田んぼの生き物調査 東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト2013年 T3 石巻北上・女川地区 6/29-30
テーマ:東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト
2013/07/07 22:31
一週間前のこと。
東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト、今年3回目の調査が石巻市北上、女川地区で行われました。
この地は昨年の同時期に引き続いて2度目の訪問となります。干潟の調査でも訪れました。
石巻は北上川の河口近く。その左岸のこの一帯は津波が堤防を決壊させて多くの住宅や水田が浸水しました。
それでも大川小学校の悲劇で知られる右岸に比べれば復旧の速度は速く、その大きな要因は豊かな水源であったと伺いました。
今回は、実際に現地で水田の復興に携わっておられる「北上川沿岸土地改良区」の方が調査に参加して下さり、震災当時の様子や水田復興のご苦労など、貴重なお話しを伺うことができました。
初日午前中の被災田。
今回の発見種数は昨年と同じ27種。わたしは16種でした。
しかしながら昨年は圧倒的に少なかった貝類とカエルの仲間をとても多く見つけることができました。
特にこのニホンアカガエルは、昨年のこの田んぼからは発見されなかったものでした。
歩いて移動するこのカエル類と、水中のみを移動するサカマキガイ・ヒメモノアラガイなどの貝類とは、復興して間もない被災田に戻ってくるのに時間が掛かるのでは無いかというのが、東北大学の皆さんのご意見でした。
午後の対照田。
発見種数は昨年の33種に対して今回が38種。わたしは区分ケース1つを「うにょうにょ系」で一杯にして、1つ追加をお願いしての24種でした。
カエルについてはこの時期この場所に生息するニホンアカガエル、ニホンアマガエル、シュレーゲルアオガエル、トウキョウダルマガエルの4種。
そしてやや大物のヒメゲンゴロウでした。
2日目、北上地区。
午前中は北上川の改修工事が進む堤防近くの被災田でした。
こちらの発見種数が29種(わたしが15種)。やはり昨年は1種しか発見されなかったカエルの仲間が今年は4種すべて見つかり、貝類も見られるようになったとのこと。
午後の対照水田が36種(わたしが17種)。
昨年見つからなかったヒルやアカネ類のヤゴもいました。
今回、わたしはひとつの目的をもってこの調査に参加しました。
独自の田んぼの生きもの調査を出来ないか。
埼玉の子どもたちにまず地元で調査に参加してもらい、いずれ被災地の復興田調査へと展開していき、被災地の子どもたちにも自分たちの住む地域の復興を体感してもらう一助にしつつ、埼玉の子どもたちとの交流も深めてもらいたい。
きっかけは、わたしのブログを読んで下さったこちらのお客さんから、東北だけでなくこちらでも田んぼの調査をやりませんかと、声を掛けて頂いたことでした。
ご実家の田んぼを使わせて頂けるというありがたいお話で、その時からずっと、わたしは調査キットの収集に努めてきました。事あるごとに100円ショップに長居して、ホームセンターでも使えそうなものを物色し、安価でどこでも手に入るものに限定してまずは一式、今回の調査に持参してみました。
東北大学の皆さんに見て頂いてご意見も伺いました。
もしそれが実現できれば、今回のプロジェクトの目的の一つである「環境リテラシー」の実現となる訳ですが…
研究員の皆さんの指導無しでどこまでのことが出来るかまったく自信はないのですが、今回そこまで大胆な発想が出来たのには、今年東北大学の向井助教が完成させた「田んぼのいきもの図鑑」によるところが大きいと思います。
これを使って今回、どこまで自分が独力で生きものを同定できるか確認したかったのですが。
何度目かの挑戦で…
左からシュレーゲル、ニホンアカ、ニホンアマ、トウキョウダルマ。
4種のオタマジャクシの同定に成功することが出来ました。
この先自分がどれほどの役割を果たしていけるか、はなはだ心許ないところですが、まあ自分も楽しみながら地元の田んぼと関わっていけたらと思います。
とりあえず…
来週、小川町の田んぼで生きものを探します。
田んぼの生き物調査 東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト2013年 T1 仙台若林・今泉地区 6/1-2
テーマ:東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト
2013/06/12 18:20
2013年の東日本グリーン復興モニタリングプロジェクトがスタートしました。
今年は被災した田んぼの生きもの調査が6回、干潟の生きもの調査6回、島嶼のチョウ調査2回が行われ、ガーデン工房 結 -YUI-は昨年に引き続き、田んぼの調査3回に参加する予定です。
昨年は干潟調査を合せると5回の調査に参加し、そのことが少しばかり仕事を圧迫しただけでなく、他の方の参加機会まで奪ってしまったのではと反省し、控えめにしますと申込書に書き込んだら、逆にどんどん参加して下さいと研究員の方にハッパを掛けられてしまいました。
ただ、幸いなことに現時点ですでに、すべてのプロジェクトが満席となっているようです。
田んぼの生きもの調査、今年の初回は6月1日2日、仙台市若林区で行われました。
この地区は昨年の調査でも6月と8月に訪れたのですが、その時の田んぼの他に今年新たに作付を再開した田んぼも加わりました。その代わり昨年2日目に訪問した七ヶ浜の調査は中止。七里ヶ浜の皆さんは残された田んぼを除き、被災した田んぼの復旧を断念されたのだそうです。(東北大学の研究員のみなさんは引き続き、調査を継続していくとのことでした)
一年ぶりの調査に胸がときめきます。
昨年ご一緒した研究員の皆さんは勿論ですが、市民調査員の中にも旧知の方が2名おられ、再会を喜びました。昨年の緊張が嘘のよう。すでにとても居心地の良い調査環境となっていました。
初日に調査したのは、今年から作付を再開した若林区の仙台東部道路東側に位置する6枚の田んぼでした。
昨年太陽光パネル設置に関連して訪れた荒浜からすぐ近くの場所です。
午前と午後とで別の田んぼを調査したのですが、それぞれ復旧の方法が違っているという話を伺いました。
午前のそれは除塩のみ。
土が全体に黒く見えます。
これはもともとこの場所の土質なのだそうです。
そしてこちらが午後の田んぼで、表土をすっかり入替えるという手法で復旧されました。砂分を多く含んだ赤い土です。
どちらも共に、とても静かな、生きものの気配が少ない田んぼでした。少なくとも目視で確認できたのはミジンコとアメンボくらいです。
天候にも恵まれて調査開始です。
最初の、除塩だけの田んぼでわたしが捕獲できた生きものは7種。
全体では23種も見つかったそうです。
コガムシ。
バタバタ泳ぎ回るとても元気なやつでした。
その他はヒメアメンボ、エリユスリカ、ユスリカ亜科、モンユスリカ、カイミジンコ、ケンミジンコです。
なかなか地味なラインナップでしょ。
今回かなりユスリカやミジンコの見分けも出来るようになりましたが、それもこれも…
昨年、調査の都度にわれわれの意見や感想を取り入れて改訂を繰り返し、ついにいったんの完成を見た向井康夫助教による「田んぼの生きもの図鑑」です。
生きもののいる場所、動き方、身体の特徴などマクロからミクロまで丁寧にたどって、ついにその名前に行き着けるよう懇切丁寧に作られた素晴らしいガイドブックです。今年から送料込み500円で市販もするとかで、いずれこれをまとめ買いして子どもたちに配りたいと思いました。
この田んぼでは他に、
ヒメゲンゴロウ。
ザリガニの子どもとヒメゲンゴロウの幼虫。
コガムシの幼虫。
他にヤゴやニホンアカガエルなども見つかりました。
同じ種の成虫と幼虫とが同居するのはこの時期の田んぼの特徴という事ですが、それにしても今年再開されたばかりの田んぼです。生きものたちの戻ってくるスピードの速さに圧倒されました。
午後の、表土を入替えた田んぼでは、わたしは残念ながら2種。
たっぷりと集めた泥の中にヒメゲンゴロウの幼虫と、タマミジンコしか発見できませんでした。
全体ではそれでも17種。同時に調査した3枚の田んぼの、そのそれぞれの調査場所によってもかなりの差はありましたが、思いのほか多かったというのが率直なところ。
田んぼの印象からして、もっと少ないかと思っていました。
翌日は今泉地区の調査。
こちらを訪れるのはこれが3度目です。(昨年の6月の調査報告はこちらです)
過去、わたしの収穫だけに限って言うなら、午前中の対照水田(比較のために調査する、被災しなかった田んぼ)で昨年6月が5種(15種)、次の昨年8月末が13種(33種)、そして今回が13種(30種)でした。(括弧内は調査員全体の発見種数です)
稲穂が成長して生きものの生育環境が豊かに多様化する8月は、生きものの数が増えるようですが、今年の6月ですでに昨年の8月並みの種数を発見していると言うことです。(昨年8月の様子はこちらをどうぞ)
一概には言えないのですが、やはり復興から年を数えるほどに生きものが多く戻ってくると言うことでしょうか。
この午前中の対照水田で、わたしが発見した生きもの。
ヒメアメンボ、ヒラマキミズマイマイ、サカマキガイ、ヒメモノアラガイ、フタバカゲロウ、ミズダニ、ユスリカ3種、ミジンコ3種。
そして午後の復興田。
ここでも13種(30種)。これも昨年8月並みで。昨年の6月はまだ7種(18種)でした。
昨年もこの田んぼでたくさん見つけて感動したタマカイエビ。
今年もバケツの泥の表面が埋め尽くされるほどにいました。
ヒメモノアラガイ。
コガシラミズムシ。
この辺は昨年の常連ですね。
そしてザリガニ。
その他、キベリヒラタガムシ、ケシカタビロアメンボ、ガガンボなどがラインナップに加わりました。
研究者でも無いわたしの素朴な印象として、やはり時間の経過と共に生きものたちの層が豊かになっていると感じます。
初日夜の勉強会で研究員の方から報告を受けましたが、確かに生物種を移動方法によって分類すれば、まだまだ戻ってきていない種も多いのでしょう。今回発見された生きものたちの多くは水路から流れ込む水に乗ってきたもの、飛んできたもの、他の生きものに運ばれてきたものがほとんどです。
ただ、身体で感じる「生命の息吹」に限って言うなら、そこはもうすでに豊かな生きものたちの空間となっているように思えます。
そして、これからもますます豊かになっていくように感じられます。
もう少し、というかやはりあと8年かけて、その経過に立ち会いたいと思いました。
次回は6月末、石巻北上地区を訪れます。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
田んぼの生き物調査 東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト その9 T6 仙台今泉地区 8/26
テーマ:東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト
2012/09/02 23:42
そして、二日目。仙台今泉地区。
ここでも以前の調査の時と比べてみましょうか?
午前中の対照水田。
これが以前の様子。美しい畦の印象的な田んぼでした。
そしてこれが今回。
夏の2ヶ月半という時間が生み出す魔法みたいなもの。
さて、その魔法は生き物の方にはどんな変化を与えたでしょうか?
わたしが最初の被災田で見つけた生き物たち、13種類。(全体では33種)
ヒメアメンボ、コミズムシ、コガシラミズムシ、チビゲンゴロウ、ヤチバエ、ミズダニ、アオモンイトトンボ、ヒメゲンゴロウの幼虫と成虫、イトミミズ、サカマキガイ、モンユスリカ、イエカ、ニホンアカガエル…
おなじみヒメゲンゴロウ。
そしてこれがイトトンボのヤゴ。かわいいです。
尾の形状からアオモンイトトンボという種類であることが分かりました。
以前はこれが5種で、全体でも15種でした。七ヶ浜との比較もあってとても生き物の印象が薄いように感じたものでした。でも今回は違っています。長く丈を伸ばした稲や畦の雑草など、以前より植物などの自然が豊かになっていました。生き物たちが潜む空間が増えたという事なのでしょうか?
と同時にその空間もとても多様性を増していました。
調査はいつも4人ずつのグループに分かれて同時に3枚の田んぼで行われます。その4人もまた田んぼの各辺に散らばっていきます。調査する田んぼによって生き物の発見種数は大きく異なりました。また、同じ田んぼでも場所によって生き物の数や種類も違っていました。
わたしの選んだのはテントからは遠いけれど田んぼの東南側の部分。他の場所と比べてたくさんの浮き草に覆われていました。すると他の地点と違ってコミズムシの数が圧倒的に多く、その代わりサカマキガイ以外の貝が少ないという結果になりました。日当たりが良くて浮き草が多く生育したので水面近くを激しく動き回るコミズムシには良い隠れ家になったのかも知れないし、水温が上がりすぎて一部の貝にとって暮らしにくくなったのかも知れません。一方で水底近くに藻が繁茂していた場所から採取した方のサンプルには、わたしが一つも発見できなかったヒラマキミズマイマイがわんさか居たりしました。
午後の被災田。
ここでわたしが見つけたのは11種。全体で30種。
チビミズムシ、コミズムシ、ガガンボ、ミズダニ、ユスリカ2種、サカマキガイ、ヒラマキミズマイマイ、イシビル、ヌカカ、ウスバキトンボのヤゴ…
前回はわたしが7種、全体が18種でしたから、やはりここでも以前より増えているうえに、今回は被災田の発見種数の方が減っていました。それが自然なことのように思えますが、不思議なことに以前は逆転していた訳です。
わたしはその逆転の原因を津波がもたらしたヘドロ…ヘドロとは言え黒くて有機質に富んだその土にあるのでは無いかと思い、土質と水性生物との間に関係性があるのかどうか、とても興味を持ったのですが、でも、今回訪れてみると稲の成長はこちらの方が遅い気がするのです。生き物の数も減ってしまった…
そして何よりも被災田に前回はいなかった貝類やヒル類が多く生存していたこと。これも予想外のことでした。
貝類は用水路を通じて、まとまった雨の時などに上流の貯水池から運ばれてきたのでは無いかというのが向井助教の仮説で、私が担当した田んぼではに取水口側には多くのサカマキガイが集まっていたので、確かにそうでは無いかと思われます。
途中、中干しという水の無い期間を挟んだ今回の調査では、以前に比べて生き物の数が少ないのでは無いのか、というのが最初わたしが考えていたことでした。でも結果は逆。
この田んぼに限っては被災した田んぼにいち早く貝類が戻っていました。これも想定外。
結果、生息域を水中に限られる生き物は被災田には少ないのでは無いかという説も、ここでは裏切られることになった訳で…
これまでの結果だけで類推すれば津波という大きな撹乱よりも、中干しという人為的な撹乱の方が田んぼの生き物に与える影響が大きいという事になってしまう訳で、素人だからこそ言ってのけられる無責任な発言を許してもらえるなら…
訳が分からない!
という事になってしまいます。
おそらく一つ一つの原因を究明してそれらを除去していけば、最後に津波のもたらした何ものかが明らかになるのでしよう。それはさらに研究者のみなさんの、これからも続く地道な調査と解析の積み重ねとが明らかにしてくれるにちがいありません。
むしろわたしにはこの圧倒的な生き物たちの生態の不思議、突拍子も無い自然の摂理、様々な可能性と多様性とがおもしろくてたまらないのです。
じつは津波の影響など彼ら生き物たちにとって、始めからたいした物ではなかったのかもしれない。
それともじつは逆に、これからわれわれが津波の被害から生態系や種の多様性を回復していこうとする時、彼らはその中でとんでもなく重要な役割を果たすのかも知れない。
うむ。
興味が尽きないではありませんか!
いずれにしても、今年の市民調査はこうして終了しました。
まだ確定ではないようですが、向こう10年は続けたいと占部先生がおっしゃっていましたから、来年以降もきっとまたこのプロジェクトは続くと思います。ぜひ続けてもらいたい。
環境リテラシーの趣旨からすれば、わたしみたいな者が何度も何度も顔を出すような愚を犯さず、少しでも多くの方に経験してもらってこそこの活動の意義はあるのでしょうが…
こればかりはやはり譲れないかもしれない。
こんな形で被災地とつながって、田んぼと干潟と被災地の復興に微力ながらも関わっていけるなら、こんな幸せな話はありませんから。
それはまた、わたし自身が自分の立ち位置から植物の種の多様性について考えを深めていく契機にもなっていく筈で、だから来年もまたわたしは七ヶ浜や今泉や東松島や北上の田んぼに舞い戻っていることと思います。
申し訳ないと思います。すみません。
いずれまた、次の報告の機会を持ちたいと思います。
ここでも以前の調査の時と比べてみましょうか?
午前中の対照水田。
これが以前の様子。美しい畦の印象的な田んぼでした。
そしてこれが今回。
夏の2ヶ月半という時間が生み出す魔法みたいなもの。
さて、その魔法は生き物の方にはどんな変化を与えたでしょうか?
わたしが最初の被災田で見つけた生き物たち、13種類。(全体では33種)
ヒメアメンボ、コミズムシ、コガシラミズムシ、チビゲンゴロウ、ヤチバエ、ミズダニ、アオモンイトトンボ、ヒメゲンゴロウの幼虫と成虫、イトミミズ、サカマキガイ、モンユスリカ、イエカ、ニホンアカガエル…
おなじみヒメゲンゴロウ。
そしてこれがイトトンボのヤゴ。かわいいです。
尾の形状からアオモンイトトンボという種類であることが分かりました。
以前はこれが5種で、全体でも15種でした。七ヶ浜との比較もあってとても生き物の印象が薄いように感じたものでした。でも今回は違っています。長く丈を伸ばした稲や畦の雑草など、以前より植物などの自然が豊かになっていました。生き物たちが潜む空間が増えたという事なのでしょうか?
と同時にその空間もとても多様性を増していました。
調査はいつも4人ずつのグループに分かれて同時に3枚の田んぼで行われます。その4人もまた田んぼの各辺に散らばっていきます。調査する田んぼによって生き物の発見種数は大きく異なりました。また、同じ田んぼでも場所によって生き物の数や種類も違っていました。
わたしの選んだのはテントからは遠いけれど田んぼの東南側の部分。他の場所と比べてたくさんの浮き草に覆われていました。すると他の地点と違ってコミズムシの数が圧倒的に多く、その代わりサカマキガイ以外の貝が少ないという結果になりました。日当たりが良くて浮き草が多く生育したので水面近くを激しく動き回るコミズムシには良い隠れ家になったのかも知れないし、水温が上がりすぎて一部の貝にとって暮らしにくくなったのかも知れません。一方で水底近くに藻が繁茂していた場所から採取した方のサンプルには、わたしが一つも発見できなかったヒラマキミズマイマイがわんさか居たりしました。
午後の被災田。
ここでわたしが見つけたのは11種。全体で30種。
チビミズムシ、コミズムシ、ガガンボ、ミズダニ、ユスリカ2種、サカマキガイ、ヒラマキミズマイマイ、イシビル、ヌカカ、ウスバキトンボのヤゴ…
前回はわたしが7種、全体が18種でしたから、やはりここでも以前より増えているうえに、今回は被災田の発見種数の方が減っていました。それが自然なことのように思えますが、不思議なことに以前は逆転していた訳です。
わたしはその逆転の原因を津波がもたらしたヘドロ…ヘドロとは言え黒くて有機質に富んだその土にあるのでは無いかと思い、土質と水性生物との間に関係性があるのかどうか、とても興味を持ったのですが、でも、今回訪れてみると稲の成長はこちらの方が遅い気がするのです。生き物の数も減ってしまった…
そして何よりも被災田に前回はいなかった貝類やヒル類が多く生存していたこと。これも予想外のことでした。
貝類は用水路を通じて、まとまった雨の時などに上流の貯水池から運ばれてきたのでは無いかというのが向井助教の仮説で、私が担当した田んぼではに取水口側には多くのサカマキガイが集まっていたので、確かにそうでは無いかと思われます。
途中、中干しという水の無い期間を挟んだ今回の調査では、以前に比べて生き物の数が少ないのでは無いのか、というのが最初わたしが考えていたことでした。でも結果は逆。
この田んぼに限っては被災した田んぼにいち早く貝類が戻っていました。これも想定外。
結果、生息域を水中に限られる生き物は被災田には少ないのでは無いかという説も、ここでは裏切られることになった訳で…
これまでの結果だけで類推すれば津波という大きな撹乱よりも、中干しという人為的な撹乱の方が田んぼの生き物に与える影響が大きいという事になってしまう訳で、素人だからこそ言ってのけられる無責任な発言を許してもらえるなら…
訳が分からない!
という事になってしまいます。
おそらく一つ一つの原因を究明してそれらを除去していけば、最後に津波のもたらした何ものかが明らかになるのでしよう。それはさらに研究者のみなさんの、これからも続く地道な調査と解析の積み重ねとが明らかにしてくれるにちがいありません。
むしろわたしにはこの圧倒的な生き物たちの生態の不思議、突拍子も無い自然の摂理、様々な可能性と多様性とがおもしろくてたまらないのです。
じつは津波の影響など彼ら生き物たちにとって、始めからたいした物ではなかったのかもしれない。
それともじつは逆に、これからわれわれが津波の被害から生態系や種の多様性を回復していこうとする時、彼らはその中でとんでもなく重要な役割を果たすのかも知れない。
うむ。
興味が尽きないではありませんか!
いずれにしても、今年の市民調査はこうして終了しました。
まだ確定ではないようですが、向こう10年は続けたいと占部先生がおっしゃっていましたから、来年以降もきっとまたこのプロジェクトは続くと思います。ぜひ続けてもらいたい。
環境リテラシーの趣旨からすれば、わたしみたいな者が何度も何度も顔を出すような愚を犯さず、少しでも多くの方に経験してもらってこそこの活動の意義はあるのでしょうが…
こればかりはやはり譲れないかもしれない。
こんな形で被災地とつながって、田んぼと干潟と被災地の復興に微力ながらも関わっていけるなら、こんな幸せな話はありませんから。
それはまた、わたし自身が自分の立ち位置から植物の種の多様性について考えを深めていく契機にもなっていく筈で、だから来年もまたわたしは七ヶ浜や今泉や東松島や北上の田んぼに舞い戻っていることと思います。
申し訳ないと思います。すみません。
いずれまた、次の報告の機会を持ちたいと思います。