低床ウッドデッキを造る~川越市K様邸 2011年初夏
テーマ:しごと
2013/01/20 16:02
最初にお話を頂いたのは2010年の夏のことでした。
豊かな田園に囲まれた住宅地ながら、まだ若いご家族の多い新しい地区であるため、人とクルマの動きがとても多いというのが最初の印象でした。
その住宅地の、比較的目立つ角地にあるご住居にウッドデッキを造り、目隠しをされたいというご希望。
雑草にもご苦労されている様子でした。
とても具体的なイメージをお持ちでしたのでそれを伺いながらデザインを重ねるうちに、お子様を授かられたとの報。しかも、双子のお子様!
若いご家族の暮らしをイメージしながら描いた図面がこちらでした。
その後デザインを確定するまでに掛けた時間がおよそ1年。
東日本大震災を経て、その後のガソリン不足で電車と徒歩でお打ち合せに通ったこともありましたが、じっくり練り上げたプランでしたので、ガソリンの安定供給を待ってからは一気に仕上げることが出来ました。
さて…
なにせ双子の赤ちゃんですからベビーカー用のスロープが欲しい。それもやや幅の広い…
とは言え、いつまでも必要なベビーカーである訳でも無く、駐車場をいたずらに狭くする常設のスロープというのもどうだろう…
という訳で着脱可能なウリン製のスロープを、実際の双子さん用ベビーカーのサイズに合わせて造らせていただきました。
それがこちら。
強度と耐久性は折り紙付き。
いずれ不要になったときはベンチにでもプランターにも、転用が可能です。
そして主役のウッドデッキ。
住宅地の宅地の高さはどこも高く設定されていましたが、こちらのお宅はその中でも特に高く、おまけに角の目立つ立地でもありましたので、その庭にウッドデッキというのはあまりに目立ちすぎました。
だから目隠しも合せて希望されていたのですが、デッキの高さを屋内の床の高さまで上げて、そこからの目隠しとなると囲いはとんでもない高さになってしまいます。危険でもあり、当然ながら予算もバカになりません。
ですので、ここでは宅地の土の高さに近づけた、低床型のウッドデッキを提案しました。
いったん屋内の床の高さに合わせた縁側状の大きなステップを造り、そこから一気に土の高さ近くまで落とす。その間に可動式の踏み台を造って昇降する、というものでした。
そして目隠しの塀はご夫婦の希望に添って製作しました。
ガラスブロックと照明を随所に配置して、侵入者への警戒をしながら、それでもお洒落に。
水栓も壁面の両側に配置しました。
ふたつの化粧壁に囲まれた通路です。
目隠しの壁はガレージ側からするととても高く感じられて圧迫感がありますので、ガレージ側の壁は低く抑え、2枚の壁で目隠し効果を高めようというアイデアでした。
おとなり側の目隠しは柔らかめにトウネズミモチ ‘トリカラー’の列植を施し、ウッドデッキから手を伸ばせる位置にハーブを中心とした宿根草の植栽を行いました。
これらの他、以前から植えられていた樹木の配置を少しばかり変え、さらに何本かを加え、
重なり合う緑と化粧壁との連なりのなか、季節ごとに姿を変える目隠しは、ご家族の暮らしそのものを豊かなものにしてくれるに違いないと思います。
成長された双子のお子さまは、きっとこの通路でかくれんぼに興じることもあるでしょう。
浄化槽が有るためにギリギリまで植栽が出来ず、その為にあえて通路としたこのスペースも、なかなか得がたい遊びの空間です。
庭づくり、空間づくりは、じつは子どもたちにとっても楽しく魅力的なものでなければならない。
またひとつ、学んだ気がしています。
現在しっかり更新を重ねていますので、よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
ロックガーデンを造る~H市N様邸04 2012年秋
テーマ:しごと
2013/01/15 05:10
秋のロックガーデン。
厳しい夏を乗り切った…どころか、その暑さをしっかり味方に付けてたくましく成長した植物たちに、さらに秋の草花を加え、春咲きの球根も追加して、1年がかりでそれは完成させることが出来ました。
最初に植えたモミやアトラスシーダーから数え始め、この秋に植え込んだものまでを再度集計し直したところ、
その種類は約170種。
個体数は820でした。
中には最初の冬を乗り切れなかったものも、厳しい夏に耐えきれなかったものも、ムシたちのご馳走になったものも有りますが、とにかく、それがこの場所に集まった生命たちの数です。
時々思う事があるのですが、
われわれ人間はこのようにして庭を造ります。
それは自然の模倣であったり、新しい居住空間であったり、あるいはコレクションの展示であったりする訳ですが、
結局のところそこで人間がなし得る唯一のことは、
場を作り、そのことで多くの生命を集めるという、その一点に尽きるのではないかと。
集まった生命たちはそこで人間が作った場を整え、
時に作り直し、
彼らにとって居心地の良い空間に変えていく。
だから、その場所が人間にとっても心地よい空間になっていく。
そんな風に考え始めると、
そこで無力感に打ちのめされるか、
はたまた喜びに満たされるか、
まあ、そんなところでガーデナーは自らの資質を問われているのかも知れません。
さて。
1年を掛けて完成した、と言うか成長に向けた第一歩を踏み出したこのロックガーデンは、
はたしてどれだけそこに住まわれるご家族や、ご近所の方や、通行人の方に喜びをもたらしてくれるでしょうか?
実はすでにご家族の皆さんの喜びの声は、充分に伺わせていただくことが出来ました。
ときおり散歩で近くを通りかかる、近所の方の賞賛の声も戴きました。
わざわざこの庭を見るため、隣町からジョギングで来られるという方にもお目に掛かりました。
でも、ガーデンの完成が今ではなく、これからの成長の先にあるとしたら、このとんでもないガーデンを維持管理していくのは、引き続きガーデン工房 結 -YUI-の仕事であるわけで、
ともかく、とんでもない責任を今更のように感じているところです。
…ひしひしひし。
そこで、冒頭の話に戻るわけですが、
結果的にわたしが集めてしまった800を越える生命たち。
彼らがこの場所の価値を高めてくれるのなら、
所詮わたしの心配は杞憂に過ぎないのではないか…
このロックガーデンは生まれた時からすでに、美しく成長することが決められているのかも知れない…
とまでは言い過ぎかもしれませんが、
今思い出すのは石組みの最中のこと。
あの時、わたしの選ぶ石たちは面白いくらいにここぞという場所に収まっていってくれました。
それはすでにわたしの力でも才能でもなく、
正直な印象を言えば、
みずから手を上げて自分をアピールする石を、こちらがただ選んで希望する場所に置けば良かったという…
それではおまえは石の声を聞けたというのか、
と問われれば困るものの、
それでもやはりその質問には応と答えるしかありません。
それが地の力。
生命の発する力。
庭という空間が秘めた力。
ここもまた、「祝福された場所」のひとつであると、
わたしは強くそう感じています。
そして、そうした場の存在を、広く伝えていくのが自分の「しごと」であると、
これもまた強くそう感じているのです。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
厳しい夏を乗り切った…どころか、その暑さをしっかり味方に付けてたくましく成長した植物たちに、さらに秋の草花を加え、春咲きの球根も追加して、1年がかりでそれは完成させることが出来ました。
最初に植えたモミやアトラスシーダーから数え始め、この秋に植え込んだものまでを再度集計し直したところ、
その種類は約170種。
個体数は820でした。
中には最初の冬を乗り切れなかったものも、厳しい夏に耐えきれなかったものも、ムシたちのご馳走になったものも有りますが、とにかく、それがこの場所に集まった生命たちの数です。
時々思う事があるのですが、
われわれ人間はこのようにして庭を造ります。
それは自然の模倣であったり、新しい居住空間であったり、あるいはコレクションの展示であったりする訳ですが、
結局のところそこで人間がなし得る唯一のことは、
場を作り、そのことで多くの生命を集めるという、その一点に尽きるのではないかと。
集まった生命たちはそこで人間が作った場を整え、
時に作り直し、
彼らにとって居心地の良い空間に変えていく。
だから、その場所が人間にとっても心地よい空間になっていく。
そんな風に考え始めると、
そこで無力感に打ちのめされるか、
はたまた喜びに満たされるか、
まあ、そんなところでガーデナーは自らの資質を問われているのかも知れません。
さて。
1年を掛けて完成した、と言うか成長に向けた第一歩を踏み出したこのロックガーデンは、
はたしてどれだけそこに住まわれるご家族や、ご近所の方や、通行人の方に喜びをもたらしてくれるでしょうか?
実はすでにご家族の皆さんの喜びの声は、充分に伺わせていただくことが出来ました。
ときおり散歩で近くを通りかかる、近所の方の賞賛の声も戴きました。
わざわざこの庭を見るため、隣町からジョギングで来られるという方にもお目に掛かりました。
でも、ガーデンの完成が今ではなく、これからの成長の先にあるとしたら、このとんでもないガーデンを維持管理していくのは、引き続きガーデン工房 結 -YUI-の仕事であるわけで、
ともかく、とんでもない責任を今更のように感じているところです。
…ひしひしひし。
そこで、冒頭の話に戻るわけですが、
結果的にわたしが集めてしまった800を越える生命たち。
彼らがこの場所の価値を高めてくれるのなら、
所詮わたしの心配は杞憂に過ぎないのではないか…
このロックガーデンは生まれた時からすでに、美しく成長することが決められているのかも知れない…
とまでは言い過ぎかもしれませんが、
今思い出すのは石組みの最中のこと。
あの時、わたしの選ぶ石たちは面白いくらいにここぞという場所に収まっていってくれました。
それはすでにわたしの力でも才能でもなく、
正直な印象を言えば、
みずから手を上げて自分をアピールする石を、こちらがただ選んで希望する場所に置けば良かったという…
それではおまえは石の声を聞けたというのか、
と問われれば困るものの、
それでもやはりその質問には応と答えるしかありません。
それが地の力。
生命の発する力。
庭という空間が秘めた力。
ここもまた、「祝福された場所」のひとつであると、
わたしは強くそう感じています。
そして、そうした場の存在を、広く伝えていくのが自分の「しごと」であると、
これもまた強くそう感じているのです。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
ロックガーデンを造る~H市N様邸03 2012年夏
テーマ:しごと
2013/01/14 05:33
昨年の春、4月下旬から5月にかけて…
このブログの記事を書くにあたり、こちらのお宅に植え込んだ低木や宿根草たちの数を集計してみました。
約90種、650株。
われながら、少し愕然となるような数字でした。
よくもまあ、植えたものです。
それらが6月を迎え、力強く育ち始めました。
ロックガーデンですので、そこはただの石組みとは違い、岩と岩の間にたっぷりと腐食土を入れています。
それらの表土が当初、雨のたびに流出してお客さまにご迷惑を掛けてきました。
でも、それも夏までですので、どうかそれまではご辛抱下さい。
わたしはそう申し上げてきました。
それまでには岩と岩の間に植え込んだ低木がしっかりと根を拡げ、あるいは宿根草たちが地表を覆い、おのずと土の流出を止めてくれる筈でした。
ロックガーデンはどうしてもドライなものにならざるを得ません。
地表の水分はすぐに岩間に染みこんでしまい、さらに岩自体が水分を吸収します。
だからここで使う植物は乾燥に強く、日当たりの良い箇所では暑さにも強くなくてはなりません。
そうした中で少しでも早く地表面を覆ってくれるグランドカバーとしてわたしが採用したのは、
クリーピング系のタイム、セダム類、ヒメイワダレソウ、ヒメツルソバ、リシマキア ‘ヌンムラリア・オーレア’、ロニセラ、アメリカンブルー、コンボルブルズ、グーデニア、オノエマンセマといった仲間たちでした。
それらを環境ごとに使い分け、例えば南側はクリーピング・タイムを中心に、東のガレージをセダム類で、西側の落葉の林の足元はヒメイワダレソウで覆い、北の和の庭の建物寄りを日陰にも強いヒメツルソバで、樹の足元を同じくリシマキアでというように植え分けたのでした。
6月のこの時点ではごらん通り、ようやくシュートを延ばし、根を拡げ始めたところです。
一方でその他の植物たちも確実に大きくなり、あるいは花を咲かせ、あるいは色づき…
これが5月のことでした。
さらに長かった7,8月を経て…
さすがに9月ともなれば、植物たちのボリュームがはっきりそれと分かるほど増大しています。
このときの訪問ではさすがに追加は出来ず、秋の宿根草の植え込みは翌月まで待つことにしました。
その代わり、かなりの量の切り戻しを行いました。
土の露出もめっきり少なくなり、これでもう雨ごとの流出も過去のもの。
キッチンガーデンの野菜たちもこんなに大きくなり、
何よりも驚異的だったのはヒメイワダレソウたち。
雑草の世話をしなくて済むよう、早々に緑のカーペットにしてしまいましょう、
…とは申し上げましたが、
まさか半年足らずでここまでこの場所を気に入ってもらえるとは!
和の庭のグランドカバーももう一息といったところです。
10月の再訪と追加植栽をお約束して、まだまだ残暑厳しい9月の庭を後にしたのでした。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
このブログの記事を書くにあたり、こちらのお宅に植え込んだ低木や宿根草たちの数を集計してみました。
約90種、650株。
われながら、少し愕然となるような数字でした。
よくもまあ、植えたものです。
それらが6月を迎え、力強く育ち始めました。
ロックガーデンですので、そこはただの石組みとは違い、岩と岩の間にたっぷりと腐食土を入れています。
それらの表土が当初、雨のたびに流出してお客さまにご迷惑を掛けてきました。
でも、それも夏までですので、どうかそれまではご辛抱下さい。
わたしはそう申し上げてきました。
それまでには岩と岩の間に植え込んだ低木がしっかりと根を拡げ、あるいは宿根草たちが地表を覆い、おのずと土の流出を止めてくれる筈でした。
ロックガーデンはどうしてもドライなものにならざるを得ません。
地表の水分はすぐに岩間に染みこんでしまい、さらに岩自体が水分を吸収します。
だからここで使う植物は乾燥に強く、日当たりの良い箇所では暑さにも強くなくてはなりません。
そうした中で少しでも早く地表面を覆ってくれるグランドカバーとしてわたしが採用したのは、
クリーピング系のタイム、セダム類、ヒメイワダレソウ、ヒメツルソバ、リシマキア ‘ヌンムラリア・オーレア’、ロニセラ、アメリカンブルー、コンボルブルズ、グーデニア、オノエマンセマといった仲間たちでした。
それらを環境ごとに使い分け、例えば南側はクリーピング・タイムを中心に、東のガレージをセダム類で、西側の落葉の林の足元はヒメイワダレソウで覆い、北の和の庭の建物寄りを日陰にも強いヒメツルソバで、樹の足元を同じくリシマキアでというように植え分けたのでした。
6月のこの時点ではごらん通り、ようやくシュートを延ばし、根を拡げ始めたところです。
一方でその他の植物たちも確実に大きくなり、あるいは花を咲かせ、あるいは色づき…
これが5月のことでした。
さらに長かった7,8月を経て…
さすがに9月ともなれば、植物たちのボリュームがはっきりそれと分かるほど増大しています。
このときの訪問ではさすがに追加は出来ず、秋の宿根草の植え込みは翌月まで待つことにしました。
その代わり、かなりの量の切り戻しを行いました。
土の露出もめっきり少なくなり、これでもう雨ごとの流出も過去のもの。
キッチンガーデンの野菜たちもこんなに大きくなり、
何よりも驚異的だったのはヒメイワダレソウたち。
雑草の世話をしなくて済むよう、早々に緑のカーペットにしてしまいましょう、
…とは申し上げましたが、
まさか半年足らずでここまでこの場所を気に入ってもらえるとは!
和の庭のグランドカバーももう一息といったところです。
10月の再訪と追加植栽をお約束して、まだまだ残暑厳しい9月の庭を後にしたのでした。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/