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冬の京都を訪ねる ~南禅寺界隈散策 2013.01.29-30~

テーマ:たび
 先日の京都研修の際のこと。

 初日は7時半には京都に入ることが出来ました。
 研修開始が13時。その前に桂離宮の参観予約をしておいたのですが、それが10時。
 2時間ほどの時間がありました。
 寺社庭園の拝観はこの時期早くても9時からですので、その時間は南禅寺界隈の散策に充てることとしました。

01 南禅寺三門


 これまでも何度か訪れた京都の旅の起点は、たいていがこの辺りでした。
 南禅寺の方丈庭園や未見の天授庵庭園、金地院庭園、無鄰庵の庭園、足を伸ばせば平安神宮の神苑も有るし、この辺りから琵琶湖疎水をたどる哲学の道の先には銀閣寺の庭園があります。

02 南禅寺法堂


 冬の京都で楽しみの一つは、苔の美しさでしょうか。
 葉を落とした落葉樹の林の、木立の間をほとんど真横から差し込むようにして流れ込む陽の光が、思わぬ陰影を生んでそれはとても美しいものだと、一昨年の冬1月、西芳寺の庭園を訪ねたときに知りました。

03 南禅寺道場


 が、この日の京都は曇り空でした。

 だから、寒い。

04 南禅寺方丈


 戻ってから、やはり京都をこよなく愛するお客さまと話す機会があって、それでも京都の冬の寒さはこちらの寒さとどこか違うものがあるという話になりました。

 冬も苔の美しい京都の空気は、おそらくとても湿潤なのではないかと思います。
 だから乾ききった関東の刺すような寒さではなく、どこか丸みのある、ものの香りを運ぶことの出来る大気の冷たさなのでしょう。

05 水路閣


 今回は時間だけはたっぷりあるので、水路閣の上に登って、

06 水路閣上の疎水


 琵琶湖疎水を遡ることにしました。

07 疎水を蹴上に向かう


 水路は東山の中腹、石垣の上を流れていますので、眼下には南禅寺の塔頭やその庭園、墓地も見下ろすことが出来ます。ただ、手すりも何も無いので、やや危険。

 その突然開けた視野いっぱいに、とても広大な、苔と樹々に覆われた池泉回遊式庭園が見えました。
 天授庵の庭園かと思いましたが規模がとても大きく、後にこれが今は未公開の何有荘(かいうそう)庭園だと言うことが分かったのですが、このときは訳も分からず、その庭園に注ぎ込む水音を聴きながらその美しさを堪能したものでした。

 水路沿いの道はやがて蹴上発電所を経て、インクラインへとつながります。

08 インクライン


 インクライン=傾斜鉄道は琵琶湖疎水工事の一環として、大津と京都を結ぶ舟運のうち高低差の大きな箇所に造られた舟を運ぶ鉄道なのだそうです。森見登美彦氏の小説にも登場します。

09 インクライン


 京都においては近代の遺産さえもどこか妖しげで哀しげで、そして美しい。

 ここまでが初日の散策でした。



 2日目。

 昼までに研修を終えたわたしたちは、京都を出立する予定だった15時までのやはり2時間ほどの時間をいかに有効に活用するか考え…
 結局は欲張らずに南禅寺まで戻って、初日に入園できなかった2つの庭を見学することにしました。

 ひとつは天授庵。

10 天授庵 方丈前庭


 南禅寺塔頭のひとつで南北時代の創建。

 東側方丈前の枯山水の庭と、南側書院に面した池泉回遊式の庭園とに分かれています。
 まずはその、方丈前の庭。

11 天授庵 方丈前庭


 塀一枚隔てた向こうには南禅寺の巨大な三門がそびえ、そちらはそこそこ観光客で賑わうものの、天授庵のこちら側は静かなものでした。

12 天授庵 方丈前庭


 細川幽斎の再建とありますので、こちらは江戸初期のしつらえでしょうか。

13 天授庵 方丈前庭より書院南庭へ


 方丈を巡って路地門をくぐり、書院前の南庭に出ますとこちらは池泉回遊庭園。

14 天授庵 書院南庭


 こちらは南北朝時代の作庭という話ですが、

15 天授庵 書院南庭


 後の時代に大きく手を加えられているという話も聞きました。

16 天授庵 書院南庭


 寒空の下という事もありましたが、確かに時代を経た、古びた中にどこかに凜とした風情のある庭でした。


 もう1ヶ所は再訪ながら、同行のS氏にぜひ見せたいと思っていた無鄰庵。
 植治こと小川治兵衛と山形有朋による明治の庭です。

 わたしも冬に訪れるのは初めてでした。

17 無鄰庵


 緑がとても濃かった夏の庭が印象的だった無鄰庵も、冬は人影さえまばらで淋しいものがありましたが、

18 無鄰庵


 やはりこの庭の魅力は、疎水の水をふんだんに使った流れの緩急でしょうか。

 その辺りはちゃんとS氏にも伝わったらしく、今回訪ねた桂離宮を合せた3つの庭のうち、ここを一番気に入ってくれたようでした。

19 無鄰庵


 こちらこそ土塀一枚を隔てた向こう側は喧噪を極めた仁王門通りですから、この水の音に満たされた静謐な空間には、やはり得がたいものがありました。

20 無鄰庵


 短い訪問時間が何とも心残りで、次回はもう少し余裕をもって、出来ることならもう少し暖かい季節に…

 再訪を誓って京都を後にしました。


 遅い昼食は無鄰庵に隣接する喫茶「杉の子」。
 これからの長距離ドライブが控えていますので、わたしは軽めのぶぶ漬けを頂いて、短い京都の旅を終えました。

21 ぶぶ漬け 杉の子







 よろしければ、ホームページもご覧下さい。
 http://www.yui-garden.com/









































庭ブロ+(プラス)はこちら

ゲストハウス奈良バックパッカーズ

テーマ:たび

世界遺産へ徒歩三分。
時の流れと愉しむ場所。

これはゲストハウス奈良バックパッカーズのホームページに登場するコピーですが、うむ、まったく異存はございません。

奈良旅行の報告の一番最後に6日の間われわれがお世話になったこの宿のご紹介を…

ゲストハウス奈良バックパッカーズ ネームプレート

新薬師寺のくだりでもお話しした通り、わたしはどうにかお寺の宿坊に泊まる経験を娘にさせたかったのですが、新薬師寺は6年前に中止しており、かつては元興寺にも有ったと思うのですが他にも奈良市内で宿坊を続けているお寺は無くなったようでした。
そんな失意の中で改めて宿を探すうちに見つけたのがこの宿でした。

ゲストハウス奈良バックパッカーズ 門

手軽なゲストハウス、大正時代の古民家、無線LAN完備、エアコン付、そして立地…
信じられないほどの掘り出し物でした。

これまで3日を越える旅行ではたいてい複数の宿に泊まることにしていたわたしが、5日の連泊を決めたのも仕方のないことだと思います。

宿を紹介すると言っても朝は早くから出掛けて、夜は夜で銭湯と夕飯から戻ったらダウンするという毎日で、じつは余り長く浸る時間は無かったのですが…汗(男の子)

まず泊まった部屋は先にも紹介したとおり2階の8畳間でした。

個室 Medium

この廊下のテーブル・イスが心地よく、古いガラス窓越しにすこしゆがんで見える中庭が素敵でした。

中庭

個室はこの他に10畳のLarge Private Roomと、もと茶室とその控えの間のふたつがSmall Private Roomとして提供されていて、最終日のチェックアウトの時にようやく拝見することが出来ました。
…これがなかなかいい!

   茶室控えの間

   茶室前

   茶室への渡り

   茶室01

   茶室02

聞けば家主さんはもともとお茶の先生をなさっていたとのこと。
障子や建具に改装の痕が無くてとてもきれいだったのですが、しばらく空いたままだったのをゲストハウスに借りた際に、そのあたりはほとんど手を加えずに済んだとのことでした。よほど大切に手入れされていたのでしょう。家主さんの家に対する愛情が感じられました。

そして、こちらが共有スペース。

共有スペース

掘り炬燵を中心にいつも数人の外国の方が本を読んだりパソコンを使ったり会話を楽しんだりしていました。

キッチン

こちらも自由に使えるキッチン。わたしも奥の冷蔵庫で氷を作り、麦茶やビールを冷やしておりました。朝は5時くらいにコーヒーをドリップしたり…
そして、その隣の談話コーナーでも夜にはいつも話し声が弾んでいました。英語とか中国語とか…
そう言えばテレビはついぞ観ませんでしたね。

談話スペース

洗面所とトイレ、あと写ってないけれどこの右手がシャワールーム。すべて共同ですが、あまり混雑したところを見たことはなかったです。

   洗面所とトイレ

そして、玄関と

玄関

階段です。

   階段

登っていった左手がわたしたちの部屋。奥が女性用のドミかな?
だとすれば右手は男女共同のドミですね。

共有スペースはドミを使っているみなさんのもの、という意識があってあまり夜はうろうろしませんでしたが、娘が少し英語に自信を持てるようになって、夜すぐにダウンするようなハードな旅行が出来なくなったら、こうした場所でいろいろな方と交流するのも楽しいと思いました。

そうそう。
今のところこの宿の利用者の6割ほどは外国の方だとか。
わたしも近所を歩いていて、道に迷っている様子の外国の方に出会うとまずこのゲストハウスを探しているのか聞いてみましたがそのすべてがビンゴでした。

外国の旅行者、特にバックパッカーにとってこれほど魅力的な宿は無いと思います。
わたしもインドで旅慣れてきた頃に、同じ旅行者から良い宿の情報を仕入れたり紹介したりしましたが、きっと彼らの間でこれからどんどん、このゲストハウスの情報が飛び交うことになるでしょうね。

オーナーご夫妻と

今回の旅行がとても楽しいものになった要因が三つ。
ひとつはとにかく仕事をすべて消化してから出掛けてこれたこと。
ふたつめは、暑くはあっても雨がすべて夜の間に降ってくれて、やたら晴天に恵まれたこと。
そしてみっつめはこんな素敵な宿と出会えたこと。

とても楽しかったです。
ありがとうビックリマーク


   門前














奈良きたまち界隈 散策

テーマ:たび
少しは旅のブログらしい記事を。

今日は朝から涼しく、仕事は休みにて荷物の片付けと写真や資料の整理に専念しております。


今回宿をとった奈良きたまちは、旅の最初に紹介したとおり、東は東大寺の築地塀に接し、西は奈良女子大と東向通りの北町商店街、南に県庁や裁判所といった官公庁の集中するエリアに囲まれた静かな住宅街です。
その中にはお洒落な店や昔ながらの趣のある店も点在しておりました。

「あおによし鹿男」で主人公の先生が居候するお宅も、このあたりだった筈です。

油留木町

東大寺築地

あたりを散策したり銭湯に通う道すがら、気になった店もたくさんありまして、旅の後半にはちらほら入る機会がありました。

まずは、宿の次に一番お世話になった大西湯。

大西湯

わたしは神戸と大阪時代によく通ったものでしたが、とても久しぶりの銭湯でした。もちろん娘は初体験です。
下駄箱も脱衣所のロッカーも昔ながらの木製のもので、浴槽のタイルもカランもよくまあ今まで使って来れたなという代物。
もう一軒の勇湯も同様に年代物でしたが、それでも商店街や大学に近い大西湯はしっかりエアコンも効いていました。お湯はやや熱め。近所のお年寄りが多く集まる勇湯の方がややぬるくて入りやすく、こちらはテレビは有りませんでしたね。

この大西湯のすぐ近くのcafe WAKAKUSA。

  cafe WAKAKUSA

入口のオーニングをはじめ床からオーナーの方のシャツまで緑と若草色で統一されておりまして、小さいながらもとてもお洒落な店。
クレープとカプチーノが売りのお店でしたが、わたしはギネスの樽出しビールに吸い寄せられました。
でも食事クレープがとても豊富で美味しく、結局甘い方のクレープは食べずじまいでした。
残念。

cafe WAKAKUSAの合鴨スモークとサラダのクレープ

それと宿からすぐの処にあった葛料理の「天極堂」は初日から目を付けていたところ。

2つの庭園巡りやらでへとへとになった5日目の昼食に立ち寄りました。

   天極堂

先に紹介した外観同様、店内もお洒落でした。

ここではとろろご飯と葛を練り込んだうどんのセットを頂きましたが、見ての通り、名物のくず餅は絶品でした。
作りたてでまだ温かく、とろりとした食感がたまりません。

天極堂の葛餅

同じく葛の菓子やわらび餅を揃えた「千壽庵吉宗 奈良総本店」は「天極堂」の通りを北に少し行ったところ。やはり建物に趣があります。
もちろん、土産はこちらで揃えました。

千寿庵吉宗

依水園から戒壇堂に向かう途中にあった「そば処 喜多原」はとうとうのれんをくぐれなかった店のひとつでした。

   そば処喜多原

戒壇堂の裏手、「千壽庵吉宗 奈良総本店」からだと少し北上して東に折れた当たりに、かつて乳酸菌飲料の工場だった木造の建物が並んでいます。
一軒は「工場跡事務室」という名のカフェ。これも「天極堂」目指す途中だったので立ち寄れませんでしたが、隣の「NATIVE WORKS」にはお邪魔いたしました。

NATIVE WORKS

NATIVE WORKS

こちらはコットン生地のやさしい衣類などを手作りで作って売る店。平日に製作して週末だけの開店だそうです。
わたしはお土産に地元で有機栽培された紅茶を頂いてきました。

と紹介しながら、いかにこれらの店に出掛ける機会が少なかった実感しました。
考えたら早朝の散歩を除いて、このあたりを日中歩いたのは5日目だけでしたからねぇ。

でも、さすがにこの日は旅行らしい一日だったと思います。
(寺社6ヶ所と庭園2ヶ所と博物館というハードな工程ではありましたが…)
この次、奈良を訪れた時はきたまちをもう少しゆっくりと、それからならまちの辺りもじっくりと時間を掛けて歩いてみたいと思いました。

   戒壇堂への路















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向井康治

ガーデン工房 結 -YUI-は、埼玉を起点に植物を中心に据えたガーデンデザインと設計・施工を仕事とする会社です。
ただし、面白い仕事であれば時には利益も距離感覚も忘れ去る脳天気ぶり。
だから、この仕事にはいつも様々な出会いがあります。人、植物、もの、本、言葉、音楽…。

結 -YUI- はネットワークです。
それは多彩な技術や知識を持った人々が持てる力を共有し合うこと。
人と自然界の美とが満を持して出会うこと。

わたしが文芸、農業、インド、土木、外構、アウトドアと巡ってきた先の到達点は、おそらくそれらみんなの要素を遺憾なく結集することのできる、小宇宙 「ガーデン」でした。

ガーデンデザイナーとして、ガーデナーとして、これまでの、そしてこれから先の「出会い」を余すことなくお伝え出来ればと思います。

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