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ヒドコート・マナー・ガーデンⅠ~イングリッシュ・ガーデンの旅 09

テーマ:イングリッシュガーデン
さて、うかうかしているうちに一昨年の旅の報告になってしまいました。

うかうかの原因は2008年6月23日、イギリスはコッツウォルズの名園ヒドコート・マナー・ガーデンの混雑であることは、以前のプログでも述べた気がします。

あまりの混雑に順路通りの見学が出来ず、撮った写真を時系列的に追っても何が何だか分からなくなってしまいました。

ヒドコート・マナー エントランス

ですが、いつまでうかうかしていても記憶を取り戻せるほどの若さも、この先の存分な時間も無いわたしですから、ここは開き直ることにしました。

ヒドコート・マナーはわたしが今回の旅行でもっとも楽しみにしていたガーデンです。

そのガーデンの紹介に、順路は関係有りませんからね。


ヒドコート・ブルーと呼ばれる鮮やかな青に彩色されたベンチが素敵なフォーカル・ポイントとなって、われわれを迎えてくれました。

ヒドコートブルーのベンチ


ヒドコート・マナー・ガーデンの名は英国庭園史の本を読めば必ず、ヴィクトリア朝時代の庭園が前世紀の風景式庭園を引きずり、壮大な貴族の館前に整形式花壇を現出させながらも「ガードネスク」として結実した挙げ句、なにやら混沌たる様相を呈したあとを受けるように、一服の清涼剤のようにして爽やかに登場します。

気取りのない親しみやすい庭。
整形式も風景式もない、ただ限られた空間を最大限に活かした素朴で奔放な庭。
世界中でかき集められた珍しい植物ではなく、ごくごく身近で親しい草花をのびのびと育てた庭。
そして、女性が初めてそのデザインと製作に関与できるようになった庭。

のちにコテージ・ガーデンと呼ばれるそうした庭の、さきがけとして紹介されることが多いのが、このヒドコート・マナーです。

スティルト・ガーデンのコッツウォルズ・ストーン

これを作り上げたのは、ロウレンス・ジョンストン。
イギリス人ではなく、これがアメリカ人でした。
たまに日本庭園の歴史や作庭法にやけに詳しい外国人に出会いますが、他国の人間の方がその国の文化の本質をより深く理解できる場合があるのかもしれません。
少なくとも、ジョンストンはそうであったようです。
イギリス人よりもよりイギリス人らしく…そう希求した彼に、イタリア庭園を模した整形式の庭園など、きっと愚かしく思えたに違い有りません。

ピラー・ガーデン

何と言ってもこのガーデンの特徴は、庭園全体をいくつかの部屋に分割し、全体としてのまとまりを出してその仕切にも直線を多用しつつ、各部屋の中では植物を自由自在に植え込むという奔放な演出にあるでしょう。
上のピラー・ガーデンも針葉樹をきっちりと刈り込みながら、その足元では宿根草がのびのびと生い茂っています。
そうかと思えば、突然のように出現する針葉樹の巨木…

レバノン・シーダー

ひとつの部屋を出ると次の部屋はまったく趣向、というようにホワイト・ガーデンがあり、レッド・ボーダーがあり、ドライ・ガーデンがありとワクワクさせてくれます。

プール・ガーデン

プール・ガーデンの水を使った演出も、隣接する部屋からのその見せ方にもなかなかの洒脱さを感じさせられました。

こうした造園手法は、わたしがイギリスで最初に見たシシング・ハースト・キャッスルのヴィタ・サックヴィルにも影響を与えたと言われていますが、シシング・ハーストが女性らしい繊細さとまとまりのある構成力を持っていたのに対し、このヒドコート・マナーにはより大胆、より奔放という印象を強くさせられました。

前者が館を中心にして同心円的に外側に向かって緻密な庭から素朴な庭へと拡がっていくのに対し、こちらは突然のように直線的な空間構成を見せたりします。

たとえば、このロング・ウォーク。

ロング・ウォーク

ロング・ウォークの橋

途中の橋を越えて全長200メートルの真っ直ぐに伸びた直線は、わたしたちを誘うだけ誘っておいて、どん詰まりのゲートの向こうにあるのはただ広大な草原…

ゲートの外

汗だくになってようやく辿り着いたわたしは、それでもロング・ウォークの東に並行するウィルダネスの林に分け入り木陰で束の間の涼を取ったりもしました。

ウィルダネス

そして西側のロック・バンクには乾いた通路の左右にドライ・ガーデンが展開しています。

ロック・バンク

園路

 
現在はシシング・ハースト・キャッスルと同様、ナショナル・トラストによって管理され、この日も多くのガーデナーたちが初夏の宿根草の手入れや植え替えに余念がありませんでした。

ガーデナーと

荷車

というわけで、はい、次回はこの庭園で出会った植物たちを紹介できればと思います。



館の窓辺




ホームページもぜひご覧下さい!
 http://www.yui-garden.com/













庭ブロ+(プラス)はこちら

ハイド・パーク ローズ・ガーデン~イングリッシュ・ガーデンの旅 08

テーマ:イングリッシュガーデン
THE DIANA PRINCESS OF WALES MEMORIAL WALK 

ケンジントン・ガーデンズからハイド・パークに。

そのハイド・パークの南端を西から東に横断した終点に、それは有りました。

ハイド・パーク・ローズ・ガーデン00

時刻はそろそろ午後の9時になろうかというところ。

朝の散歩から昼間のコッツウォルズと、15時間ほどに及ぶガーデン&パーク見学の一日も、そろそろ終わりですが、名残も尽きず、体力もまだ残っているから驚きです。
…実際、この夜はこの後、パブにビールを飲みに出掛けたのですが。

さて、メモリアル・ウォークを西から東に辿ります。

ハイド・パーク・ローズ・ガーデン01

右手にはバラのアーチ。
シロのクライマー・ローズにクレマチスの青が映えます。

ハイド・パーク・ローズ・ガーデン02

左手のボーダーでは、比較的淡い初夏の宿根草の花むらの中、アカとピンクのバラが鮮やかでした。

ハイド・パーク・ローズ・ガーデン03

ハイド・パーク・ローズ・ガーデン04

そこここに、花を楽しむ人の姿が…

ハイド・パーク・ローズ・ガーデン05

そして、終点のバラのサークルに至ります。

ハイド・パーク・ローズ・ガーデン06

ハイド・パーク・ローズ・ガーデン07

高く伸ばした花茎に紫の小花の愛らしい、ラムズ・イヤーのシルバー葉が幻想的でさえあります。

ハイド・パーク・ローズ・ガーデン08

ハイド・パーク・ローズ・ガーデン09

ベンチに一人たたずむお年寄りの姿さえフォーカル・ポイントになる、暮れ間際のハイド・パークを後にしました。

さあて、ビールだ!





















ケンジントン・ガーデンズ ザ・フラワー・ウォーク~イングリッシュ・ガーデンの旅 07

テーマ:イングリッシュガーデン
現在、ヒドコート・マナー・ガーデンの写真の整理に行き詰まっています。
園内の地図を片手に写真を見ても訳が分からないクエッションマーク

そうでした。
ヒドコートはこれまでに廻ったどこよりも混み合っていて、人の少ないところ、少ないところと辿るうちに、順路も何も無視して歩き回り写真を撮りまくったのでした。

という訳で、ヒドコートはしばし時間を頂くとして、今回はイギリス4日目の当日の夜、なんとコッツウォルズへの小旅行から戻ってから夜になってスタートしたツアーの報告です。写真のデータを見ると18時30分から21時30分まで!
ケンジントン・ガーデンズからハイド・パークを東西に横断するツアーでした。
夕食は公園のベンチでサンドイッチ音符
思えば、初日のチャイニーズ以外、わたしはどうもまともなレストランでの食事を経験しておりません。それだけ、食事の時間さえ惜しい濃厚な時間を過ごしたと言えましょう。

ケンジントン・ガーデンズ・フラワー・ウォーク01

スタート地点のダイアナ妃の住んでいたケンジントン宮殿でした。こちらのパレス・ガーデンも見学できるのですが、この日はあいにく、貸切? とのこと…。ウエディングだったみたいです。

ケンジントン・ガーデンズ・フラワー・ウォーク02

トリトマの鮮やかなオレンジが印象的です。

ケンジントン・ガーデンズ・フラワー・ウォーク03

ローズ・ガーデンは後ほどハイド・パークで見学しました。こちらはささやかな植え込みだけです。

ケンジントン・ガーデンズ・フラワー・ウォーク04

ケンジントン・ガーデンズ・フラワー・ウォーク05

このような園路が真っ直ぐに続いていて、左右にボーダーや装飾花壇を楽しみながら歩けるのが、このフラワー・ウォークです。

ケンジントン・ガーデンズ・フラワー・ウォーク06

今回の旅行中、リージェンツみたいに一日掛けて見学した公園もありましたが、主に22時近くまで明るい夜や早朝の散歩でわたしが訪れた公園が全部で6ヶ所。
どれも特色のある素敵な場所でしたし、とにもかくにも広大でした。
それがロンドンのど真ん中にあります。

ケンジントン・ガーデンズ・フラワー・ウォーク07

特にケンジントン・ガーデンズ~ハイド・パーク~グリーン・パーク~バッキンガム・パレス・ガーデン~セント・ジェームズ・パークという、ケンジントン宮殿からバッキンガム宮殿をはさんでウェスト・ミンスター寺院・ビッグ・ベンを結ぶこの東西のラインは、公園だけを辿って4キロあまりの道のりです。

ケンジントン・ガーデンズ・フラワー・ウォーク08

ケンジントン・ガーデンズ・フラワー・ウォーク09

正直に申します。
こうしてロンドン市内のホテルだけを拠点にするのでなく、各地に宿をとって中央部のバーンズリー・ハウスやブレナム・パレス、南西部のヘリガンやヘスタークームなど、数多のガーデンも見てみたい…
旅行の準備段階ではそんなことも考えました。
でも、それは大きな間違いでした。
ロンドン市内にでんと腰を据えたからこそ見ることの出来るガーデンや、美しい町並みの植栽がこれほど有りましたし、それだけでも盛りだくさんで朝の7時から夜の10時までみっちり見学してまだ時間が足らないほどでしたから…
それだけでも、今回のプランが実に初級編としてはベストの内容だったことが、とてもよく理解できたのでした。

ケンジントン・ガーデンズ・フラワー・ウォーク10

それにしても、このフラワー・ウォークの素晴らしいこと!

とても大切に手入れのされていることが分かるガーデンが、これでもかこれでもかと続きます。
で、これは観光施設ではありません。
市民の憩いの場として無料で開放された、日常的に散歩したり、デートしたり、ベンチでくつろいだりする場所。

ケンジントン・ガーデンズ・フラワー・ウォーク12

この場所を暑い日中ではなくこの時間に訪れるという選択は、やはりロンドンに長く住んでおられた徳田千夏先生ならではの演出だと思いました。

ケンジントン・ガーデンズ・フラワー・ウォーク11

わたしの好きなリシマキア・ヌンムラリアや、

ケンジントン・ガーデンズ・フラワー・ウォーク13

ヒペリカムたちにも出会うことができました。


そして、終点のアルバート記念碑と、その向こうのロイヤル・アルバート・ホールビックリマーク

ケンジントン・ガーデンズ・フラワー・ウォーク14


園路はこの後サーペンタイン池を渡ってハイド・パークへと続きます。
ハイド・パークのダイアナ妃を記念して作られたローズ・ガーデンもみごとなものでしたが、それはまた、後ほど。






















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向井康治

ガーデン工房 結 -YUI-は、埼玉を起点に植物を中心に据えたガーデンデザインと設計・施工を仕事とする会社です。
ただし、面白い仕事であれば時には利益も距離感覚も忘れ去る脳天気ぶり。
だから、この仕事にはいつも様々な出会いがあります。人、植物、もの、本、言葉、音楽…。

結 -YUI- はネットワークです。
それは多彩な技術や知識を持った人々が持てる力を共有し合うこと。
人と自然界の美とが満を持して出会うこと。

わたしが文芸、農業、インド、土木、外構、アウトドアと巡ってきた先の到達点は、おそらくそれらみんなの要素を遺憾なく結集することのできる、小宇宙 「ガーデン」でした。

ガーデンデザイナーとして、ガーデナーとして、これまでの、そしてこれから先の「出会い」を余すことなくお伝え出来ればと思います。

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