地震のあと05 歩く

テーマ:思い
昨日はやはり汗ばむ陽気の中、電車と徒歩にてメンテナンスや打合せなど4ヶ所をまわりました。

これが出発点の秩父鉄道野上駅。長瀞町になります。

野上駅

このあたりの駅はどこもそうですが小さくて素朴な木造の駅舎ばかりで、心が和みます。
ここが、わが家から一番近い駅なのですが、それでも峠を越えて5キロほど。こればかりは仕方なく、残りわずかとなったガソリンを使ってクルマで通います。
すぐ近くにこの夏開業するキャンプ場の建設現場があり、現在わたしはそこのコーディネートと植栽を担当しているため、ありがたくクルマはそこに置かせてもらっています。

そして、降り立った駅もまた素朴な木造駅舎。大麻生駅。熊谷市です。

踏切を渡って少し歩けば、すぐに荒川の土手に出ます。

荒川土手

最初のお宅はここから荒川を越えた対岸にあって、施工は2008年の秋でした。
昨年の春から1年間、定期的なメンテナンスのご依頼をいただき、この日は今季最後の仕事でした。
背中に道具を入れたリュックを背負い片手に書類を入れたバッグを持って、折りからの陽気に汗をぬぐい上着を脱ぎ捨てながら荒川に架かるながーい押切橋を歩きます。

押切橋から01

広い河川敷にはゴルフ場。
ふだんはクルマの窓から脇見程度にしか見られない風景が新鮮です。
まだ寒々しい冬枯れの景色の中に、それでもわずかな緑が加わって春の気配を感じさせてくれ…
とても美しいと思いました。

押切橋から02

なにせゴルフ場ですからね。
ふだんならそんな感慨など抱くことはなかったと思います。

押切橋から03

駅からおよそ3キロほど。
S様邸に到着しました。

S様邸

昨年冬、寒さ対策で残しておいた宿根草の地上部を整理し、常緑植物の混み合ったシュートを剪定して風通しを良くし、早くも出始めた雑草のうちのたちの悪い物を取り除き…
それだけの作業で大きなビニール袋ふたつが一杯になりました。

古い葉を取り除いてその下に隠れていた花が楽しめるようになったクリスマスローズ。

クリスマスローズ

冬の間ずっと土を覆って乾燥を防いでくれていたスイート・バイオレットもリシマキアのヌンムラリアも、、暖かい陽気に今年の新しい芽を出し始めていました。

スイート・バイオレット

リシマキア・ヌンムラリア

屋外のテーブルでお茶を頂きながら震災の影響についてお話しをし、来季のメンテナンスのお約束をいただき、駅まで送って下さるというお申し出を固く辞して、S様邸を後にしました。

この後大麻生の駅近くにある煉創の高橋さんを訪ねて打合せをし、再び秩父鉄道で移動した先のお宅に見積書ほかの書類を届け、ふたたび駅に戻るとさすがにただでさえ本数の多くない秩父鉄道。変則ダイヤでさらに少なくなっていたために次の電車は1時間後でした。
1時間もあれば…
5,6キロは歩けます。
最寄りの駅まで行ってから歩いていこうと思っていた折原ファーム(うちの資材置き場にしてモデルガーデン)に、直接アプローチしてみることにしました。
ここでは来週の仕事に備え、リュックの中味を入れ換えなければなりません。

途中、あいかわらずのガソリン渋滞を尻目に黙々と1時間10分。
近道に通った八高線の線路ですが、こちらは現在不通です。ご安心を。
(あ、それでもいけないことですので、ご内密に!)

八高線

高橋さんとも話しましたが、こんなことでもなければまず一生降り立つことのなかったろう駅があり、一生歩かなかったろう道があり、一生見ることのなかったろう景色があります。
だとすれば今日という一日はなんて貴重だったのだろう、そう思いました。
この日に歩いた距離は約20キロ。
なかなかどうして、わたしもまだ歩けるではないですか…

そういえば阪神淡路の時もたくさん歩きました。
本当に大勢の人がいっぱい歩いていました。
若い頃のインドの旅も思い出しました。
朝、地平線に見ていた町に夕方には辿り着き、振り返ると朝立っていた場所が地平線になっている…
日々、人の歩みのすごさを実感したものでした。

そうだ…

少しあの頃のことを思い出してみても良いなと、思いました。



















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向井康治

ガーデン工房 結 -YUI-は、埼玉を起点に植物を中心に据えたガーデンデザインと設計・施工を仕事とする会社です。
ただし、面白い仕事であれば時には利益も距離感覚も忘れ去る脳天気ぶり。
だから、この仕事にはいつも様々な出会いがあります。人、植物、もの、本、言葉、音楽…。

結 -YUI- はネットワークです。
それは多彩な技術や知識を持った人々が持てる力を共有し合うこと。
人と自然界の美とが満を持して出会うこと。

わたしが文芸、農業、インド、土木、外構、アウトドアと巡ってきた先の到達点は、おそらくそれらみんなの要素を遺憾なく結集することのできる、小宇宙 「ガーデン」でした。

ガーデンデザイナーとして、ガーデナーとして、これまでの、そしてこれから先の「出会い」を余すことなくお伝え出来ればと思います。

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