ロックガーデンを造る~H市N様邸01 2011年夏~冬
テーマ:しごと
2013/01/07 06:02
ロックガーデンを造っていただきたいのですが…
と、そのご家族からご依頼があったのは一昨年の夏のことでした。
折しもHANA sakaso プロジェクト の準備に余念がなかった時期でもありましたので、9月の最初の活動から戻った翌日に打ち合せに伺わせていただく事にしました。
場所は閑静な住宅地。その入口とも言える場所にそのお宅は建設中でした。
建物が見ての通り北欧の山荘風であることから、それが岩山の上に建っているようなデザインをご希望とのでした。
だからごつごつした岩山のようなロックガーデンにしていただきたい。植物の選択はお任せする。
なんとありがたいご依頼でしょうか。
さらに、これはわたしもとても勉強させていただいた事なのですが、長方形の敷地の中にあえて建物を斜めに配置され、隣接するお宅や道路に対して影響を与えたり、または制限を受けたりすることを少なくするというアイデアで、そのことで極端に日当たりが良くない部屋を無くし、風の抜けも良くするというものでした。敷地をできる限り有効に使って少しでも広い庭を確保するという従来のスタンスとは全く逆の発想ながら、しかしそのことで結果的に、東西南北すべての空間を有効に活用することが出来るわけです。
そして以前のお住まいで育てられていたソテツを始めとした樹木の移植や、ガレージの位置、進入口の設置位置などいくつかのご要望は伺いましたが、大方はこちらに任せて頂けるということになりました。
それにしても、ロックガーデンの施工例など一切公開していなかったわたしに、よくもご依頼くださったもの…
もしかすると英国のRHSガーデン・ウィズリーに関するわたしの記事をご覧になったのかも知れません。
わたしにとってもそれは、これまでに見てきたなかでもっとも素敵なロックガーデンでした。
西洋のロックガーデンと和の石庭…その石組みの違いは何なのでしょう。
以下はまったくわたしの粗削りな私見ですので間違っても参考になれないで頂きたいのですが、
石の個性、その表情や形を読み取って、それを最大限引き出せるように組むのが和の手法。
これに対して周囲の植物たちの個性を活かすため、その器として配置するが西洋のロックガーデンの手法なのではないか、と。
そうであるならば仮に同じ石を使ったとしても、和と洋では見せる面も組み方もまったく違ってくると言う事になりそうです。
わたしはもともと積み石の技法を基礎から学んだ経験はありませんので、今回はあくまで石を並べてその間にゆったりとしたスペースを作り、その場所に適した植物たちを植え込んでいく、という工法で進めていくこととしました。
では、どのような石を使うか…
あちこち訪ねて見て歩きようやく出逢ったのは、表情が豊かで野趣あふれ、それでいて比較的安価な白根石でした。
群馬県で産出される安山岩の一種で、鳥海石などの仲間だそうです。
建物を斜めに配置することで生まれた東西南北の4つの庭のすべてで、それぞれ違ったコンセプトの元にこの白根石を使い分け、まったく違った4つのガーデンを作る。
それがわたしの基本方針となりました。
工期は約6ヶ月。
10月下旬の建物お引き渡し後に着手して、年内に掘削や土留め擁壁などの土木工事と石組み、そして寒さが本格化する前に第一期植栽工事を行います。石組みを終える前に植え込まなければならないような大きめの針葉樹や、旧宅から掘り出して借り置きしておいた樹たちを先行して植えました。
ここでありがたかったのは、隣接した空き地を借りられたことでした。
石の一つ一つの表情をじっくり見ながら、ひとつ置いては次のひとつを選んでいくという作業ですので、その場所を現地に確保できたからこそ、作業を順調に進めることが出来たのだと言えます。
その作業の最中、奇妙なことが続きました。
おそらくこれとこれとこの石だろう、とりあえず持って行ってみようと思って、それらをクレーン付き4トントラックに積み込んで運び出すと、それらが思っていたところにぴたりとはまる。いえ、その石以外に考えられないだろう、というくらい石と石がつながっていく…
それはさながらわたしの考えやアイデアを越えて、石の方から、「今度は自分だ」、「おい、その次は自分を持って行け」と名乗り出てくれているかのよう。
ありがたいと思いました。
1月にはさらに落葉樹の植栽を施して石組みの追加、その後アプローチの石張りやウッドデッキ、ガレージなどの工事を4月までに終えて、これをいったんの完了としました。ここまでが6ヶ月。
ただ、その後も手を加えたりメンテナンスを重ねながら、春、初夏、梅雨、初秋、晩秋と何度かの追加植栽を施していくという、全体としてはそのようなプランを立てました。
それにしてもこの年の冬は厳しいものでした。
外仕事には慣れ、冬の作業を何十年と経験してきた身体も、そろそろガタが出始めたのかと不安な気持ちになるくらいに…
その間、幾度となく現場を空けさせていただきもしました。
HANA sakaso プロジェクトの活動を継続できたのも、こちらのご家族の深いご理解と温かいお言葉があってのことです。
こちらは慌てなくて良いですから、そちらのお仕事を優先して下さい、
もっとゆっくり身体を休めてから戻って下されば良かったのに
…と。
そのお気持ちに後押しされるようにして、被災地には何往復かさせていただきました。
そのように冬を越え、少しずつロックガーデンは完成していったのでした。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
と、そのご家族からご依頼があったのは一昨年の夏のことでした。
折しもHANA sakaso プロジェクト の準備に余念がなかった時期でもありましたので、9月の最初の活動から戻った翌日に打ち合せに伺わせていただく事にしました。
場所は閑静な住宅地。その入口とも言える場所にそのお宅は建設中でした。
建物が見ての通り北欧の山荘風であることから、それが岩山の上に建っているようなデザインをご希望とのでした。
だからごつごつした岩山のようなロックガーデンにしていただきたい。植物の選択はお任せする。
なんとありがたいご依頼でしょうか。
さらに、これはわたしもとても勉強させていただいた事なのですが、長方形の敷地の中にあえて建物を斜めに配置され、隣接するお宅や道路に対して影響を与えたり、または制限を受けたりすることを少なくするというアイデアで、そのことで極端に日当たりが良くない部屋を無くし、風の抜けも良くするというものでした。敷地をできる限り有効に使って少しでも広い庭を確保するという従来のスタンスとは全く逆の発想ながら、しかしそのことで結果的に、東西南北すべての空間を有効に活用することが出来るわけです。
そして以前のお住まいで育てられていたソテツを始めとした樹木の移植や、ガレージの位置、進入口の設置位置などいくつかのご要望は伺いましたが、大方はこちらに任せて頂けるということになりました。
それにしても、ロックガーデンの施工例など一切公開していなかったわたしに、よくもご依頼くださったもの…
もしかすると英国のRHSガーデン・ウィズリーに関するわたしの記事をご覧になったのかも知れません。
わたしにとってもそれは、これまでに見てきたなかでもっとも素敵なロックガーデンでした。
西洋のロックガーデンと和の石庭…その石組みの違いは何なのでしょう。
以下はまったくわたしの粗削りな私見ですので間違っても参考になれないで頂きたいのですが、
石の個性、その表情や形を読み取って、それを最大限引き出せるように組むのが和の手法。
これに対して周囲の植物たちの個性を活かすため、その器として配置するが西洋のロックガーデンの手法なのではないか、と。
そうであるならば仮に同じ石を使ったとしても、和と洋では見せる面も組み方もまったく違ってくると言う事になりそうです。
わたしはもともと積み石の技法を基礎から学んだ経験はありませんので、今回はあくまで石を並べてその間にゆったりとしたスペースを作り、その場所に適した植物たちを植え込んでいく、という工法で進めていくこととしました。
では、どのような石を使うか…
あちこち訪ねて見て歩きようやく出逢ったのは、表情が豊かで野趣あふれ、それでいて比較的安価な白根石でした。
群馬県で産出される安山岩の一種で、鳥海石などの仲間だそうです。
建物を斜めに配置することで生まれた東西南北の4つの庭のすべてで、それぞれ違ったコンセプトの元にこの白根石を使い分け、まったく違った4つのガーデンを作る。
それがわたしの基本方針となりました。
工期は約6ヶ月。
10月下旬の建物お引き渡し後に着手して、年内に掘削や土留め擁壁などの土木工事と石組み、そして寒さが本格化する前に第一期植栽工事を行います。石組みを終える前に植え込まなければならないような大きめの針葉樹や、旧宅から掘り出して借り置きしておいた樹たちを先行して植えました。
ここでありがたかったのは、隣接した空き地を借りられたことでした。
石の一つ一つの表情をじっくり見ながら、ひとつ置いては次のひとつを選んでいくという作業ですので、その場所を現地に確保できたからこそ、作業を順調に進めることが出来たのだと言えます。
その作業の最中、奇妙なことが続きました。
おそらくこれとこれとこの石だろう、とりあえず持って行ってみようと思って、それらをクレーン付き4トントラックに積み込んで運び出すと、それらが思っていたところにぴたりとはまる。いえ、その石以外に考えられないだろう、というくらい石と石がつながっていく…
それはさながらわたしの考えやアイデアを越えて、石の方から、「今度は自分だ」、「おい、その次は自分を持って行け」と名乗り出てくれているかのよう。
ありがたいと思いました。
1月にはさらに落葉樹の植栽を施して石組みの追加、その後アプローチの石張りやウッドデッキ、ガレージなどの工事を4月までに終えて、これをいったんの完了としました。ここまでが6ヶ月。
ただ、その後も手を加えたりメンテナンスを重ねながら、春、初夏、梅雨、初秋、晩秋と何度かの追加植栽を施していくという、全体としてはそのようなプランを立てました。
それにしてもこの年の冬は厳しいものでした。
外仕事には慣れ、冬の作業を何十年と経験してきた身体も、そろそろガタが出始めたのかと不安な気持ちになるくらいに…
その間、幾度となく現場を空けさせていただきもしました。
HANA sakaso プロジェクトの活動を継続できたのも、こちらのご家族の深いご理解と温かいお言葉があってのことです。
こちらは慌てなくて良いですから、そちらのお仕事を優先して下さい、
もっとゆっくり身体を休めてから戻って下されば良かったのに
…と。
そのお気持ちに後押しされるようにして、被災地には何往復かさせていただきました。
そのように冬を越え、少しずつロックガーデンは完成していったのでした。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
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