周囲をぐるりとレンガの塀に囲まれた庭園は、3(4)段構造のサンクン・ガーデンとなっています。
これがけっして広くない庭園にとてつもない奥行きと空間の拡がりとを与えています。

まず館の右手入口を抜けると庭園の東側に沿って北へと延びるイースト・テラス。

04 イースト・テラス01

右手の壁面植栽を見せながら、左手に目をやると庭全体の構造をそれとなく見下ろすことが出来ます。(勿論、細部はまだしっかりと隠されていますが)
この予習をさせながらたっぷり期待に胸躍らせてくれるという、洒脱な趣向が面白いと思いました。

05 イースト・テラス02

館からもその窓ごとに庭の景色がいろいろと楽しめそうですね。

05-2 イースト・テラスから館を臨む

わずかに下がって2段めに芝生の広い庭があり、その北にクロス・ボーダーと呼ばれるハーブ・ガーデンを経て、ローズ・ガーデンがあります。

06 ローズ・ガーデン

イースト・テラスとローン・ガーデンとの高低差がわずか1.2mほどであったのに対し、見ての通りローズ・ガーデンは2mほど下っていますから、ここにもサンクンの仕掛けが施されています。

07 ノース・テラス01

イースト・テラスを突き当たって左に折れると、ノース・テラス。
そのまた突き当たりにベンチが据えられてあって、とても気持ちの良い場所になっていました。

08 ノース・テラス02


階段を下ってサンクン・ガーデンの2段目に下ります。

左手にローズ・ガーデンを見て、クロス・ボーダー。

09 クロス・ボーダー


この時期まだ花は咲き揃っていませんが、ハーブたちが間もなく見頃を迎えようかという時季でした。

2段目の西側の縁を南北に貫くのが、スプリング・ボーダー。
こちらはすでに花盛りでした。

右手、1段下のベジタブル・ガーデンを見下ろす位置です。

17 スプリング・ボーダーからベジ・ガーデンを見る

左手にはローン・ガーデン。
円錐形に仕立てられた常緑樹は斑入りヒイラギでした。

18 スプリング・ボーダーからローン・ガーデンを見る

2色に分けられた芝生は、種類が違うのでしょうか?

19 ローン・ガーデン

そのローン・ガーデンから最初のイースト・テラスを見れば、ここが2重のボーダーになっていることがわかります。

20 ローン・ガーデンからイースト・テラスを見る


その南端、館の北面にやはり斑入りヒイラギのトピアリーが並ぶ小径があり、入り口付近に戻る階段が。

20-2 ヒイラギのトピアリー

サンクン・ガーデンの高低差がこのようにして様々な景色を生み出しています。


次回は最下層にある果樹園やベジタブル・ガーデンをご案内します。



よろしければ、ホームページもご覧下さい。
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ハムステッド・ヒース~イングリッシュ・ガーデンの旅 16

テーマ:イングリッシュガーデン
イギリス最終日2008年6月25日。
この日は完全フリーの一日でした。

当日の記録があります。

イギリス旅行7日目 /終日単独行動/ホランドパーク~ケンジントンパレスガーデン~ホームズ博物館~ハムステッド・ヒース(ガーデン、ケンウッドハウス、森散策、キッチンガーデン)~フェントンハウス・ガーデン~ハムステッドのパブにてビール~チェルシー・フィジック・ガーデン周辺散策~ナショナル・ギャラリーにて絵画鑑賞(夕飯も)

このうちの今回ご案内するハムステッドの森は、さる解説書によれば、


ロンドン北部に位置するハムステッド・ヒースは、起伏に富んだ丘陵地に手つかずの原生林が残る貴重な公園である。敷地面積は約790エーカー(3.2平方キロメートル)とロンドン最大。いくつもの小高い丘、広々とした牧草地、鬱蒼(うっそう)とした森林地帯など多彩な表情を持ち、18の池が景観にアクセントを添えるように点在している。


その森をぐるりと1周しながらなおかつこのスケジュールがこなせるのは、昼間が17時間もあるこの時期のイギリスならばこそ!

この日、他のメンバーはショッピング組の他、観劇グループと折しも開催中のウインブルドン観戦グループとかに分かれましたが、同室の建築家の佐野さんは一人建物の探訪に、そしてわたしは一人森の散策に!

とにかく広大な森を歩きたかったのでした。

ハムステッド

ハムステッドはロンドンから地下鉄を使って20分で行ける閑静な住宅地です。
その町中を抜けて…

ハムステッド・ヒース01

途中、整備された美しい公園や庭園も有りましたし、ケンウッド・ハウスという著名なカントリー・ハウス(現在は公開されその絵画コレクションも魅力的)も有りました。キッチン・ガーデン(と呼ぶには余りに広大)も印象的でしたが、今回はその主な目的である森の散策に絞ってご案内します。

ハムステッド・ヒース02

ハムステッド・ヒース03

ハムステッド・ヒース04


この辺は景色としてまだメリハリのある辺りですね。

だんだんとひたすら森だけになってきます。


ハムステッド・ヒース05

ハムステッド・ヒース06


湖を巡り、木々を抜け、草原に分け入り、ただひたすら歩き続けました。


ハムステッド・ヒース07

ハムステッド・ヒース08


大好きなガーデンを見て歩いたこの6日間に何ら不満があろう筈ありません。


ハムステッド・ヒース09


ただ、あまりにその6日間が濃厚すぎたのでしょうね。

とにかく一度バカになりたかった。
森に還って心の中をいったん真っ白にしないと、次に進めないといった感じでしょうか?


ハムステッド・ヒース10


これはね、バッキンガム宮殿を見てもビッグベンを見ても、ウエストミンスターでもソーホーでもきっと駄目だったと思います。
このハムステッドの森でなきゃいけないという…


ハムステッド・ヒース11


うん。
この樹を見れば、それが正解だったと分かります。


ハムステッド・ヒース12


ハムステッド・ヒース13


じっさい、この後わたしはハムステッドの街中にあるフェントンハウスを訪ねてそこの今も生きているガーデンを見学し、ロンドンの市街地に颯爽と戻っていく訳ですが、


ハムステッドのパブ


その前に(真っ昼間から)パブに寄り道してビール一杯、力強く引っ掛けさせていただいたこともご報告させていただきます。





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向井康治

ガーデン工房 結 -YUI-は、埼玉を起点に植物を中心に据えたガーデンデザインと設計・施工を仕事とする会社です。
ただし、面白い仕事であれば時には利益も距離感覚も忘れ去る脳天気ぶり。
だから、この仕事にはいつも様々な出会いがあります。人、植物、もの、本、言葉、音楽…。

結 -YUI- はネットワークです。
それは多彩な技術や知識を持った人々が持てる力を共有し合うこと。
人と自然界の美とが満を持して出会うこと。

わたしが文芸、農業、インド、土木、外構、アウトドアと巡ってきた先の到達点は、おそらくそれらみんなの要素を遺憾なく結集することのできる、小宇宙 「ガーデン」でした。

ガーデンデザイナーとして、ガーデナーとして、これまでの、そしてこれから先の「出会い」を余すことなくお伝え出来ればと思います。

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