ロックガーデンを造る~H市N様邸02 2012年春
テーマ:しごと
2013/01/13 11:42
2012年4月。
近くの土手に桜が満開となった頃、ようやくロックガーテンは一旦の完成となりました。
この頃にはそれまで工事の過程で折に触れて植え込んできた、球根や宿根草たちも目を覚ましてくれています。
ユーフォルビア ‘アミグダロイデス ・パープレア’と原種系チューリップ ‘ブライトジェム’。
冬の間中、楽しませてくれたエリカたち。
さらにコンボルブルズの‘クネオルム’。
シルバーリーフの輝きを増したプンゲンス ‘グロボーサ・グラウカ’。
さらに季節が進んで、
随時宿根草を加えながら、そして5月ともなれば…
庭はどこも賑やかで楽しいものになってくれました。
図面下側が南となります。
建物の配置を斜めにしたため、建物正面の南西の庭と、ガレージのある南東の庭、通行量の多い交差点に面した左手北西の庭、そして和室に面した北東の庭、4つの庭が生まれました。
ここでは便宜上建物正面を南の庭と称して、以下東の庭、西の庭、北の庭というように紹介していきます。
まずは、南の庭。
こちらは建物の外観と「北欧の岩山」のイメージに即して針葉樹でまとめました。
お客さまのご希望でもあるモミと、色彩のコントラストを出すためブルー系のアトラスシーダー、ゴールド系のヨーロッパゴールドとフィリフェラ・オーレア、そしてイチイ…
冬の景色をより豊かにするため矮性種や這性種のコニファー類もたくさん使いたかったのですが、実はこの近隣は著名な梨の生産地でもありまして、赤星病を媒介する恐れのあるビャクシン類の使用は控えた方が良いことが分かりました。そこでこれに代わる「冬も美しい常緑樹」としてヒース=エリカを多用することになった訳です。
エリカは原種に近いものを中心に8種類ほどを入れました。
常緑樹が中心の南の庭ですが、季節の変化と花色を加えるため(それでいて高さは極力抑えるため)、階段とスロープ、ふたつのアプローチの中央にシダレエンジュを入れてみました。
もともと縁起の良い樹とされるエンジュのうちでもシダレ種は珍重されて来たようですが、ここでは落葉後の姿も面白く、花も楽しめ、上に延びて景色を阻害せず玄関前を暗くしないという特性に惹かれました。
玄関から東のガレージに向かう動線は高低差があるために石張りの階段と小さな踊り場があります。
こちらは建物が道路に最も近いため、時間を掛けてコンクリート擁壁による土留め工事を施した箇所。もちろん、完成すればその痕跡はまるで有りませんが…
こちらをわれわれはささやかながら「登山道」と「展望台」と呼んでいます。手すりも当初は鉄製の堅固なものを考えましたが、「山の遊歩道」のイメージを大切にするため、ACQ防腐処理済みの国産杉を使って手作りで製作しました。
東側のガレージは「山の麓の駐車場」のイメージ。
2つの「登山道」が、玄関や北側の庭とつなぎます。
こちらは日当たりが良くて北風を避けられるため、以前のお住まいで大切に育てられてきたソテツを植え込み、これを中心に南洋風の植物でまとめました。
セレノア・ルペンス(ノコギリヤシ)とチャメロプス、アガベとニューサイラン、そしてハーブと多肉植物たち…
そしてここから「北登山道」を登るとささやかな隠れハーブガーデンとキッチンガーデン。こちらは奥様のリクエストでもありました。
一方、西側はリビングの強い西日を遮りつつ小鳥たちの来訪を楽しみ、かつ夕方の景色を楽しむためにささやかな落葉の疎林としました。
シラカバの‘ジャックモンティー’、アオハダ、アメリカヒトツバタゴ、ジューンベリー ‘ロビンヒル’、ノルウェーカエデ ‘プリンストンゴールド’、クラブアップル ‘プロフュージョン’…
そしてウッドデッキの中央には奥様がお好きという株立ちのヤマボウシ。
南側の針葉樹の森から西側の落葉樹の林への流れを唐突で不自然なものにしないよう、つなぎにイチイを入れたり、岩の組み方を少しずつ変えていったりという工夫がありました。
角の部分は鋭い角度を和らげるため、当初は図面にある通り、岩を前面に出さず低木の植栽にするつもりでしたし、実際そのように岩の配置をしてみたのですが…
こちらはご主人の希望もあって、南側の力強い石組みをここでも再現することにしました。
それも最初はまだおとなしめに…
それが後ほど岩を追加してこのようになりました。
遠目に見たときこれが結局、貴重なアクセントとなったような気がいたします。
そして、この岩がいったん静かな流れに変わり、北側に曲がると再度力強いものになります。
ここで配慮したのは、外からの景色はこれまでの洋の石組みの流れを保ちながら、内側の和室前の庭からの景色では和(風)の石組みとなるようにすること。
とは言え、そこはガーデン工房 結 -YUI-の庭ですのでたとえ和の庭とは言え、主役はあくまでも植物たちです。
こちらの植栽はやや和の味わいがある樹のうち、外側には常緑を、内側には落葉を配置しました。
ソヨゴ、トウネズミモチ ‘トリカラー’、オガタマ ‘ポートワイン’、ロドレイア、斑入りユズリハ、アセビ、ビバーナム、コハウチハカエデ、ニシキギ、山椒など。
ましてこちらの庭は勝手口側と言え、町の中心に向かう第2の玄関口でも有ります。
そうであれば、当然ながらそれなりのしつらえがあって然るべきで…
できる限りお洒落に、かつローメンテナンスで機能的な庭に仕上がったと思っています。
次回はこの庭が夏を迎えて緑を深めた様子をお伝えしたいと思います。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
近くの土手に桜が満開となった頃、ようやくロックガーテンは一旦の完成となりました。
この頃にはそれまで工事の過程で折に触れて植え込んできた、球根や宿根草たちも目を覚ましてくれています。
ユーフォルビア ‘アミグダロイデス ・パープレア’と原種系チューリップ ‘ブライトジェム’。
冬の間中、楽しませてくれたエリカたち。
さらにコンボルブルズの‘クネオルム’。
シルバーリーフの輝きを増したプンゲンス ‘グロボーサ・グラウカ’。
さらに季節が進んで、
随時宿根草を加えながら、そして5月ともなれば…
庭はどこも賑やかで楽しいものになってくれました。
図面下側が南となります。
建物の配置を斜めにしたため、建物正面の南西の庭と、ガレージのある南東の庭、通行量の多い交差点に面した左手北西の庭、そして和室に面した北東の庭、4つの庭が生まれました。
ここでは便宜上建物正面を南の庭と称して、以下東の庭、西の庭、北の庭というように紹介していきます。
まずは、南の庭。
こちらは建物の外観と「北欧の岩山」のイメージに即して針葉樹でまとめました。
お客さまのご希望でもあるモミと、色彩のコントラストを出すためブルー系のアトラスシーダー、ゴールド系のヨーロッパゴールドとフィリフェラ・オーレア、そしてイチイ…
冬の景色をより豊かにするため矮性種や這性種のコニファー類もたくさん使いたかったのですが、実はこの近隣は著名な梨の生産地でもありまして、赤星病を媒介する恐れのあるビャクシン類の使用は控えた方が良いことが分かりました。そこでこれに代わる「冬も美しい常緑樹」としてヒース=エリカを多用することになった訳です。
エリカは原種に近いものを中心に8種類ほどを入れました。
常緑樹が中心の南の庭ですが、季節の変化と花色を加えるため(それでいて高さは極力抑えるため)、階段とスロープ、ふたつのアプローチの中央にシダレエンジュを入れてみました。
もともと縁起の良い樹とされるエンジュのうちでもシダレ種は珍重されて来たようですが、ここでは落葉後の姿も面白く、花も楽しめ、上に延びて景色を阻害せず玄関前を暗くしないという特性に惹かれました。
玄関から東のガレージに向かう動線は高低差があるために石張りの階段と小さな踊り場があります。
こちらは建物が道路に最も近いため、時間を掛けてコンクリート擁壁による土留め工事を施した箇所。もちろん、完成すればその痕跡はまるで有りませんが…
こちらをわれわれはささやかながら「登山道」と「展望台」と呼んでいます。手すりも当初は鉄製の堅固なものを考えましたが、「山の遊歩道」のイメージを大切にするため、ACQ防腐処理済みの国産杉を使って手作りで製作しました。
東側のガレージは「山の麓の駐車場」のイメージ。
2つの「登山道」が、玄関や北側の庭とつなぎます。
こちらは日当たりが良くて北風を避けられるため、以前のお住まいで大切に育てられてきたソテツを植え込み、これを中心に南洋風の植物でまとめました。
セレノア・ルペンス(ノコギリヤシ)とチャメロプス、アガベとニューサイラン、そしてハーブと多肉植物たち…
そしてここから「北登山道」を登るとささやかな隠れハーブガーデンとキッチンガーデン。こちらは奥様のリクエストでもありました。
一方、西側はリビングの強い西日を遮りつつ小鳥たちの来訪を楽しみ、かつ夕方の景色を楽しむためにささやかな落葉の疎林としました。
シラカバの‘ジャックモンティー’、アオハダ、アメリカヒトツバタゴ、ジューンベリー ‘ロビンヒル’、ノルウェーカエデ ‘プリンストンゴールド’、クラブアップル ‘プロフュージョン’…
そしてウッドデッキの中央には奥様がお好きという株立ちのヤマボウシ。
南側の針葉樹の森から西側の落葉樹の林への流れを唐突で不自然なものにしないよう、つなぎにイチイを入れたり、岩の組み方を少しずつ変えていったりという工夫がありました。
角の部分は鋭い角度を和らげるため、当初は図面にある通り、岩を前面に出さず低木の植栽にするつもりでしたし、実際そのように岩の配置をしてみたのですが…
こちらはご主人の希望もあって、南側の力強い石組みをここでも再現することにしました。
それも最初はまだおとなしめに…
それが後ほど岩を追加してこのようになりました。
遠目に見たときこれが結局、貴重なアクセントとなったような気がいたします。
そして、この岩がいったん静かな流れに変わり、北側に曲がると再度力強いものになります。
ここで配慮したのは、外からの景色はこれまでの洋の石組みの流れを保ちながら、内側の和室前の庭からの景色では和(風)の石組みとなるようにすること。
とは言え、そこはガーデン工房 結 -YUI-の庭ですのでたとえ和の庭とは言え、主役はあくまでも植物たちです。
こちらの植栽はやや和の味わいがある樹のうち、外側には常緑を、内側には落葉を配置しました。
ソヨゴ、トウネズミモチ ‘トリカラー’、オガタマ ‘ポートワイン’、ロドレイア、斑入りユズリハ、アセビ、ビバーナム、コハウチハカエデ、ニシキギ、山椒など。
ましてこちらの庭は勝手口側と言え、町の中心に向かう第2の玄関口でも有ります。
そうであれば、当然ながらそれなりのしつらえがあって然るべきで…
できる限りお洒落に、かつローメンテナンスで機能的な庭に仕上がったと思っています。
次回はこの庭が夏を迎えて緑を深めた様子をお伝えしたいと思います。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
ロックガーデンを造る~H市N様邸01 2011年夏~冬
テーマ:しごと
2013/01/07 06:02
ロックガーデンを造っていただきたいのですが…
と、そのご家族からご依頼があったのは一昨年の夏のことでした。
折しもHANA sakaso プロジェクト の準備に余念がなかった時期でもありましたので、9月の最初の活動から戻った翌日に打ち合せに伺わせていただく事にしました。
場所は閑静な住宅地。その入口とも言える場所にそのお宅は建設中でした。
建物が見ての通り北欧の山荘風であることから、それが岩山の上に建っているようなデザインをご希望とのでした。
だからごつごつした岩山のようなロックガーデンにしていただきたい。植物の選択はお任せする。
なんとありがたいご依頼でしょうか。
さらに、これはわたしもとても勉強させていただいた事なのですが、長方形の敷地の中にあえて建物を斜めに配置され、隣接するお宅や道路に対して影響を与えたり、または制限を受けたりすることを少なくするというアイデアで、そのことで極端に日当たりが良くない部屋を無くし、風の抜けも良くするというものでした。敷地をできる限り有効に使って少しでも広い庭を確保するという従来のスタンスとは全く逆の発想ながら、しかしそのことで結果的に、東西南北すべての空間を有効に活用することが出来るわけです。
そして以前のお住まいで育てられていたソテツを始めとした樹木の移植や、ガレージの位置、進入口の設置位置などいくつかのご要望は伺いましたが、大方はこちらに任せて頂けるということになりました。
それにしても、ロックガーデンの施工例など一切公開していなかったわたしに、よくもご依頼くださったもの…
もしかすると英国のRHSガーデン・ウィズリーに関するわたしの記事をご覧になったのかも知れません。
わたしにとってもそれは、これまでに見てきたなかでもっとも素敵なロックガーデンでした。
西洋のロックガーデンと和の石庭…その石組みの違いは何なのでしょう。
以下はまったくわたしの粗削りな私見ですので間違っても参考になれないで頂きたいのですが、
石の個性、その表情や形を読み取って、それを最大限引き出せるように組むのが和の手法。
これに対して周囲の植物たちの個性を活かすため、その器として配置するが西洋のロックガーデンの手法なのではないか、と。
そうであるならば仮に同じ石を使ったとしても、和と洋では見せる面も組み方もまったく違ってくると言う事になりそうです。
わたしはもともと積み石の技法を基礎から学んだ経験はありませんので、今回はあくまで石を並べてその間にゆったりとしたスペースを作り、その場所に適した植物たちを植え込んでいく、という工法で進めていくこととしました。
では、どのような石を使うか…
あちこち訪ねて見て歩きようやく出逢ったのは、表情が豊かで野趣あふれ、それでいて比較的安価な白根石でした。
群馬県で産出される安山岩の一種で、鳥海石などの仲間だそうです。
建物を斜めに配置することで生まれた東西南北の4つの庭のすべてで、それぞれ違ったコンセプトの元にこの白根石を使い分け、まったく違った4つのガーデンを作る。
それがわたしの基本方針となりました。
工期は約6ヶ月。
10月下旬の建物お引き渡し後に着手して、年内に掘削や土留め擁壁などの土木工事と石組み、そして寒さが本格化する前に第一期植栽工事を行います。石組みを終える前に植え込まなければならないような大きめの針葉樹や、旧宅から掘り出して借り置きしておいた樹たちを先行して植えました。
ここでありがたかったのは、隣接した空き地を借りられたことでした。
石の一つ一つの表情をじっくり見ながら、ひとつ置いては次のひとつを選んでいくという作業ですので、その場所を現地に確保できたからこそ、作業を順調に進めることが出来たのだと言えます。
その作業の最中、奇妙なことが続きました。
おそらくこれとこれとこの石だろう、とりあえず持って行ってみようと思って、それらをクレーン付き4トントラックに積み込んで運び出すと、それらが思っていたところにぴたりとはまる。いえ、その石以外に考えられないだろう、というくらい石と石がつながっていく…
それはさながらわたしの考えやアイデアを越えて、石の方から、「今度は自分だ」、「おい、その次は自分を持って行け」と名乗り出てくれているかのよう。
ありがたいと思いました。
1月にはさらに落葉樹の植栽を施して石組みの追加、その後アプローチの石張りやウッドデッキ、ガレージなどの工事を4月までに終えて、これをいったんの完了としました。ここまでが6ヶ月。
ただ、その後も手を加えたりメンテナンスを重ねながら、春、初夏、梅雨、初秋、晩秋と何度かの追加植栽を施していくという、全体としてはそのようなプランを立てました。
それにしてもこの年の冬は厳しいものでした。
外仕事には慣れ、冬の作業を何十年と経験してきた身体も、そろそろガタが出始めたのかと不安な気持ちになるくらいに…
その間、幾度となく現場を空けさせていただきもしました。
HANA sakaso プロジェクトの活動を継続できたのも、こちらのご家族の深いご理解と温かいお言葉があってのことです。
こちらは慌てなくて良いですから、そちらのお仕事を優先して下さい、
もっとゆっくり身体を休めてから戻って下されば良かったのに
…と。
そのお気持ちに後押しされるようにして、被災地には何往復かさせていただきました。
そのように冬を越え、少しずつロックガーデンは完成していったのでした。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
と、そのご家族からご依頼があったのは一昨年の夏のことでした。
折しもHANA sakaso プロジェクト の準備に余念がなかった時期でもありましたので、9月の最初の活動から戻った翌日に打ち合せに伺わせていただく事にしました。
場所は閑静な住宅地。その入口とも言える場所にそのお宅は建設中でした。
建物が見ての通り北欧の山荘風であることから、それが岩山の上に建っているようなデザインをご希望とのでした。
だからごつごつした岩山のようなロックガーデンにしていただきたい。植物の選択はお任せする。
なんとありがたいご依頼でしょうか。
さらに、これはわたしもとても勉強させていただいた事なのですが、長方形の敷地の中にあえて建物を斜めに配置され、隣接するお宅や道路に対して影響を与えたり、または制限を受けたりすることを少なくするというアイデアで、そのことで極端に日当たりが良くない部屋を無くし、風の抜けも良くするというものでした。敷地をできる限り有効に使って少しでも広い庭を確保するという従来のスタンスとは全く逆の発想ながら、しかしそのことで結果的に、東西南北すべての空間を有効に活用することが出来るわけです。
そして以前のお住まいで育てられていたソテツを始めとした樹木の移植や、ガレージの位置、進入口の設置位置などいくつかのご要望は伺いましたが、大方はこちらに任せて頂けるということになりました。
それにしても、ロックガーデンの施工例など一切公開していなかったわたしに、よくもご依頼くださったもの…
もしかすると英国のRHSガーデン・ウィズリーに関するわたしの記事をご覧になったのかも知れません。
わたしにとってもそれは、これまでに見てきたなかでもっとも素敵なロックガーデンでした。
西洋のロックガーデンと和の石庭…その石組みの違いは何なのでしょう。
以下はまったくわたしの粗削りな私見ですので間違っても参考になれないで頂きたいのですが、
石の個性、その表情や形を読み取って、それを最大限引き出せるように組むのが和の手法。
これに対して周囲の植物たちの個性を活かすため、その器として配置するが西洋のロックガーデンの手法なのではないか、と。
そうであるならば仮に同じ石を使ったとしても、和と洋では見せる面も組み方もまったく違ってくると言う事になりそうです。
わたしはもともと積み石の技法を基礎から学んだ経験はありませんので、今回はあくまで石を並べてその間にゆったりとしたスペースを作り、その場所に適した植物たちを植え込んでいく、という工法で進めていくこととしました。
では、どのような石を使うか…
あちこち訪ねて見て歩きようやく出逢ったのは、表情が豊かで野趣あふれ、それでいて比較的安価な白根石でした。
群馬県で産出される安山岩の一種で、鳥海石などの仲間だそうです。
建物を斜めに配置することで生まれた東西南北の4つの庭のすべてで、それぞれ違ったコンセプトの元にこの白根石を使い分け、まったく違った4つのガーデンを作る。
それがわたしの基本方針となりました。
工期は約6ヶ月。
10月下旬の建物お引き渡し後に着手して、年内に掘削や土留め擁壁などの土木工事と石組み、そして寒さが本格化する前に第一期植栽工事を行います。石組みを終える前に植え込まなければならないような大きめの針葉樹や、旧宅から掘り出して借り置きしておいた樹たちを先行して植えました。
ここでありがたかったのは、隣接した空き地を借りられたことでした。
石の一つ一つの表情をじっくり見ながら、ひとつ置いては次のひとつを選んでいくという作業ですので、その場所を現地に確保できたからこそ、作業を順調に進めることが出来たのだと言えます。
その作業の最中、奇妙なことが続きました。
おそらくこれとこれとこの石だろう、とりあえず持って行ってみようと思って、それらをクレーン付き4トントラックに積み込んで運び出すと、それらが思っていたところにぴたりとはまる。いえ、その石以外に考えられないだろう、というくらい石と石がつながっていく…
それはさながらわたしの考えやアイデアを越えて、石の方から、「今度は自分だ」、「おい、その次は自分を持って行け」と名乗り出てくれているかのよう。
ありがたいと思いました。
1月にはさらに落葉樹の植栽を施して石組みの追加、その後アプローチの石張りやウッドデッキ、ガレージなどの工事を4月までに終えて、これをいったんの完了としました。ここまでが6ヶ月。
ただ、その後も手を加えたりメンテナンスを重ねながら、春、初夏、梅雨、初秋、晩秋と何度かの追加植栽を施していくという、全体としてはそのようなプランを立てました。
それにしてもこの年の冬は厳しいものでした。
外仕事には慣れ、冬の作業を何十年と経験してきた身体も、そろそろガタが出始めたのかと不安な気持ちになるくらいに…
その間、幾度となく現場を空けさせていただきもしました。
HANA sakaso プロジェクトの活動を継続できたのも、こちらのご家族の深いご理解と温かいお言葉があってのことです。
こちらは慌てなくて良いですから、そちらのお仕事を優先して下さい、
もっとゆっくり身体を休めてから戻って下されば良かったのに
…と。
そのお気持ちに後押しされるようにして、被災地には何往復かさせていただきました。
そのように冬を越え、少しずつロックガーデンは完成していったのでした。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
昨年の折原ファーム
テーマ:しごと
2013/01/04 16:54
お久しぶりです。
今年もどうかよろしくお願いいたします。
考えてみるとしばらく仕事のブログを書いていませんでした。
もっとも去年アップしたブログが17ですから、なにをか況んや、ですが…
調べてみると最後に書いた仕事の記事が一昨年の7月ですので、うーんと遙か昔のことになります。もともと最初の段階で、ビジネスブログにするのは無理と見切りを付けましたし、共有したい情報や伝えたいメッセージを、それが発生するたびに書き込めば良いと考えるようになりましたので、こんなもので良いのでしょう。
とは言うものの、おかげさまで「ガーデン工房 結 -YUI-」も仲間が加わり、以前の一人で好き勝手やっていれば良い状態ではなくなりました。
何より昨年改装して少しは使いやすくなったHPも、それだけでは施工事例の説明が不足しているとお叱りを受けることしきりで、その補足的役割も本当ならこのブログでやっていかなくてはならない訳で…
幸いにして、というべきか、悲しいことに、と言うべきか、今年に入ってさほど仕事の予定が立て込んでいる訳ではありませんので、ここらで昨年、いや一昨年あたりからの仕事を振り返っておきたいと思います。
昨年の春、ひとり娘が高校に進学し、これに合せてそれまで資材置き場と植物の仮置き場でしかなかった「折原ファーム」にログキャビンを建てることになりました。(これをもって寄居営業所を名乗るのは不遜きわまりないのですが、名乗っています)
ここ秩父のわが家から娘が自力で高校に通学することは難しく(最寄り駅まで歩くと1時間半は掛かりますので)、通学の拠点として小屋を建てれば朝夕そこまで確実に送迎が出来、そこから先は何とか自力で学校まで通えるだろうという窮余の策でした。無人駅、ローカル線とはいえ、JR八高線「折原」駅から徒歩数分という立地です。
もちろん…
小屋を中心にしたささやかなコテージガーデンを作りたいという願望もあったものですが。
きわめてリーズナブルな「在庫一掃」、「説明書ナシ」、「返品無用」のログキャビンキットを購入して仲間と製作に入ったのが昨年の3月下旬でした。
大方の心配をよそにキットの組み立てはとても簡単で楽しく、無償で参加してくれた森昭彦氏も非常に楽しんでいってくれました。
むろん、受益者の一人でもある娘も、ちゃんと働きました。
こうしてどうにか入学式と花見までに間に合わせて建てたログキャビンを拠点に、娘は高校生活を満喫し、わたしたちは仕事と東北での活動にせいを出したのでした。
その間、これまで何度かの過酷な冬と夏を乗り切って生き延びてきた植物たちは伸びやかに成長し、あるいは勝手に繁茂し…
わたしたちを楽しませてくれましたが、
それも梅雨までのこと。
夏はほとんど通過点でしかなくなり、あまりの酷暑で日中の室内温度が50℃近くにまで達するログキャビンは娘にも使ってもらえず、一時期はとても不義理なことをしたものでした。
しかし、ようやく過ごしやすくなって仕事もひと段落した秋あたりにはウッドデッキも完成させて、何とか年末には形が整い、これからが楽しみな折原ファームです。
ひと段落した仕事が、そのままひと段落しっぱなしというのが、少し気になるところですが…
続けてしばらく、一昨年からの仕事を紹介して参ります。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
今年もどうかよろしくお願いいたします。
考えてみるとしばらく仕事のブログを書いていませんでした。
もっとも去年アップしたブログが17ですから、なにをか況んや、ですが…
調べてみると最後に書いた仕事の記事が一昨年の7月ですので、うーんと遙か昔のことになります。もともと最初の段階で、ビジネスブログにするのは無理と見切りを付けましたし、共有したい情報や伝えたいメッセージを、それが発生するたびに書き込めば良いと考えるようになりましたので、こんなもので良いのでしょう。
とは言うものの、おかげさまで「ガーデン工房 結 -YUI-」も仲間が加わり、以前の一人で好き勝手やっていれば良い状態ではなくなりました。
何より昨年改装して少しは使いやすくなったHPも、それだけでは施工事例の説明が不足しているとお叱りを受けることしきりで、その補足的役割も本当ならこのブログでやっていかなくてはならない訳で…
幸いにして、というべきか、悲しいことに、と言うべきか、今年に入ってさほど仕事の予定が立て込んでいる訳ではありませんので、ここらで昨年、いや一昨年あたりからの仕事を振り返っておきたいと思います。
昨年の春、ひとり娘が高校に進学し、これに合せてそれまで資材置き場と植物の仮置き場でしかなかった「折原ファーム」にログキャビンを建てることになりました。(これをもって寄居営業所を名乗るのは不遜きわまりないのですが、名乗っています)
ここ秩父のわが家から娘が自力で高校に通学することは難しく(最寄り駅まで歩くと1時間半は掛かりますので)、通学の拠点として小屋を建てれば朝夕そこまで確実に送迎が出来、そこから先は何とか自力で学校まで通えるだろうという窮余の策でした。無人駅、ローカル線とはいえ、JR八高線「折原」駅から徒歩数分という立地です。
もちろん…
小屋を中心にしたささやかなコテージガーデンを作りたいという願望もあったものですが。
きわめてリーズナブルな「在庫一掃」、「説明書ナシ」、「返品無用」のログキャビンキットを購入して仲間と製作に入ったのが昨年の3月下旬でした。
大方の心配をよそにキットの組み立てはとても簡単で楽しく、無償で参加してくれた森昭彦氏も非常に楽しんでいってくれました。
むろん、受益者の一人でもある娘も、ちゃんと働きました。
こうしてどうにか入学式と花見までに間に合わせて建てたログキャビンを拠点に、娘は高校生活を満喫し、わたしたちは仕事と東北での活動にせいを出したのでした。
その間、これまで何度かの過酷な冬と夏を乗り切って生き延びてきた植物たちは伸びやかに成長し、あるいは勝手に繁茂し…
わたしたちを楽しませてくれましたが、
それも梅雨までのこと。
夏はほとんど通過点でしかなくなり、あまりの酷暑で日中の室内温度が50℃近くにまで達するログキャビンは娘にも使ってもらえず、一時期はとても不義理なことをしたものでした。
しかし、ようやく過ごしやすくなって仕事もひと段落した秋あたりにはウッドデッキも完成させて、何とか年末には形が整い、これからが楽しみな折原ファームです。
ひと段落した仕事が、そのままひと段落しっぱなしというのが、少し気になるところですが…
続けてしばらく、一昨年からの仕事を紹介して参ります。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
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