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和から洋へ、庭をデザインする~神川町B様邸 2011年春~2012年冬

テーマ:しごと

 以前の会社時代からお世話になっている方がいて、その方が仕切っている現在の勤め先は土木専門の会社です。これはその方からのご依頼で、庭の設計と、その会社で対応できない箇所の施工ということで引き受けたお宅です。

01 着手前


 2011年の春、震災の直後に初回打ち合せをし、何度か打ち合せを重ねてプランに変更を加えました。

02 着手前


 興の向くままに石を並べ、植栽された庭を全面的に改装し、手つかずの玄関前を含めて和洋取り混ぜたスタイルにされたいとのこと。

03 着手前


 最初はサン・ルームのご要望を加え、しかしそれでも全体に和の雰囲気を残した提案でした。

04-1 平面図1


 その後、プランは和洋併せ持ったフロントから、一旦袖垣で仕切られたその先で和に。さらにその奥に向かって洋へと変化するものと改め、

04-2 平面図2


 最終的には玄関前にスロープを追加することになってよりモダンに。袖垣もスリットフェンスに改めてお洒落なものに変わっていきました。

04-3 平面図3


 施工開始はその年の冬。わたしはロックガーデンの製作に入ったばかりで、時折そちらの現場を抜けさせて頂きながら対応し、翌春、ロックガーデンの完成を待って担当するウッドデッキやスリットフェンス、植栽の仕上げなどの施工に戻りました。

 そしてこれが完成後1年が経過した、昨年冬の再訪時の写真です。

05 1年後の庭 門回り


 紆余曲折を重ねた玄関前の植栽は、やはり和洋の雰囲気を併せ持つホンコンエンシスとトウカエデ ‘花散里’、そして ヤマボウシ ‘サトミ’ を骨格とし、足元はビバーナム、イヌツゲ ‘貴婦人’、コトネアスターで埋めました。季節には花散る里がとても美しかったとのことです。

06 1年後の庭 玄関脇スロープ


 スロープの左はイヌツゲとリシマキア・ヌンムラリアで日陰部分をカバーし、その正面にはサカキのトリカラー。

07 1年後の庭 門塀裏植え込み


 門塀裏の植え込みを3種のアベリア、ホープレイズとフランシスメイソンとエドワード・ゴーチャーで埋めました。

08 1年後の庭 スリットフェンス


 スリットフェンスはウリンの角材。70×70を柱とし、45×60のスリットを並べてできる限り細かな線を集めてみました。

09 1年後の庭 スリットフェンス


 足元にはさらにビンカのマイノールを加え、

11 1年後の庭 和から


 フェンスの先のグランドカバーはリシマキアからヒメイワダレソウへ。
 樹木もクロモジ、カシワバアジサイ、斑入りヤツデ、ソヨゴと続きます。このあたりの和室からの眺めは和の雰囲気で…

12 1年後の庭 洋へ


 その先も和の飛び石とシャラ、ヤマモミジと和のテイストを保ちつつ、ウリン製のウッドデッキとタイル張りのテラス、明るい落葉樹の庭と変化していきます。

13 1年後の庭 生け垣


 生け垣にはトキワマンサク。
 その先にはトウネズミモチ ‘トリカラー’。

14 1年後の庭 菜園


 裏手の菜園に至ってはわたしのデザインの及ぶところではありませんが、実のところわたしの最も好きなエリアです。

 冬12月も暮れ近くになって、まずここまでの彩りを残す庭になってくれたこと、していただいたことに深く感謝いたしました。



よろしければ、ホームページもご覧下さい。
 http://www.yui-garden.com/


















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庭に公園を造る~羽生市K様邸 2011年夏~秋

テーマ:しごと
 行田市K様邸を終えてからしばらくして、こちらのお宅からお問い合わせがありました。
 先のお宅とは奥様同士が姉妹でいらっしゃいます。
 平たく言えば紹介して頂いた訳で、そしてそのご依頼とは…

 庭にブランコを作って欲しい。できれば滑り台も、鉄棒も砂場も…

 う~む。

 以前、キャンプ場で木製の遊具を作った事がありました。

11 ウォーターパーク長瀞


 大きな樹を中心にツリーハウスの要領で何段かのウッドデッキを作り、

12 ウォーターパーク長瀞


 そこに滑り台やブランコやターザン・ロープを組み合わせました。

10 ウォーターパーク長瀞


 この場合はまだキャンプ場であって、きちんとメンテナンスをしたり安全管理をしたりするスタッフが常駐しているわけで…

 それが個人のお宅の場合、万が一の場合の事を思うと、その責任には計り知れないものがあると思い、しばらく躊躇させられました。

 そんなときに知ったのが奈良県は吉野の山中で地元の木材を使って遊具を作っている「自然工房ウッドウォームズ」という会社でした。
 安全と防腐には万全の注意が払われ、知れば知るほど良心的で誠実な仕事ぶりが伝わってくる、そういった会社です。

 そこでわたしはそこの製品を購入して頂くことを条件に、そのお仕事を引き受けることにいたしました。

04 平面図


 遊具はお客さんに買いそろえて頂いて、わたしが作る。
 ウッドデッキは同じ防腐処理をした国産杉材を使ってわたしが施工し、芝ではないグランドカバーということでヒメイワダレソウを全面に植え、お子様が元気に飛び回れるような、公園のような庭にすることとしました。


 でも課題がもうひとつ。

 スギナで一杯になるんです…と。

01 8月着手前


 作業はスギナ対策からスタートすることになりました。

 とはいえ、スギナは簡単に根こそぎ出来るもので無いことを、わたしはこれまでの幾度と無い戦いで思い知らされており、近頃ではその特性にむしろ惹かれるものさえ感じるほどになっておりました。

02 8月着手前


 スギナは酸性土に好んで生育し、しかしその身体はアルカリ性。
 自ら枯れて土壌を中和させつつ、やがて土の性質を変えてその場から消えていく。
 研究不足で確かな話ではありませんが、ツクシはその段になってようやく生えて、新たに生育地を求めて胞子を散らす繁殖手段なのかもしれません。

 
03 8月着手前


 だとすれば気長につきあ合っていけば、いずれ居なくなる訳だし、その間はスギナ茶などの恩恵を蒙っても良いし、もし少しでも早く居なくなって貰いたいなら、スギナの力を借りる前に土壌改良を施せば良い訳です。

 という訳で、粒状で遅効性の苦土石灰の力を少しばかり借りて、庭づくりをスタートさせたのでした。


 完成は10月でした。

05 10月の完成


 9月の最初の HANA sakaso プロジェクトから戻ってすぐに着手したのですが、ちょうどその頃、関東地方を逸れた台風が紀伊半島を直撃し、事もあろうに和歌山から奈良にかけて多大な被害をもたらしたのでした。土砂崩れや川の増水などによって多くの人命を奪ったあの台風12号でした。自然工房ウッドウォームズさんも、その被害から逃れることは出来ませんでした。

 このお宅の奥さまに遊具の購入をお願いしておきながら、実はわたし自身も別件でウッドーウォームズさんにいくつかの遊具を発注していたのですが、その品物の発送が遅れるという連絡を、社長の大上さんから頂きました。
 幸い会社施設は直接の被害を受けなかったものの、周辺道路のほとんどが寸断され、家の電話ばかりか携帯電話も使えず、かろうじて残った峠の道伝いに三重まで出て、それから電話しているとのことでした。

 そんなことはどうでも良いから、まずは復旧を優先して欲しい…
 そう言うしか有りませんでした。
 わたし自身、宮城の被災地から戻ったばかりの頃のことです。内心では台風の向きが逸れて東日本を離れ、東北が襲われなかったことに安堵さえしていたのでした。まさかその同じ台風が、西日本であのような被害をもたらすとは…

06 10月の完成


 これはそのようにして届けられたブランコです。

07 10月の完成
 

 そして、鉄棒と砂場です。

 どのキットにも懇切丁寧な手作りの組立説明書が添えられていました。


 それから1年。

09 1年目の庭9月


 昨年の9月に再び訪れた庭です。

 ヒメイワダレソウが一面に繁茂して花を咲かせ、スギナも多分はまだがんばっているのでしょうが、ほとんどその存在が気にならないほどになっていました。
 ヒメイワダレソウは踏めば丈を小さくしますので、人がいつも歩く経路はきちんとそれらしい路になります。そして踏まないところは思い切り丈を伸ばして、心地よいクッションとなります。

08 1年目の庭9月


 この公園のような庭が、植物たちにとって心地よい場所であるのと同じくらい、いつまでも子どもたちにとっての心地よい空間となりますように!



 自然工房ウッドウォームズさんのホームページは以下の通りです。興味のある方はぜひご覧下さい。
 http://www.wood-warmth.com/


 ついでながら、当社のホームページもよろしくお願いいたします。
 http://www.yui-garden.com/








豊かな表情のアプローチを造る~行田市K様邸 2011年初夏

テーマ:しごと

 川越K様邸の仕事を終えて、次に取りかかったのがこちらでした。
 最初のご依頼があったのは震災の後でしたか…
 やはりクルマが使えず、電車と徒歩とで初回のお打ち合せに伺ったことを、今でもよく覚えています。

 前面の道路が狭く、それでも最大3台のクルマを無理なく停めるとしたら、おそらくガレージだけの施工で終わってしまいそうな条件でした。

 それでもちゃんと存在を主張できる門とアプローチを作りたい。
 植木や宿根草もそれなりに植えたい。
 そう考えて作ったプランがこれでした。

01 平面図


2台分の駐車スペースを確保して、短時間のお客さまには門柱前から縦列駐車をしていただく。そのため、門柱から前のレンガ下地はコンクリートとしました。

02 完成6月 ガレージ


 そうすることでギリギリまで門柱を前に出し、レンガをゆったりと使ったアプローチを玄関までつなぐことが出来ました。
 弧を描くアプローチは奥行きを感じさせ、いずれシマトネリコやホンコンエンシスが緑を濃くし、足元のホープレイズが大きく茂れば、奥までが簡単に見通せなくなり、さらに空間を拡げてくれることでしょう。

 玄関脇、コッツブリックの水栓はフォーカル・ポイントになります。

05 完成6月 水栓


 そして、宿根草の植え込みは豊かな彩りを、ニーレンベルギアの列植はリズムを、ローズマリーやラベンダーやタイムなどのハーブたちは香りを…

04 完成6月 アプローチ




 そして、これが8月に再び訪れた際の様子。

06 再訪8月 門柱


 緑は濃さを増し、

07 再訪8月 アプローチ


 宿根草たちもすくすくと成長し、

08 再訪8月 アプローチ


 僅かな距離の筈の、アプローチの歩みがとても長く、楽しく感じられました。

09 再訪8月 アプローチ


 お忙しいだろうに、ちゃんと手入れがされていて、

10 再訪8月 花壇


 ご家族の思いが庭を豊かに変えていく様子が、

11 再訪8月 グラス


 きちんとよく分かる、

12 再訪8月 マサキ列植


 素敵なガーデンへと変貌を遂げていました。

13 再訪8月 アオハダとディアボロ


 自分が庭を造るなどと、間違っても思ってはいけないなと自戒した次第です。

14 再訪8月 宿根草たち




 がんばって更新しています。
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プロフィール

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向井康治

ガーデン工房 結 -YUI-は、埼玉を起点に植物を中心に据えたガーデンデザインと設計・施工を仕事とする会社です。
ただし、面白い仕事であれば時には利益も距離感覚も忘れ去る脳天気ぶり。
だから、この仕事にはいつも様々な出会いがあります。人、植物、もの、本、言葉、音楽…。

結 -YUI- はネットワークです。
それは多彩な技術や知識を持った人々が持てる力を共有し合うこと。
人と自然界の美とが満を持して出会うこと。

わたしが文芸、農業、インド、土木、外構、アウトドアと巡ってきた先の到達点は、おそらくそれらみんなの要素を遺憾なく結集することのできる、小宇宙 「ガーデン」でした。

ガーデンデザイナーとして、ガーデナーとして、これまでの、そしてこれから先の「出会い」を余すことなくお伝え出来ればと思います。

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