田んぼの生き物調査 東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト その9 T6 仙台今泉地区 8/26
テーマ:東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト
2012/09/02 23:42
そして、二日目。仙台今泉地区。
ここでも以前の調査の時と比べてみましょうか?
午前中の対照水田。
これが以前の様子。美しい畦の印象的な田んぼでした。
そしてこれが今回。
夏の2ヶ月半という時間が生み出す魔法みたいなもの。
さて、その魔法は生き物の方にはどんな変化を与えたでしょうか?
わたしが最初の被災田で見つけた生き物たち、13種類。(全体では33種)
ヒメアメンボ、コミズムシ、コガシラミズムシ、チビゲンゴロウ、ヤチバエ、ミズダニ、アオモンイトトンボ、ヒメゲンゴロウの幼虫と成虫、イトミミズ、サカマキガイ、モンユスリカ、イエカ、ニホンアカガエル…
おなじみヒメゲンゴロウ。
そしてこれがイトトンボのヤゴ。かわいいです。
尾の形状からアオモンイトトンボという種類であることが分かりました。
以前はこれが5種で、全体でも15種でした。七ヶ浜との比較もあってとても生き物の印象が薄いように感じたものでした。でも今回は違っています。長く丈を伸ばした稲や畦の雑草など、以前より植物などの自然が豊かになっていました。生き物たちが潜む空間が増えたという事なのでしょうか?
と同時にその空間もとても多様性を増していました。
調査はいつも4人ずつのグループに分かれて同時に3枚の田んぼで行われます。その4人もまた田んぼの各辺に散らばっていきます。調査する田んぼによって生き物の発見種数は大きく異なりました。また、同じ田んぼでも場所によって生き物の数や種類も違っていました。
わたしの選んだのはテントからは遠いけれど田んぼの東南側の部分。他の場所と比べてたくさんの浮き草に覆われていました。すると他の地点と違ってコミズムシの数が圧倒的に多く、その代わりサカマキガイ以外の貝が少ないという結果になりました。日当たりが良くて浮き草が多く生育したので水面近くを激しく動き回るコミズムシには良い隠れ家になったのかも知れないし、水温が上がりすぎて一部の貝にとって暮らしにくくなったのかも知れません。一方で水底近くに藻が繁茂していた場所から採取した方のサンプルには、わたしが一つも発見できなかったヒラマキミズマイマイがわんさか居たりしました。
午後の被災田。
ここでわたしが見つけたのは11種。全体で30種。
チビミズムシ、コミズムシ、ガガンボ、ミズダニ、ユスリカ2種、サカマキガイ、ヒラマキミズマイマイ、イシビル、ヌカカ、ウスバキトンボのヤゴ…
前回はわたしが7種、全体が18種でしたから、やはりここでも以前より増えているうえに、今回は被災田の発見種数の方が減っていました。それが自然なことのように思えますが、不思議なことに以前は逆転していた訳です。
わたしはその逆転の原因を津波がもたらしたヘドロ…ヘドロとは言え黒くて有機質に富んだその土にあるのでは無いかと思い、土質と水性生物との間に関係性があるのかどうか、とても興味を持ったのですが、でも、今回訪れてみると稲の成長はこちらの方が遅い気がするのです。生き物の数も減ってしまった…
そして何よりも被災田に前回はいなかった貝類やヒル類が多く生存していたこと。これも予想外のことでした。
貝類は用水路を通じて、まとまった雨の時などに上流の貯水池から運ばれてきたのでは無いかというのが向井助教の仮説で、私が担当した田んぼではに取水口側には多くのサカマキガイが集まっていたので、確かにそうでは無いかと思われます。
途中、中干しという水の無い期間を挟んだ今回の調査では、以前に比べて生き物の数が少ないのでは無いのか、というのが最初わたしが考えていたことでした。でも結果は逆。
この田んぼに限っては被災した田んぼにいち早く貝類が戻っていました。これも想定外。
結果、生息域を水中に限られる生き物は被災田には少ないのでは無いかという説も、ここでは裏切られることになった訳で…
これまでの結果だけで類推すれば津波という大きな撹乱よりも、中干しという人為的な撹乱の方が田んぼの生き物に与える影響が大きいという事になってしまう訳で、素人だからこそ言ってのけられる無責任な発言を許してもらえるなら…
訳が分からない!
という事になってしまいます。
おそらく一つ一つの原因を究明してそれらを除去していけば、最後に津波のもたらした何ものかが明らかになるのでしよう。それはさらに研究者のみなさんの、これからも続く地道な調査と解析の積み重ねとが明らかにしてくれるにちがいありません。
むしろわたしにはこの圧倒的な生き物たちの生態の不思議、突拍子も無い自然の摂理、様々な可能性と多様性とがおもしろくてたまらないのです。
じつは津波の影響など彼ら生き物たちにとって、始めからたいした物ではなかったのかもしれない。
それともじつは逆に、これからわれわれが津波の被害から生態系や種の多様性を回復していこうとする時、彼らはその中でとんでもなく重要な役割を果たすのかも知れない。
うむ。
興味が尽きないではありませんか!
いずれにしても、今年の市民調査はこうして終了しました。
まだ確定ではないようですが、向こう10年は続けたいと占部先生がおっしゃっていましたから、来年以降もきっとまたこのプロジェクトは続くと思います。ぜひ続けてもらいたい。
環境リテラシーの趣旨からすれば、わたしみたいな者が何度も何度も顔を出すような愚を犯さず、少しでも多くの方に経験してもらってこそこの活動の意義はあるのでしょうが…
こればかりはやはり譲れないかもしれない。
こんな形で被災地とつながって、田んぼと干潟と被災地の復興に微力ながらも関わっていけるなら、こんな幸せな話はありませんから。
それはまた、わたし自身が自分の立ち位置から植物の種の多様性について考えを深めていく契機にもなっていく筈で、だから来年もまたわたしは七ヶ浜や今泉や東松島や北上の田んぼに舞い戻っていることと思います。
申し訳ないと思います。すみません。
いずれまた、次の報告の機会を持ちたいと思います。
ここでも以前の調査の時と比べてみましょうか?
午前中の対照水田。
これが以前の様子。美しい畦の印象的な田んぼでした。
そしてこれが今回。
夏の2ヶ月半という時間が生み出す魔法みたいなもの。
さて、その魔法は生き物の方にはどんな変化を与えたでしょうか?
わたしが最初の被災田で見つけた生き物たち、13種類。(全体では33種)
ヒメアメンボ、コミズムシ、コガシラミズムシ、チビゲンゴロウ、ヤチバエ、ミズダニ、アオモンイトトンボ、ヒメゲンゴロウの幼虫と成虫、イトミミズ、サカマキガイ、モンユスリカ、イエカ、ニホンアカガエル…
おなじみヒメゲンゴロウ。
そしてこれがイトトンボのヤゴ。かわいいです。
尾の形状からアオモンイトトンボという種類であることが分かりました。
以前はこれが5種で、全体でも15種でした。七ヶ浜との比較もあってとても生き物の印象が薄いように感じたものでした。でも今回は違っています。長く丈を伸ばした稲や畦の雑草など、以前より植物などの自然が豊かになっていました。生き物たちが潜む空間が増えたという事なのでしょうか?
と同時にその空間もとても多様性を増していました。
調査はいつも4人ずつのグループに分かれて同時に3枚の田んぼで行われます。その4人もまた田んぼの各辺に散らばっていきます。調査する田んぼによって生き物の発見種数は大きく異なりました。また、同じ田んぼでも場所によって生き物の数や種類も違っていました。
わたしの選んだのはテントからは遠いけれど田んぼの東南側の部分。他の場所と比べてたくさんの浮き草に覆われていました。すると他の地点と違ってコミズムシの数が圧倒的に多く、その代わりサカマキガイ以外の貝が少ないという結果になりました。日当たりが良くて浮き草が多く生育したので水面近くを激しく動き回るコミズムシには良い隠れ家になったのかも知れないし、水温が上がりすぎて一部の貝にとって暮らしにくくなったのかも知れません。一方で水底近くに藻が繁茂していた場所から採取した方のサンプルには、わたしが一つも発見できなかったヒラマキミズマイマイがわんさか居たりしました。
午後の被災田。
ここでわたしが見つけたのは11種。全体で30種。
チビミズムシ、コミズムシ、ガガンボ、ミズダニ、ユスリカ2種、サカマキガイ、ヒラマキミズマイマイ、イシビル、ヌカカ、ウスバキトンボのヤゴ…
前回はわたしが7種、全体が18種でしたから、やはりここでも以前より増えているうえに、今回は被災田の発見種数の方が減っていました。それが自然なことのように思えますが、不思議なことに以前は逆転していた訳です。
わたしはその逆転の原因を津波がもたらしたヘドロ…ヘドロとは言え黒くて有機質に富んだその土にあるのでは無いかと思い、土質と水性生物との間に関係性があるのかどうか、とても興味を持ったのですが、でも、今回訪れてみると稲の成長はこちらの方が遅い気がするのです。生き物の数も減ってしまった…
そして何よりも被災田に前回はいなかった貝類やヒル類が多く生存していたこと。これも予想外のことでした。
貝類は用水路を通じて、まとまった雨の時などに上流の貯水池から運ばれてきたのでは無いかというのが向井助教の仮説で、私が担当した田んぼではに取水口側には多くのサカマキガイが集まっていたので、確かにそうでは無いかと思われます。
途中、中干しという水の無い期間を挟んだ今回の調査では、以前に比べて生き物の数が少ないのでは無いのか、というのが最初わたしが考えていたことでした。でも結果は逆。
この田んぼに限っては被災した田んぼにいち早く貝類が戻っていました。これも想定外。
結果、生息域を水中に限られる生き物は被災田には少ないのでは無いかという説も、ここでは裏切られることになった訳で…
これまでの結果だけで類推すれば津波という大きな撹乱よりも、中干しという人為的な撹乱の方が田んぼの生き物に与える影響が大きいという事になってしまう訳で、素人だからこそ言ってのけられる無責任な発言を許してもらえるなら…
訳が分からない!
という事になってしまいます。
おそらく一つ一つの原因を究明してそれらを除去していけば、最後に津波のもたらした何ものかが明らかになるのでしよう。それはさらに研究者のみなさんの、これからも続く地道な調査と解析の積み重ねとが明らかにしてくれるにちがいありません。
むしろわたしにはこの圧倒的な生き物たちの生態の不思議、突拍子も無い自然の摂理、様々な可能性と多様性とがおもしろくてたまらないのです。
じつは津波の影響など彼ら生き物たちにとって、始めからたいした物ではなかったのかもしれない。
それともじつは逆に、これからわれわれが津波の被害から生態系や種の多様性を回復していこうとする時、彼らはその中でとんでもなく重要な役割を果たすのかも知れない。
うむ。
興味が尽きないではありませんか!
いずれにしても、今年の市民調査はこうして終了しました。
まだ確定ではないようですが、向こう10年は続けたいと占部先生がおっしゃっていましたから、来年以降もきっとまたこのプロジェクトは続くと思います。ぜひ続けてもらいたい。
環境リテラシーの趣旨からすれば、わたしみたいな者が何度も何度も顔を出すような愚を犯さず、少しでも多くの方に経験してもらってこそこの活動の意義はあるのでしょうが…
こればかりはやはり譲れないかもしれない。
こんな形で被災地とつながって、田んぼと干潟と被災地の復興に微力ながらも関わっていけるなら、こんな幸せな話はありませんから。
それはまた、わたし自身が自分の立ち位置から植物の種の多様性について考えを深めていく契機にもなっていく筈で、だから来年もまたわたしは七ヶ浜や今泉や東松島や北上の田んぼに舞い戻っていることと思います。
申し訳ないと思います。すみません。
いずれまた、次の報告の機会を持ちたいと思います。
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