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田んぼの生き物調査 東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト その3 T2 勉強会 6/16

テーマ:東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト
 
 時間が足早に駆け去っていく音が耳に聞こえるようです。
 バタバタバタバタ…走る

 おそらくはその速度がそれほど速くなっている訳ではなく、
 ついて行くわたしの歩行速度の方が遅くなっているだけなのでしょうが…

 先日、この回のさらにその次、石巻での調査が終わりました。
 現在はさらにその次の調査の準備中。
 このままいつまでたっても最新の報告が出来ないという…まるで、ブログの体をなさないものになってしまいそうで、それが怖いです。

 さて。

 前回に引き続く6月16日のこと。
 多賀城のホテルに戻って入浴と夕食の後、会場を研修室に移して勉強会が開催されました。
 大学スタッフのみなさんは本当にお疲れのところ、風呂に入る間も惜しんでデータをまとめられていたりしていて…本当に頭が下がる思いで参加させてもらいました。
 (その割にしっかりビールとか頂いてしまっていましたが…あ、ここだけのハナシ)

 ここでの要点は3つ。

 今回の調査の意義とそれが市民参加型で行われることの意味。
 田んぼの生き物たちの生きざま、暮らしぶりの実態。
 今回の調査結果とそこから見えてきたもの。

 
01 占部教授と向井助教


 占部教授による最初のレクチャーはとても興味深く、内容の深いものでした。

 
03 海と田んぼからのグリーン復興宣言


 「海と田んぼからのグリーン復興宣言」

 (以下、抜粋です)

 今回の被災地の多くはこうした生態系の恵みを最大限に利用する生活をしてきた地域です。

 今、できるだけ早い復興は共通した願いですが、環境への影響評価を行うことなく、早急に山や森を削り、川や海、そして田んぼの生物多様性や生態系への配慮のない造成は、生態系サービスを低下させて、被災地以外にも多くの二次的な災害を生み出しかねません。

 …この地の農林水産業が享受すべき将来の生態系からの恵みを見据え、…「グリーン復興」を行うことで、…より着実に、力強く復興すると信じます。

 そして、…ひとりひとりの市民として、その計画から積極的に関わり、一緒に支えていくことを宣言いたします。


 この宣言を受けてこれまでに行われてきた活動。

 津波被害からの田んぼの復元。
 瓦礫の撤去と除塩。瓦礫撤去は田んぼの層構造を傷めないように人力で行ったそうです。

 産業復興支援。
「東北サイコウ銀行プロジェクト」による「福幸米」の販売により、農業再開資金を捻出したそうです。

 そして、生態系モニタリング。
 今回の活動では、それが田んぼと干潟、松島湾島嶼において展開されています。

04 なぜ生物モニタリングが必要か


 生態系を調査することで、津波被害の実態を把握し、被害から免れた自然を生態系再生の種(シーズ)としてその活用を図り、地域再生の突破口としたいという熱い思いがここでは語られていました。

05 すべての生態系をモニタリングすることは不可能1


 でも、それは長期にわたって広範な調査が必要とされるに関わらず、人的資源も経済的資源も不足しているという現実があります。たしかに被災地全体で取り組まなければならない課題はあまりにも多く、こうした個々の活動に対してそれがどんなに意義深いと分かっていても、なかなか振り分けるのは難しいのでしょう。

 だから、市民参加型。

 それにはまた別の意味もあります。

 どれだけ研究者ががんばってその成果をまとめても、それが公のものになるまでにはかなりの年月を要します。かなりの年月を要しても、最後まで公開されない成果もあります。
 だからわれわれ市民が、その調査に最初から関わって、しかもそのつどその研究成果に触れることで、それこそ口コミ的に情報が伝達されていく…
 と同時にそこで見つけ出した一定の知見にその場で評価を与え(学会などという面倒くさいものの判断を待つことなく)、共通の認識としての合意をその場で生み出していける。
 そうした意義があるのだそうです。

00 レクチャー風景


 では、はたして全くの素人の調査がどれだけの成果を生み出せるというのか…
 これは当初からわたしが抱いていた疑問でした。
 研究者の皆さんが一般参加者の指導と世話に追われ、慣れない一般市民の面倒を見ている間に、研究者だけで調査を進めた方がはるかに信憑性のあるデータが集まるのではないか?
 グリーンツーリズムの意義はわかるし、実際参加してとても楽しいけれど、それはやはり所詮参加者の満足を優先した、研究者にとっては二義的な活動なのではないか?
 という風に。

 その疑問にも占部教授は力強くその意義を語ってくださいました。

 この12名が1日6枚、2日で12枚の田んぼに散ってそれぞれ違う技能と条件でサンプリングを行ったデータは、研究者が数日を掛けて行う調査に十分匹敵するだけの有効性がある。
 また、そのデータを使いこなすことこそが研究者の使命なのだ、と。
 そして、市民参加型調査の「成果の迅速な普及」と「合意形成の基盤作り」は、研究者だけではできないのだ、と。

 水生生物の中には3年かけて成熟していくものがあり、その過程を3世代に渡って追わないと十分な研究成果を生み出せない。だからこの調査には10年の時間が必要、ともおっしゃっていました。

 …おそらくその時間軸は、これから復興という大事業に取り組んでいくこの地域の人々の持つ時間軸に、等しいのだと思います。


 占部教授のレクチャーはさらに進み、環境の安定性と撹乱(今回の津波がそれです)、種の絶滅の仕組み、捕食と被食防衛、攻撃防衛など、生き物の生態に関するとても面白いお話を伺うことができました。

 そして、

09 新「三陸国立公園(仮)」を軸にした地域の復興


 新「三陸復興国立公園」構想と、そこからの地域復興に話は及びます。
 今回の田んぼのモニタリングもその一環として明確に位置付けられているということでした。

08 水田モニタリング


 今回の調査区域はこのとおり。初回が東松島の鳴瀬、小野、矢本地区。今回の2回目が仙台市近辺の若林区今泉地区と七ヶ浜町吉田浜地区。そして3回目が(先日の6/30、7/1に行ってきたのですが)石巻の北上川左岸地区です。田んぼが夏に一度水を抜く「中干し」期間を開けて、8月に再度それぞれの田んぼの調査を行う予定だそうです。

 そして田んぼの生き物についてはそのエキスパートである向井助教がたくさんの面白いお話を聞かせてくれたのですが…

 できればその話、向井助教の人柄と情熱を感じながら、直に聞いてもらいたいと思います。
 大阪の水田で7000を超える水生生物にマーキングして放し、3年間かけてその追跡調査をした話などはっきり言って…圧巻です。

 
11 田んぼの特徴


 田んぼとは…
 「あぜで区切られた、水を溜めることのできる農地」であり、
 
 人の手で強度に管理された一時的な「湿地」なのだそうです。

10 田んぼの水暦


 この人工的に1年サイクルの環境変化が繰り返され、代掻きや潅水といった攪拌が繰り返される水田という湿地を選んで、そこで暮らす生き物たち。
 向井助教だけでなく、われわれもその生態には思わずのめりこみたくなりそうです。…わたしだけかな?


 そして、最後にその日の調査結果をまとめた占部研究室の鈴木さんからの報告がありました。

16 調査結果報告担当の鈴木さん


 この前の報告でも書いたとおり、午前中の対照水田(被災しなかったけれど比較のために調査する田んぼ)よりも被災した田んぼのほうが、生き物の種類が多かったという結果です。

17 捕獲した種数


 前回の東松島では被災田の方の種数が少なかったですから、2回目にして逆の結果が出たことになる訳で…
 まだまだデータを集めなければ分からないと言え、いろいろ考えさせられて楽しいですね。
 対照水田のドジョウ、被災水田のタマカイエビ…
 被災水田に成虫が飛翔して移動できる生き物が多いのは分かるのですが、タマカイエビは違います。
 聞けばカイエビやタマカイエビの仲間は耐久卵という、乾燥に強く環境が改善されるまで長期間にわたって休眠できる卵によって孵化するのだということでした。

 だから、津波と、そのあとの乾燥に耐えた後、今一斉に孵化したのでしょうか?
 そう言えば先日の石巻の水田ではうじゃうじゃとカイエビが居て、しきりに交尾を繰り返していました。
 
 …何かね、生命の持つダイナミズムみたいなものを感じさせられた瞬間でした。


 (さらに続きます! 2日目の七ヶ浜の調査は…とても楽しかったです)

 

 

















庭ブロ+(プラス)はこちら

田んぼの生き物調査 東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト その2 T2 仙台今泉地区 6/16

テーマ:東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト
 
 東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト 田んぼの生き物調査の2回目は、去る6月16、17日に仙台市今泉地区と七ヶ浜町の吉田浜地区にて行われました。
 前回は往復にクルマを使ってその後の疲れがなかなか抜けなかった点をしっかり反省し、今回は奮発して新幹線で仙台に向かいました。(なんて楽な! しかも早い!)

 16日は雨の予報。
 こちら埼玉を出た早朝こそはまだ降っていませんでしたが、長靴姿で大宮駅に降り立った頃にはすでに雨で、途中の宇都宮、郡山、福島も車窓の外は雨の景色でした。

 ただ仙台から仙石線を乗り継いだ集合場所の長町駅は、まだ雨にはなっていませんでした。

01 長町駅


 イワツバメの飛び交う駅前ロータリーにはすでに東北大学の皆さんがお待ちかねで、三々五々集まってくる一般調査員12名を温かく迎えてくださいました。初回参加者はわたしだけでしたが、それ以前の試行調査に参加された方、前の週の干潟の生き物調査に参加された方など旧知のメンバーもかなり居たようです。
 東北大学のスタッフの皆さんはこの2週間に一度行われる田んぼの調査だけでなく、干潟の調査も行われている訳で、交替で対応しているとは言え、事前の準備や調査後のデータ解析まで含めるとほとんど無休状態の様子。…本当にお疲れ様です。
 
 そんな中でも一般参加型の調査は手とり足とりの懇切丁寧なレクチャーから始まって、さまざまな準備や片付けなど何かと一般調査員の面倒を見てもらわなければならず、それなりの気遣いもして頂いており、はたしてそれだけの意味があるのかという疑問が残ります。つまり、何も一般参加型にせずとも専門家のみなさんが調査に専念した方が、よほど無駄のない効率的な調査が出来るのではという…それが前回の活動を終えたときの正直な感想でした。勿論レクチャーの中でそれなりの説明をいただいたのですが、わずかに残ったわたしなりの疑問があり、課題でもありました。
 今回はそのあたりもはっきり押さえておきたいというのが、わたしなりのテーマでした。

 さて、初日は仙台市若林地区にある今泉という場所で調査を行いました。

 まずは同地区の被災しなかった田んぼの調査です。

03 仙台今泉地区の非被災田
 

 このあたりは仙台東有料道路の土手がそのまま堤防の役割を果たし、津波の大きな被害から辛うじて免れた場所だということでした。そんな中でも潮に浸かった田んぼとその直近の浸からなかった田んぼとがあって、そこでそれぞれ生物相を調べ、比較しようという趣旨です。

02 調査前レクチャー


 前回同様、調査方法に関する丁寧な説明を受けて、12名が4名ずつの3チームに分かれ、近接する3枚の田んぼに散っていきます。

04 調査開始


 この田んぼの、畦の美しいこと!

05 美しい畔の植生 1


 これほどたくさんの種類の植物に覆われた畔道を、わたしは初めて見た気がします。

 それだけでも生物相の豊かさが知れようというもの。

05 美しい畔の植生 2


 前回の調査でも4か所の田んぼを見てきましたが、それぞれに特徴があり、住む生き物が違い、土の色が違い、畔の植生にも水の質にも、もちろん周囲の景色にも大きな違いがあって、とても興味深いものでした。

 最初の泥の採取は一定量の泥の中から主にユスリカの幼虫とイトミミズがどの程度発見できるかという絶対量によって、その田んぼの回復の度合いを評価しようというものです。各自が田んぼ全体に散ってパイプを突き刺し、10センチの深さで泥を集めてきて、後ほどその中から生き物を探します。

06 泥のサンプル


 それはいったん集めておいて…

 次に網を使って5分間、自由に水中や土中の生き物を集めます。もちろん、イネや畦を傷めないように注意を払いながら!

07 網によるサンプリング


 2回目の参加ともなるとこの頃には畦から水の中を覗いて、あ、この田んぼはタマカイエビが多いぞ、とかチビゲンゴロウがいるぞとかわかるようになっていますから、ある程度目星をつけて網を差し込むことができます。山際の田んぼなら山影とか、あるいは水口の近くとか有機物の浮遊しているところとか、いろいろな場所から集めてくる工夫も出来るようになりますし、前回泥を集めすぎて時間内に調査を終えられなかったりした反省を生かして、泥や落ち葉など有機物はそこそこにしておいて、出来るだけ水中から多くを集めるようにしたりと、そんなことも考えるようになります。まあ、経験でモノを言えるほどにはまだまだなれませんが…

08 調査キット2


 これが調査キットです。東北大学生命科学研究科の、というより向井康夫助教のオリジナルになります。
 奥の2種類のピンセットはそこそこ大きな生き物を掴むためのもの。細かいミジンコなどの生き物はスポイトで。
 動きの速いガムシやミズムシやゲンゴロウの仲間は小網で救います。この絶妙なサイズの小網も向井助教の手作りというから驚きです。耳かきのようなのは薬さじ。やや動きの遅い小さな生き物をすくいあげます。その下の透明ケースは生き物を入れて前後左右上下から観察するためのキット。その他にもルーペや生き物を分類するトレイなどが揃っていて、それだけでわくわくさせられる上に、生き物の種を特定する(同定といいます)ため、ポケット図鑑と手作りの分類の手引書と生き物のリストがもれなく各自に配られます。

08 分類の手引き1


08 分類の手引き2


 驚くべきことにこの手引書、前回よりもかなりページが増えている上に小型化して持ち運びが便利になっていました。
「バージョンアップですね!」
 向井助教はにんまりとされていました。
 とてもわかりやすい構成でカラー刷りで、しかも写真と手書きイラスト満載で、まさに研究者必携…いや研究者の皆さんはとっくに頭の中に入れている訳だから、一般調査員必携というところでしょうね。

08 生き物リスト


 そして、このリストをチェックしながら生き物の種を特定していきます。

 この田んぼで生態系の豊かさの指標となるユスリカやドジョウが多く発見されました。あとアメンボ。

 これがユスリカの幼虫。有機物食系というやつ。

09 ユスリカの幼虫


 イトミミズ! 
 お食事中の方には申し訳ありません。
 でも、彼らが生態系の根底を支えている訳で…

10 イトミミズ


 結局この田んぼからみんなで見つけ出した生き物の種数が15。
 わたしが5種。
 実はこの数字、あまり多くはないのですが…
 

 やはり生き物の数が少ないのは周囲に森や林や池など自然環境の少ない平野部の田んぼだったせいなのでしょうか。
 実はこの数日前わたしは夢を見ておりまして(なんとも幸せなヤツではありませんか)、今回の調査で必死になってサンプリングしている自分がいて、それが探せど探せど生き物を発見できないというとても悲しいものでした。今回の調査が仙台市の海岸部ということだったので、「もしかしたら少ないかもしれない」とか、生意気にも予測を立てていたせいだと思うのですが、まさに的中した思いでした。
 
「この田んぼの土の色をよく覚えておいてくださいね。午後に調べる田んぼの土と比べてみてもらいますので」
 と、向井助教。

 午前の調査、終了です。

11 午後の調査開始


 小雨の降る中昼食を終えて、午後からは同じ今泉地区内の今度は潮を被った田んぼの調査です。

 テント設営、田んぼに出てのサンプリングもたいした雨にならず、雨脚が強まったのはテントの下の作業に入ってからでしたから、暑くならなかっただけかえってマシだったかもしれません。むしろ肌寒いほど。

 こちらの田んぼの土の色…

12 仙台若林地区の被災田


 まっ黒でした。
 津波によって運ばれてきた、それがヘドロの色。
 津波がもたらしたヘドロや瓦礫は撤去が原則ですが、数センチの場合は除去を行わず除塩だけで作付を行うのだと、NPO法人田んぼの佐々木さんから教えてもらいました。
 でも…悪い色ではありません。
 むしろそれは有機物を含んだ土の色。海や海岸部の耕作地から運ばれてきたむしろ豊かな土壌であるのかもしれません。悪い臭いもしませんでした。

 そして、この田んぼには一目見てそれと分かるくらいタマカイエビが満ち溢れていました。
 午前中の田んぼには全く居なかった素敵な生き物です。

17 タマカイエビ1


17 タマカイエビ2


 素敵で不思議な生き物です。
 まん丸くて透明な2枚貝のような殻の中に、挟まれるようにしてエビがいて、器用にくるくる泳ぎ回っています。
 いくら眺めていても、まったく飽きることがありません。
 前回の調査ではこれの他に形が楕円形のカイエビというのも居て、これをすっと薬さじで拾い上げるのを、金魚すくいならぬカイエビすくいと称してそこそこ腕を上げたものでした。
「子供たちを集めて、タマカイエビすくい大会とかやったら楽しいでしょうねぇ」とか言いながら。
 ここではでもカイエビはおらず、ただひたすらタマカイエビが一杯いました。

15 ヤゴ アカネ類


 そして、ヤゴ。
 アカネの幼虫の特徴は背中にトゲがあることだと、他のヤゴとの見分け方を教わりました。

16 ヒメガムシ


 体長1.5センチほどのヒメガムシ。
「これでヒメなら、本物のガムシって…」
「3~4センチあります」
 そりゃすごい!

13 サンプリング作業


 前回同様、あちらこちらで歓声や嬌声があがります。

14 同定作業


 この田んぼでわたしが見つけたのは…
 (結局、今回もあまり写真を撮れなかったのは作業に没入してしまったせいなのですが)
 確か、チビゲンゴロウ、ミズダニ、ヒラタガムシ、ヒメモノアラガイなど7種。
 全体では18種でした。


 つまり、被災した田んぼのほうが生き物の種数が多かったという逆転した結果が出たことになります。

 もちろん…一般人の調査ですから精度はけして高い訳ではありませんが、わたしはむしろ津波によって運ばれた有機質の土砂が、かえって田んぼに豊かな生態系を生み出しつつあるのではないかと、そんな気がしてなりません。
 という事はわれわれが考えているよりも耕作地の復興は早いかもしれない…という結論はもちろん早急すぎますね。だからこそ、こうしてデータを蓄積しているのでした。

 ますます、調査が面白くなったところでこの日は終了。

 すっかり冷え切った身体でそそくさと撤収作業に入り、多賀城市内の今夜の宿に向かったのでした。

(つづきます!)





 
























田んぼの生き物調査 東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト その1 T1 東松島 6/2-3

テーマ:東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト
 今に始まったことではありませんが、大変ご無沙汰してしまいました。

 

 みなさんすでにお気づきのとおり、少しばかりバタバタしておりまして、あっという間に半年がたってしまいました。
 バタバタバタバタ…

 いつもより少しばかり遠いところに仕事に行っていて、いつもより少しばかり完成までの時間がかかってしまって、いつもより少しばかり自宅に滞在する時間が少なかったり、休む日が無かったり、それ以外の仕事が多かったりしたというだけなのですが、その程度のことでブログさえ更新できないというのはやはり歳のせいなのでしょうねぇ。睡眠時間が5時間を切ると仕事の精度が落ちそうになるというのは、やはり情けないことです。


 まあ、それはさておき…


 休みは相変わらず取れないながらも、ここにきてようやく通勤時間が往復で3時間ほど浮くようになってきましたので、満を持してブログ再開です。(続く保証は無いのですが)

 新しい活動も始めました。
 長い表題で、本当にいつもながら恐縮ですが、

 東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト。

 宮城県を中心とした被災地の、生態系のモニタリングです。
 島や干潟での調査もさることながら「田んぼ」調査というので思わず飛びついてしまいました。森明彦君からの知らせで、
「おもしろいボランティアの募集がありますよ」と…
 彼がおもしろいという以上、それは必ずおもしろいに違いなく、ホームページで確認して、しばらく自分のスケジュールを睨みつけて、それもかなり長い間睨みつけてから、その日のうちに申し込みました。ご存じのとおりスケジュールなんて先に埋めてしまったものの勝ちなのです。

 主催するアースウォッチ・ジャパンと、今回の活動内容については、それぞれのホームページをご覧いただくとして、本題に入ります。

 前回の活動からすでに2週間が経過しつつありますから…

 しかも明日は早朝から出発して2度目の活動に参加することになっていますから…


00東松島小野の被災田


 初回の6月2、3日の調査は東松島で行われました。

 被災した、つまり津波による被害を受けて潮を被りながらも何とか除塩を経てこの春から作付を再開した田んぼと、その近くの被災しなかった田んぼのそれぞれの生物相を調査してそのデータの集積から、場当たり的ではなく生態系の回復を確認しながら自然のサイクルの中で耕作地を復興していこうとする試みです。
 東北大学の生命科学研究科の皆さんがアースウォッチ・ジャパンと連携して進めてきたプロジェクトは昨年からの試行期間を経て、いよいよここから始まったのでした。

 わたしもかつては高校を卒業した後の4年間を栃木県は大田原の広大な水田の中で過ごしましたので(農場で過ごした、のではなくほとんど水田の中に居たというのが正直なところ)、田んぼとは深い縁があります。

 …正直、わくわくでした。

01仙石線高城町駅


 集合場所のJR仙石線高城町駅。

 仙石線を仙台から石巻に向かって松島海岸を過ぎると、この駅から先が一部運航不能となっています。調査区域はそちら方面になるのでこの駅が集合地点となったのですが。
 夜中の2時にクルマで出てこの駅に着いたのが8時。集合時間までにはまだたっぷり時間が有るというものの…駐車場が無い。
 丸二日置かせてもらう訳だからいい加減なところに放置する訳にもいかず、かと言って解散場所もこの駅だからあまり遠くにも行けず、と悩んで駅前の酒屋さんに相談したところ、線路の反対側に月極めの駐車場があるからそちらに電話して相談してみたら!
 で、相談しました。
 いやあ、うちは月極めで一日貸しはしていないんだけどね…どういう事情?
 …そうかぁ。それならいいよ、1台分空きがあるからさ、そこ3日でも4日でも使っていいよ。料金? そんなもん要らないよ。がんばって働いておくれ。

 ぐすん。

 遠藤商店さんに心から感謝です。


 集合時間の9時45分。東北大学のスタッフが占部城太郎教授と指導にあたってくださる向井康夫(惜しい!)助教始め5名、一般調査員12名、アースウォッチ・ジャパンの伊藤さんの計18名が顔を揃え、大学のクルマ3台に分乗して調査地に向かいました。

08テント設営


 ここからの調査の間、ほとんどまともに写真を撮れなかったのは、何を隠そう、その調査活動があまりに面白く、ついつい夢中になってしまったからに他なりません。

02サンプリングのレクチャー 向井助教による


 内容からして絶対に面白いだろうとは思っていましたが、そんな予想をはるかに上回る内容でした。

03サンプリングの開始


 一日に2か所、被災した田んぼとその直近の被災をまぬかれた田んぼを訪れ、12名がその都度3枚の田んぼに分かれまず一定量の泥を採取する。次に一定時間の間、網を使って自由に(もちろんイネや畦などを痛めないように注意)水中の生物を捕獲。テントに下でトレイにあけた泥や水の中からすべての生き物をピックアップして(スポイトで、小さな網で、あるいはさじやピンセットや素手で)、スタッフからレクチャーを受けつつ分類し、そしてその種名を特定するという…

 あ、そうそう。採取した泥を用水路に膝まで浸かって洗い流してくださったのは占部教授じきじきのことでありました。

04泥洗い 教授自ら


 とりあえず写真に収めてはみましたが、このトレイにあけた量は多すぎます。

06 同定作業キット


 これではちゃんと生物を特定できない。
 が、わたしの場合つい欲張ってたくさん泥を集めてきたため、一定時間内に同定作業を終えるために飛ばさざるを得なかったのでした。

 同じ組の女性が捕らえた…

05 カブトエビ!


 かなり立派なカブトエビです!(すみません。こんな写真しか無くて…)

 いやぁ、懐かしい。
 子供の頃、無近くの田んぼでたくさん捕まえてはうまく育てられなくて死なせたものでした。
 向井助教にも伺いましたが、やはり育てるのはとても難しいとのことでした。

09生き物を探す


 あとはいちいち写真を撮っていませんでした。
 
 この日わたしが捕まえてリストに載せた生き物たち…

 カイエビ、タマカイエビ、イシビル、ヌカカの幼虫、ユスリカの幼虫、ガガンボの幼虫、イトミミズ、ミジンコ、ガムシ、ゴマフガムシ、チビゲンゴロウ、ミズダニ、コガシラミズムシ、アメンボ、ヒメアメンボ、ドジョウ、オタマジャクシ(ニホンアマガエル、シュレーゲルアマガエル)、モノアラガイ…

10生き物を探す (2)


 たとえば2日目の矢本地区の2つの田んぼの場合、被災した田んぼで5種類ほど、でも被災しなかった方では15種類の生き物を発見しました。
 やはり、被災して除塩を終えたばかりの田んぼでは生き物の姿が少ない。
 でも、それでもわたしだけでも5種類、12名全員で総合すると10種類以上の生き物が戻ってきていることが、むしろ驚きでした。被災しなかった方の生物種は全体で確かに30種を超えていましたが、その中で注目する点は被災した田んぼでは貝類が居らず、そのためにそれを捕食するヒルの仲間もいなかったことでした。貝類の成長には時間が掛る為ということでしたが、用水路などから運ばれてきたといえ、被災した方に環境の変化に敏感なカブトエビが生息していたことは驚きであり、一つの喜びでもありました。

11調査結果報告


 そうしたすべてのデータをスタッフのみなさんがその場で集計して、すぐに報告して下さいました。
 これはとてもありがたいことで、やはり志の高さの違いを強く感じさせられました。
 慣れないわれわれに懇切丁寧な指導をしてくださり、一緒になって生き物の発見に歓声を上げてくださったスタッフの皆さんに、深い愛情と感謝の気持ちを禁じえません。
 今回が初回ということで前日は心配で眠れなかったという向井助教はじめ…心から水生生物を愛してやまないスタッフのみなさんに心から敬意を表します。

 そして共に調査活動に携わった初対面の調査員の面々…
 こちらの方もまた、かなりの個性派がたくさん揃っていました。
 生物多様性の調査は、同時に人間の生物多様性を味わう調査でもあったのでした。

 
12調査チーム


 本当はこうした活動の中でこれから進められていく復興について、そしてわたしたちがそれに関わっていく意味などについて、まだまだ考えたこと、お伝えしたいことははたくさん有るのですが、それはまた次回。

 活動はまだまだ続きますので。

 まずは明日の、2度目の活動に備えて準備を始めたいと思います。

 
 あ、カッパも入れとかなきゃ!







 
 


 

 

 



 




 
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向井康治

ガーデン工房 結 -YUI-は、埼玉を起点に植物を中心に据えたガーデンデザインと設計・施工を仕事とする会社です。
ただし、面白い仕事であれば時には利益も距離感覚も忘れ去る脳天気ぶり。
だから、この仕事にはいつも様々な出会いがあります。人、植物、もの、本、言葉、音楽…。

結 -YUI- はネットワークです。
それは多彩な技術や知識を持った人々が持てる力を共有し合うこと。
人と自然界の美とが満を持して出会うこと。

わたしが文芸、農業、インド、土木、外構、アウトドアと巡ってきた先の到達点は、おそらくそれらみんなの要素を遺憾なく結集することのできる、小宇宙 「ガーデン」でした。

ガーデンデザイナーとして、ガーデナーとして、これまでの、そしてこれから先の「出会い」を余すことなくお伝え出来ればと思います。

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