奈良きたまち界隈 依水園と吉城園
テーマ:ガーデン
2011/08/01 07:40
奈良5日目。
宿の周辺をめぐって東大寺の伽藍と国立博物館、それにふたつの庭園を訪ねました。
思えば東大寺も大仏殿に関して言うと中学校の修学旅行以来…
二月堂や三月堂、戒壇堂に立ち寄ることはあっても大仏様にはすっかりご無沙汰しておりました。
久々にお目にかかって、すこし感動。
三月堂は現在解体修理と調査のために拝観停止中で、かろうじて何体かの仏像を拝めるだけでした。
堂内狭しと居並ぶ仏たちの姿が好きだっただけにとても残念。
でも、帝釈天や弁財天、日光・月光菩薩といった天平仏を間近で拝めるのはなかなか得難い経験と思いました。
この日は天候に恵まれた(幸か不幸か?)奈良旅行の中でも特によい天気で、つまりめちゃくちゃ暑く、本当は国立博物館で開催されている「天竺へ 三蔵法師3万キロの旅」の世界に浸り切りたかったのですが、でもこれが最後のチャンスという訳なので、宿からすぐそばに並ぶふたつの庭園を訪ねました。
依水園は江戸期、明治期と別々の時代に作られたふたつの庭園と寧楽美術館、食事処「三秀亭」から構成されていて、東大寺の戒壇堂近くに吉城(よしき)川を挟んで吉城園庭園と隣り合ってありました。
まずこれが江戸期に作られた庭園。
江戸初期の延宝年間に建てられた三秀亭を中心にした、石組と池とがとても落ち着いたお庭です。
そしてその奥にある明治32年、裏千家十二世又妙斉が作り上げたという庭園。
背景に東大寺伊大仏殿と左から若草、春日、三笠の三山を取り入れたゆったりとおおらかな庭園でした。
見どころは何といっても吉城川の水をふんだんに取り入れた動きのある水の演出。そして、延段、階段、飛び石とさまざまに表情を変えてみせる石の演出だと思います。
明治期の庭園らしく、伝統的な美しさの中にモダンな意匠が凝らされてとても個性的です。
昨夜の雨で少し息を吹き返したという苔の庭も明るく伸び伸びとした印象ですね。
塀ひとつを隔てた外はとても暑いのですが、木陰と水の流れがとても涼しく、生き返った心地でした。
そしてこちらが吉城園。
古くからあった場所ですが庭園として整備されたのは大正のようです。
個人の所有から今は県の管理に移っています。
池をめぐる手前の庭の奥に、
茶室から望む苔の庭園が広がります。
全体に起伏に富んでいるため、その地形を生かした昇降に趣があります。
依水園が動の庭とするなら、こちらは静のお庭。
しっとりとした落ち着きの中に軽妙なリズムを感じさせてくれました。
奈良最終日の今日は、「いま、ふたたびの奈良へ」。
この奈良旅行のきっかけとなった懐かしい新薬師寺を高畑に訪ねることにします。
宿の周辺をめぐって東大寺の伽藍と国立博物館、それにふたつの庭園を訪ねました。
思えば東大寺も大仏殿に関して言うと中学校の修学旅行以来…
二月堂や三月堂、戒壇堂に立ち寄ることはあっても大仏様にはすっかりご無沙汰しておりました。
久々にお目にかかって、すこし感動。
三月堂は現在解体修理と調査のために拝観停止中で、かろうじて何体かの仏像を拝めるだけでした。
堂内狭しと居並ぶ仏たちの姿が好きだっただけにとても残念。
でも、帝釈天や弁財天、日光・月光菩薩といった天平仏を間近で拝めるのはなかなか得難い経験と思いました。
この日は天候に恵まれた(幸か不幸か?)奈良旅行の中でも特によい天気で、つまりめちゃくちゃ暑く、本当は国立博物館で開催されている「天竺へ 三蔵法師3万キロの旅」の世界に浸り切りたかったのですが、でもこれが最後のチャンスという訳なので、宿からすぐそばに並ぶふたつの庭園を訪ねました。
依水園は江戸期、明治期と別々の時代に作られたふたつの庭園と寧楽美術館、食事処「三秀亭」から構成されていて、東大寺の戒壇堂近くに吉城(よしき)川を挟んで吉城園庭園と隣り合ってありました。
まずこれが江戸期に作られた庭園。
江戸初期の延宝年間に建てられた三秀亭を中心にした、石組と池とがとても落ち着いたお庭です。
そしてその奥にある明治32年、裏千家十二世又妙斉が作り上げたという庭園。
背景に東大寺伊大仏殿と左から若草、春日、三笠の三山を取り入れたゆったりとおおらかな庭園でした。
見どころは何といっても吉城川の水をふんだんに取り入れた動きのある水の演出。そして、延段、階段、飛び石とさまざまに表情を変えてみせる石の演出だと思います。
明治期の庭園らしく、伝統的な美しさの中にモダンな意匠が凝らされてとても個性的です。
昨夜の雨で少し息を吹き返したという苔の庭も明るく伸び伸びとした印象ですね。
塀ひとつを隔てた外はとても暑いのですが、木陰と水の流れがとても涼しく、生き返った心地でした。
そしてこちらが吉城園。
古くからあった場所ですが庭園として整備されたのは大正のようです。
個人の所有から今は県の管理に移っています。
池をめぐる手前の庭の奥に、
茶室から望む苔の庭園が広がります。
全体に起伏に富んでいるため、その地形を生かした昇降に趣があります。
依水園が動の庭とするなら、こちらは静のお庭。
しっとりとした落ち着きの中に軽妙なリズムを感じさせてくれました。
奈良最終日の今日は、「いま、ふたたびの奈良へ」。
この奈良旅行のきっかけとなった懐かしい新薬師寺を高畑に訪ねることにします。
斑鳩から西の京へ 秋篠寺と平城宮東院庭園
テーマ:ガーデン
2011/07/30 07:25
奈良3日目のハイライトは慈光院のあと、秋篠寺と平城宮後に復元された東院庭園…
まずは秋篠寺の苔の庭園。
苔が美しい。
ここは本来の庭園ではなく、かつては金堂の建っていた跡であるとか…
ひとたびそこから一歩でも外れると炎天下の砂利道が、この木立に入ると一変します。
世界を変えること。
それも作庭家の大切な仕事ですね。
もちろん、単に土木工事でも植栽工事だけでもそれが実現するはずがありません。
地の精霊の声を聴く、耳を持たなくてはね。
そして、日本最古の庭園といわれる平城宮東院庭園。
炎天下の訪問はやや過酷ながら、やはりここで見逃すとこの先ずっと見ることができない気がして…
(あ、いろんな意味で、です)
配置は美しい。
でも歴史的な遺産の管理の仕方というのは、文化的遺産の管理とはまた違うようで…
ここでもまたいろいろ勉強した気がします。
さて、今日4日目は神戸に古いお客様をお訪ねして、仕事をして参ります。
娘は三宮の書店で半日を楽しく過ごすと申しておりまして、古都の旅はいったんお休み。
斑鳩から西の京へ 慈光院
テーマ:ガーデン
2011/07/30 06:27
奈良、3日目は斑鳩に法隆寺と中宮寺を訪ねて法輪寺と法起寺の塔を眺めて、昔から好きでよく訪れた大和郡山の慈光院に憩い、西の京では薬師寺で時間をかけた参詣をし、これも懐かしい秋篠寺へ。最後に平城宮跡の東院庭園を見学しました。
飛鳥の石造遺跡よりも仏像が気に入った様子の娘は、法隆寺や薬師寺の仏に心を奪われた様子。
わたしも久方ぶりにお目にかかった法隆寺の釈迦三尊と吉祥天、中宮寺の弥勒菩薩、薬師寺の薬師三尊、そして秋篠寺の技芸天に心をときめかせました。
でも今回一番の見どころは慈光院だったかもしれませんねぇ。
もともと斑鳩に立ち寄るたびにお邪魔したこの寺でしたが、今回は初めてのようにその由来などに触れることができました。まあこれは、わたしが現在の仕事に就いたことと関係するに違いないのですが…
長い石の延段を何度も曲がって楼門に至ります。
そして楼門をくぐった先のこの景色。
長く鋭く仕立てられた松が、石の延段の生み出す鋭角と相まって訪問者を鋭く刺激します。
この寺を父親の菩提寺として建立した片桐石州は江戸初期、この地方の大名でありながら有数の茶人であったといいます。そのことを知って合点したのがこれら玄関に至るまでの景色の移ろいでした。
細部にわたって入念に計算された庭の工夫は茶の庭ならではのこと。
もてなしと粋の心が息づいています。
先ほど門の先で見た松と延段は、やがて玄関を抜けて書院に至る途上でやわらかなものに変化して、いくぶんか身構えた客の心を和ませます。
そして、書院に入ると同時に飛び込む遠い奈良盆地の街並みを借景にした大刈り込み。
われわれもこちらでお茶をいただき、その庭に降りました。
以前は遠くに見えた大和郡山の景色が妙に近く感じられてそれを娘に言うと、手前の木立が無くなったのでは、という意見。なるほど、その通りかもしれません。
茶室から廊下を渡って本堂へと廻りながら中庭の景色を楽しみます。
見る角度の変化で庭を多様に見せる手法は今も昔も変わりませんが、どの角度から眺めても美しい庭を造るというのは、やはり今も昔も簡単なことではありません。
ここの庭は今も丁寧な管理がされて、当時の主の気持ちを今に伝えていました。
景色、道具…
そして味。
ひと通り建物と庭を拝見して、当家に伝わる「石州麺」を所望させていただきました。
ひんやりとして味が深く、細いながらも歯ごたえ十分の麺に季節の野菜の風味が染みわたって…
これがなかなかの絶品でした。
ここまでのところ、シーズンオフということもあって訪問者はわれわれ二人だけ。
ゆったりと豊かな時間を過ごさせていただきました。