キフツゲート・コート・ガーデンズⅡ~イングリッシュ・ガーデンの旅 12
テーマ:イングリッシュガーデン
2010/01/11 05:46
引き続き、キフツゲート・コート・ガーデンズの散策から。
素晴らしいホワイト・サンク・ガーデンを後にしたわたしが、誘われるように導かれたのはハウスのすぐ下に展開するワイド・ボーダーでした。
初夏の宿根草が鮮やかに美しさを競い合う、それもまた素晴らしいガーデンでした。
前回のヒドコート・マナー・ガーデンの紹介の中でコテージ・ガーデンについて触れました。
区切られた空間の中で宿根草たちをのびのびと自由奔放に育てる…
ただ、もちろんそこにははっきりとした植栽計画-プランツ・プランのあることはいうまでもありません。
その顕著な例をわたしはいつもボーダー・ガーデンに見ることが出来ます。
この庭園のイエロー・ボーダー。
そして、ヒドコート・マナーのレッド・ボーダー。
それぞれのホワイト・ガーデン…
あるいはこのワイド・ボーダーのように、様々な色彩を重ね合わせた多色構成のボーダーも随所に見られます。
その基本はもちろん色彩の組合せ。
高低のバランス。
そして、時間の経過によるそれぞれの変化です。
それらに対する考察と研鑽なくしては生まれることのない美に、われわれはこうして酔いしれることができます。
わたしもそれが職業ですから、こうしたボーダーを小規模ながら手がけることがあります。
が、自分の関与できるのは最初の段階だけ、ということを常に念頭に置かなくてはなりません。
それから先ずっと関わり、手を加えていくことが出来るなら、今あわてて植えなくても良い宿根草があります。
秋の切り戻しを前提としてその背後に春先の宿根草を植え込むこともできます。
球根の仕込みなど、まして季節が限定されてしまいます。
それが出来るのはつまるところ、オーナーのみなさん。
わたしは庭を作ると言いながら、オーナーのみなさんの庭づくりのお手伝いをしているに過ぎないと言う思いです。
そして、そう割り切りながらもそれでは余りに淋しいので、季節ごとについいそいそと出掛けていき、庭の手入れのお手伝いをさせて頂いたりします。
そのようなお庭が、ありがたいことにもう十数軒になったでしょうか?
季節になるとそうしたほとんど利益の出ないお仕事が目白押しとなり、経営をものすごく圧迫するのですが、これが個人経営の醍醐味です。そうそうやめられるものではありません。
もちろん、自分の手がけたガーデンがいつまでも美しくあってくれれば、それはとても有効な広告媒体となってくれます。そうした戦略がまったく無いと言えば、それは嘘になります。
ただ、それ以前にわたしはそれらのガーデンたちからとても有意義なものを学ばせてもらっているのです。
たとえば、わたしの植えた植物が1年後、2年後、あるいは5年後、10年後にどの程度まで育っているのか…
病害虫のこともあります。その土地との相性もあります。
書物だけでは分からない植物たちの季節ごとの変化は、その後の植栽設計においてとても大切な情報です。
また、その都度お客さまとその後の植栽計画を検討する機会もあります。
こうした色彩花壇の、色の組合せの美しさ、調和の妙は一朝一夕に出来るものではないと、わたしは感じています。
もちろん失敗もありますし、試行錯誤もあります。
でもそれはそれ以前に、それらの植物固有の色がその場所、その時間の中で個別に育まれているから…
だから何年もかけて、いくつもの季節の中で少しずつ色を重ねていくことで、本当のカラー・スキムは実現するのではないか…
これもまた、その後のオーナーのみなさんとのおつき合いの中で学ばせて頂いたことです。
さて、物思いにふけるのはこの辺にして、庭園の散策に集中したいと思います。
ワイド・ボーダーの先から道は崖をくだり、ロウアー・ガーデンへと向かいます。
ぼんやりして足を踏み外すと危険ですから(笑)!
ライム・ストーンと呼ばれるコッツウォルズ地方独特の蜂蜜色の石灰岩…
その石組みと階段が続きます。
石の間にはセダムも覗き、
急な階段も、深い緑に涼しげでした。
降り立った緑のテラスにあるのはプール。
木陰を選んで寝そべる見学者たち。
あっ、わたしも寝そべりました。
午前中と打って変わったこのゆとり…
小さな落ち着いた庭園で、見学者もまばらだったからですね。
眼下にはコッツウォルズの丘陵が拡がり、
羊たちも寝そべっていました。
そして振り返れば、地中海の植物を集めたというロウアー・ガーデンが包み込むように…
中央のサマーハウスです。
再び、アッパー・ガーデンへの登り道にて。
登り切ったアッパー・ガーデンで、先ほどは上から見おろしただけのブリッジ・ガーデン。
これはローズ・ボーダーとホワイト・サンク・ガーデンを仕切るように掘られた空堀の底です。
この上をワイド・ボーダーとイエロー・ボーダーを結ぶ橋が渡っています。
最後に再びホワイト・サンク・ガーデンヘ。
じつはこの日4度目の訪問でした。
。
大好きなシシリンチウム…
それらに別れを告げました。
このあとわれわれはバスでロンドンに戻り、わずかな休憩をはさんですぐさまケンジントンパレスに繰り出し、
そのケンジントン・ガーデンズのフラワー・ウォークからハイド・パークのローズ・ガーデンまでを踏破し(これは先にレポートいたしました)、
さらには美味いビールを求めてパブに乗り込むのですが、
それはこの後、およそ8時間も後の話です。
なんにしても、最高に素敵で壮絶な1日でした。
次回はイギリス5日目。
RHSの総本山、ウィスリー・ガーデンを訪ねます。
膨大な写真の山をどう整理するか…
今から楽しみです。
ホームページもぜひご覧下さい!
http://www.yui-garden.com/
素晴らしいホワイト・サンク・ガーデンを後にしたわたしが、誘われるように導かれたのはハウスのすぐ下に展開するワイド・ボーダーでした。
初夏の宿根草が鮮やかに美しさを競い合う、それもまた素晴らしいガーデンでした。
前回のヒドコート・マナー・ガーデンの紹介の中でコテージ・ガーデンについて触れました。
区切られた空間の中で宿根草たちをのびのびと自由奔放に育てる…
ただ、もちろんそこにははっきりとした植栽計画-プランツ・プランのあることはいうまでもありません。
その顕著な例をわたしはいつもボーダー・ガーデンに見ることが出来ます。
この庭園のイエロー・ボーダー。
そして、ヒドコート・マナーのレッド・ボーダー。
それぞれのホワイト・ガーデン…
あるいはこのワイド・ボーダーのように、様々な色彩を重ね合わせた多色構成のボーダーも随所に見られます。
その基本はもちろん色彩の組合せ。
高低のバランス。
そして、時間の経過によるそれぞれの変化です。
それらに対する考察と研鑽なくしては生まれることのない美に、われわれはこうして酔いしれることができます。
わたしもそれが職業ですから、こうしたボーダーを小規模ながら手がけることがあります。
が、自分の関与できるのは最初の段階だけ、ということを常に念頭に置かなくてはなりません。
それから先ずっと関わり、手を加えていくことが出来るなら、今あわてて植えなくても良い宿根草があります。
秋の切り戻しを前提としてその背後に春先の宿根草を植え込むこともできます。
球根の仕込みなど、まして季節が限定されてしまいます。
それが出来るのはつまるところ、オーナーのみなさん。
わたしは庭を作ると言いながら、オーナーのみなさんの庭づくりのお手伝いをしているに過ぎないと言う思いです。
そして、そう割り切りながらもそれでは余りに淋しいので、季節ごとについいそいそと出掛けていき、庭の手入れのお手伝いをさせて頂いたりします。
そのようなお庭が、ありがたいことにもう十数軒になったでしょうか?
季節になるとそうしたほとんど利益の出ないお仕事が目白押しとなり、経営をものすごく圧迫するのですが、これが個人経営の醍醐味です。そうそうやめられるものではありません。
もちろん、自分の手がけたガーデンがいつまでも美しくあってくれれば、それはとても有効な広告媒体となってくれます。そうした戦略がまったく無いと言えば、それは嘘になります。
ただ、それ以前にわたしはそれらのガーデンたちからとても有意義なものを学ばせてもらっているのです。
たとえば、わたしの植えた植物が1年後、2年後、あるいは5年後、10年後にどの程度まで育っているのか…
病害虫のこともあります。その土地との相性もあります。
書物だけでは分からない植物たちの季節ごとの変化は、その後の植栽設計においてとても大切な情報です。
また、その都度お客さまとその後の植栽計画を検討する機会もあります。
こうした色彩花壇の、色の組合せの美しさ、調和の妙は一朝一夕に出来るものではないと、わたしは感じています。
もちろん失敗もありますし、試行錯誤もあります。
でもそれはそれ以前に、それらの植物固有の色がその場所、その時間の中で個別に育まれているから…
だから何年もかけて、いくつもの季節の中で少しずつ色を重ねていくことで、本当のカラー・スキムは実現するのではないか…
これもまた、その後のオーナーのみなさんとのおつき合いの中で学ばせて頂いたことです。
さて、物思いにふけるのはこの辺にして、庭園の散策に集中したいと思います。
ワイド・ボーダーの先から道は崖をくだり、ロウアー・ガーデンへと向かいます。
ぼんやりして足を踏み外すと危険ですから(笑)!
ライム・ストーンと呼ばれるコッツウォルズ地方独特の蜂蜜色の石灰岩…
その石組みと階段が続きます。
石の間にはセダムも覗き、
急な階段も、深い緑に涼しげでした。
降り立った緑のテラスにあるのはプール。
木陰を選んで寝そべる見学者たち。
あっ、わたしも寝そべりました。
午前中と打って変わったこのゆとり…
小さな落ち着いた庭園で、見学者もまばらだったからですね。
眼下にはコッツウォルズの丘陵が拡がり、
羊たちも寝そべっていました。
そして振り返れば、地中海の植物を集めたというロウアー・ガーデンが包み込むように…
中央のサマーハウスです。
再び、アッパー・ガーデンへの登り道にて。
登り切ったアッパー・ガーデンで、先ほどは上から見おろしただけのブリッジ・ガーデン。
これはローズ・ボーダーとホワイト・サンク・ガーデンを仕切るように掘られた空堀の底です。
この上をワイド・ボーダーとイエロー・ボーダーを結ぶ橋が渡っています。
最後に再びホワイト・サンク・ガーデンヘ。
じつはこの日4度目の訪問でした。
。
大好きなシシリンチウム…
それらに別れを告げました。
このあとわれわれはバスでロンドンに戻り、わずかな休憩をはさんですぐさまケンジントンパレスに繰り出し、
そのケンジントン・ガーデンズのフラワー・ウォークからハイド・パークのローズ・ガーデンまでを踏破し(これは先にレポートいたしました)、
さらには美味いビールを求めてパブに乗り込むのですが、
それはこの後、およそ8時間も後の話です。
なんにしても、最高に素敵で壮絶な1日でした。
次回はイギリス5日目。
RHSの総本山、ウィスリー・ガーデンを訪ねます。
膨大な写真の山をどう整理するか…
今から楽しみです。
ホームページもぜひご覧下さい!
http://www.yui-garden.com/