ロックガーデンを造る~H市N様邸04 2012年秋
テーマ:しごと
2013/01/15 05:10
秋のロックガーデン。
厳しい夏を乗り切った…どころか、その暑さをしっかり味方に付けてたくましく成長した植物たちに、さらに秋の草花を加え、春咲きの球根も追加して、1年がかりでそれは完成させることが出来ました。
最初に植えたモミやアトラスシーダーから数え始め、この秋に植え込んだものまでを再度集計し直したところ、
その種類は約170種。
個体数は820でした。
中には最初の冬を乗り切れなかったものも、厳しい夏に耐えきれなかったものも、ムシたちのご馳走になったものも有りますが、とにかく、それがこの場所に集まった生命たちの数です。
時々思う事があるのですが、
われわれ人間はこのようにして庭を造ります。
それは自然の模倣であったり、新しい居住空間であったり、あるいはコレクションの展示であったりする訳ですが、
結局のところそこで人間がなし得る唯一のことは、
場を作り、そのことで多くの生命を集めるという、その一点に尽きるのではないかと。
集まった生命たちはそこで人間が作った場を整え、
時に作り直し、
彼らにとって居心地の良い空間に変えていく。
だから、その場所が人間にとっても心地よい空間になっていく。
そんな風に考え始めると、
そこで無力感に打ちのめされるか、
はたまた喜びに満たされるか、
まあ、そんなところでガーデナーは自らの資質を問われているのかも知れません。
さて。
1年を掛けて完成した、と言うか成長に向けた第一歩を踏み出したこのロックガーデンは、
はたしてどれだけそこに住まわれるご家族や、ご近所の方や、通行人の方に喜びをもたらしてくれるでしょうか?
実はすでにご家族の皆さんの喜びの声は、充分に伺わせていただくことが出来ました。
ときおり散歩で近くを通りかかる、近所の方の賞賛の声も戴きました。
わざわざこの庭を見るため、隣町からジョギングで来られるという方にもお目に掛かりました。
でも、ガーデンの完成が今ではなく、これからの成長の先にあるとしたら、このとんでもないガーデンを維持管理していくのは、引き続きガーデン工房 結 -YUI-の仕事であるわけで、
ともかく、とんでもない責任を今更のように感じているところです。
…ひしひしひし。
そこで、冒頭の話に戻るわけですが、
結果的にわたしが集めてしまった800を越える生命たち。
彼らがこの場所の価値を高めてくれるのなら、
所詮わたしの心配は杞憂に過ぎないのではないか…
このロックガーデンは生まれた時からすでに、美しく成長することが決められているのかも知れない…
とまでは言い過ぎかもしれませんが、
今思い出すのは石組みの最中のこと。
あの時、わたしの選ぶ石たちは面白いくらいにここぞという場所に収まっていってくれました。
それはすでにわたしの力でも才能でもなく、
正直な印象を言えば、
みずから手を上げて自分をアピールする石を、こちらがただ選んで希望する場所に置けば良かったという…
それではおまえは石の声を聞けたというのか、
と問われれば困るものの、
それでもやはりその質問には応と答えるしかありません。
それが地の力。
生命の発する力。
庭という空間が秘めた力。
ここもまた、「祝福された場所」のひとつであると、
わたしは強くそう感じています。
そして、そうした場の存在を、広く伝えていくのが自分の「しごと」であると、
これもまた強くそう感じているのです。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
厳しい夏を乗り切った…どころか、その暑さをしっかり味方に付けてたくましく成長した植物たちに、さらに秋の草花を加え、春咲きの球根も追加して、1年がかりでそれは完成させることが出来ました。
最初に植えたモミやアトラスシーダーから数え始め、この秋に植え込んだものまでを再度集計し直したところ、
その種類は約170種。
個体数は820でした。
中には最初の冬を乗り切れなかったものも、厳しい夏に耐えきれなかったものも、ムシたちのご馳走になったものも有りますが、とにかく、それがこの場所に集まった生命たちの数です。
時々思う事があるのですが、
われわれ人間はこのようにして庭を造ります。
それは自然の模倣であったり、新しい居住空間であったり、あるいはコレクションの展示であったりする訳ですが、
結局のところそこで人間がなし得る唯一のことは、
場を作り、そのことで多くの生命を集めるという、その一点に尽きるのではないかと。
集まった生命たちはそこで人間が作った場を整え、
時に作り直し、
彼らにとって居心地の良い空間に変えていく。
だから、その場所が人間にとっても心地よい空間になっていく。
そんな風に考え始めると、
そこで無力感に打ちのめされるか、
はたまた喜びに満たされるか、
まあ、そんなところでガーデナーは自らの資質を問われているのかも知れません。
さて。
1年を掛けて完成した、と言うか成長に向けた第一歩を踏み出したこのロックガーデンは、
はたしてどれだけそこに住まわれるご家族や、ご近所の方や、通行人の方に喜びをもたらしてくれるでしょうか?
実はすでにご家族の皆さんの喜びの声は、充分に伺わせていただくことが出来ました。
ときおり散歩で近くを通りかかる、近所の方の賞賛の声も戴きました。
わざわざこの庭を見るため、隣町からジョギングで来られるという方にもお目に掛かりました。
でも、ガーデンの完成が今ではなく、これからの成長の先にあるとしたら、このとんでもないガーデンを維持管理していくのは、引き続きガーデン工房 結 -YUI-の仕事であるわけで、
ともかく、とんでもない責任を今更のように感じているところです。
…ひしひしひし。
そこで、冒頭の話に戻るわけですが、
結果的にわたしが集めてしまった800を越える生命たち。
彼らがこの場所の価値を高めてくれるのなら、
所詮わたしの心配は杞憂に過ぎないのではないか…
このロックガーデンは生まれた時からすでに、美しく成長することが決められているのかも知れない…
とまでは言い過ぎかもしれませんが、
今思い出すのは石組みの最中のこと。
あの時、わたしの選ぶ石たちは面白いくらいにここぞという場所に収まっていってくれました。
それはすでにわたしの力でも才能でもなく、
正直な印象を言えば、
みずから手を上げて自分をアピールする石を、こちらがただ選んで希望する場所に置けば良かったという…
それではおまえは石の声を聞けたというのか、
と問われれば困るものの、
それでもやはりその質問には応と答えるしかありません。
それが地の力。
生命の発する力。
庭という空間が秘めた力。
ここもまた、「祝福された場所」のひとつであると、
わたしは強くそう感じています。
そして、そうした場の存在を、広く伝えていくのが自分の「しごと」であると、
これもまた強くそう感じているのです。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
ロックガーデンを造る~H市N様邸03 2012年夏
テーマ:しごと
2013/01/14 05:33
昨年の春、4月下旬から5月にかけて…
このブログの記事を書くにあたり、こちらのお宅に植え込んだ低木や宿根草たちの数を集計してみました。
約90種、650株。
われながら、少し愕然となるような数字でした。
よくもまあ、植えたものです。
それらが6月を迎え、力強く育ち始めました。
ロックガーデンですので、そこはただの石組みとは違い、岩と岩の間にたっぷりと腐食土を入れています。
それらの表土が当初、雨のたびに流出してお客さまにご迷惑を掛けてきました。
でも、それも夏までですので、どうかそれまではご辛抱下さい。
わたしはそう申し上げてきました。
それまでには岩と岩の間に植え込んだ低木がしっかりと根を拡げ、あるいは宿根草たちが地表を覆い、おのずと土の流出を止めてくれる筈でした。
ロックガーデンはどうしてもドライなものにならざるを得ません。
地表の水分はすぐに岩間に染みこんでしまい、さらに岩自体が水分を吸収します。
だからここで使う植物は乾燥に強く、日当たりの良い箇所では暑さにも強くなくてはなりません。
そうした中で少しでも早く地表面を覆ってくれるグランドカバーとしてわたしが採用したのは、
クリーピング系のタイム、セダム類、ヒメイワダレソウ、ヒメツルソバ、リシマキア ‘ヌンムラリア・オーレア’、ロニセラ、アメリカンブルー、コンボルブルズ、グーデニア、オノエマンセマといった仲間たちでした。
それらを環境ごとに使い分け、例えば南側はクリーピング・タイムを中心に、東のガレージをセダム類で、西側の落葉の林の足元はヒメイワダレソウで覆い、北の和の庭の建物寄りを日陰にも強いヒメツルソバで、樹の足元を同じくリシマキアでというように植え分けたのでした。
6月のこの時点ではごらん通り、ようやくシュートを延ばし、根を拡げ始めたところです。
一方でその他の植物たちも確実に大きくなり、あるいは花を咲かせ、あるいは色づき…
これが5月のことでした。
さらに長かった7,8月を経て…
さすがに9月ともなれば、植物たちのボリュームがはっきりそれと分かるほど増大しています。
このときの訪問ではさすがに追加は出来ず、秋の宿根草の植え込みは翌月まで待つことにしました。
その代わり、かなりの量の切り戻しを行いました。
土の露出もめっきり少なくなり、これでもう雨ごとの流出も過去のもの。
キッチンガーデンの野菜たちもこんなに大きくなり、
何よりも驚異的だったのはヒメイワダレソウたち。
雑草の世話をしなくて済むよう、早々に緑のカーペットにしてしまいましょう、
…とは申し上げましたが、
まさか半年足らずでここまでこの場所を気に入ってもらえるとは!
和の庭のグランドカバーももう一息といったところです。
10月の再訪と追加植栽をお約束して、まだまだ残暑厳しい9月の庭を後にしたのでした。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
このブログの記事を書くにあたり、こちらのお宅に植え込んだ低木や宿根草たちの数を集計してみました。
約90種、650株。
われながら、少し愕然となるような数字でした。
よくもまあ、植えたものです。
それらが6月を迎え、力強く育ち始めました。
ロックガーデンですので、そこはただの石組みとは違い、岩と岩の間にたっぷりと腐食土を入れています。
それらの表土が当初、雨のたびに流出してお客さまにご迷惑を掛けてきました。
でも、それも夏までですので、どうかそれまではご辛抱下さい。
わたしはそう申し上げてきました。
それまでには岩と岩の間に植え込んだ低木がしっかりと根を拡げ、あるいは宿根草たちが地表を覆い、おのずと土の流出を止めてくれる筈でした。
ロックガーデンはどうしてもドライなものにならざるを得ません。
地表の水分はすぐに岩間に染みこんでしまい、さらに岩自体が水分を吸収します。
だからここで使う植物は乾燥に強く、日当たりの良い箇所では暑さにも強くなくてはなりません。
そうした中で少しでも早く地表面を覆ってくれるグランドカバーとしてわたしが採用したのは、
クリーピング系のタイム、セダム類、ヒメイワダレソウ、ヒメツルソバ、リシマキア ‘ヌンムラリア・オーレア’、ロニセラ、アメリカンブルー、コンボルブルズ、グーデニア、オノエマンセマといった仲間たちでした。
それらを環境ごとに使い分け、例えば南側はクリーピング・タイムを中心に、東のガレージをセダム類で、西側の落葉の林の足元はヒメイワダレソウで覆い、北の和の庭の建物寄りを日陰にも強いヒメツルソバで、樹の足元を同じくリシマキアでというように植え分けたのでした。
6月のこの時点ではごらん通り、ようやくシュートを延ばし、根を拡げ始めたところです。
一方でその他の植物たちも確実に大きくなり、あるいは花を咲かせ、あるいは色づき…
これが5月のことでした。
さらに長かった7,8月を経て…
さすがに9月ともなれば、植物たちのボリュームがはっきりそれと分かるほど増大しています。
このときの訪問ではさすがに追加は出来ず、秋の宿根草の植え込みは翌月まで待つことにしました。
その代わり、かなりの量の切り戻しを行いました。
土の露出もめっきり少なくなり、これでもう雨ごとの流出も過去のもの。
キッチンガーデンの野菜たちもこんなに大きくなり、
何よりも驚異的だったのはヒメイワダレソウたち。
雑草の世話をしなくて済むよう、早々に緑のカーペットにしてしまいましょう、
…とは申し上げましたが、
まさか半年足らずでここまでこの場所を気に入ってもらえるとは!
和の庭のグランドカバーももう一息といったところです。
10月の再訪と追加植栽をお約束して、まだまだ残暑厳しい9月の庭を後にしたのでした。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
ロックガーデンを造る~H市N様邸02 2012年春
テーマ:しごと
2013/01/13 11:42
2012年4月。
近くの土手に桜が満開となった頃、ようやくロックガーテンは一旦の完成となりました。
この頃にはそれまで工事の過程で折に触れて植え込んできた、球根や宿根草たちも目を覚ましてくれています。
ユーフォルビア ‘アミグダロイデス ・パープレア’と原種系チューリップ ‘ブライトジェム’。
冬の間中、楽しませてくれたエリカたち。
さらにコンボルブルズの‘クネオルム’。
シルバーリーフの輝きを増したプンゲンス ‘グロボーサ・グラウカ’。
さらに季節が進んで、
随時宿根草を加えながら、そして5月ともなれば…
庭はどこも賑やかで楽しいものになってくれました。
図面下側が南となります。
建物の配置を斜めにしたため、建物正面の南西の庭と、ガレージのある南東の庭、通行量の多い交差点に面した左手北西の庭、そして和室に面した北東の庭、4つの庭が生まれました。
ここでは便宜上建物正面を南の庭と称して、以下東の庭、西の庭、北の庭というように紹介していきます。
まずは、南の庭。
こちらは建物の外観と「北欧の岩山」のイメージに即して針葉樹でまとめました。
お客さまのご希望でもあるモミと、色彩のコントラストを出すためブルー系のアトラスシーダー、ゴールド系のヨーロッパゴールドとフィリフェラ・オーレア、そしてイチイ…
冬の景色をより豊かにするため矮性種や這性種のコニファー類もたくさん使いたかったのですが、実はこの近隣は著名な梨の生産地でもありまして、赤星病を媒介する恐れのあるビャクシン類の使用は控えた方が良いことが分かりました。そこでこれに代わる「冬も美しい常緑樹」としてヒース=エリカを多用することになった訳です。
エリカは原種に近いものを中心に8種類ほどを入れました。
常緑樹が中心の南の庭ですが、季節の変化と花色を加えるため(それでいて高さは極力抑えるため)、階段とスロープ、ふたつのアプローチの中央にシダレエンジュを入れてみました。
もともと縁起の良い樹とされるエンジュのうちでもシダレ種は珍重されて来たようですが、ここでは落葉後の姿も面白く、花も楽しめ、上に延びて景色を阻害せず玄関前を暗くしないという特性に惹かれました。
玄関から東のガレージに向かう動線は高低差があるために石張りの階段と小さな踊り場があります。
こちらは建物が道路に最も近いため、時間を掛けてコンクリート擁壁による土留め工事を施した箇所。もちろん、完成すればその痕跡はまるで有りませんが…
こちらをわれわれはささやかながら「登山道」と「展望台」と呼んでいます。手すりも当初は鉄製の堅固なものを考えましたが、「山の遊歩道」のイメージを大切にするため、ACQ防腐処理済みの国産杉を使って手作りで製作しました。
東側のガレージは「山の麓の駐車場」のイメージ。
2つの「登山道」が、玄関や北側の庭とつなぎます。
こちらは日当たりが良くて北風を避けられるため、以前のお住まいで大切に育てられてきたソテツを植え込み、これを中心に南洋風の植物でまとめました。
セレノア・ルペンス(ノコギリヤシ)とチャメロプス、アガベとニューサイラン、そしてハーブと多肉植物たち…
そしてここから「北登山道」を登るとささやかな隠れハーブガーデンとキッチンガーデン。こちらは奥様のリクエストでもありました。
一方、西側はリビングの強い西日を遮りつつ小鳥たちの来訪を楽しみ、かつ夕方の景色を楽しむためにささやかな落葉の疎林としました。
シラカバの‘ジャックモンティー’、アオハダ、アメリカヒトツバタゴ、ジューンベリー ‘ロビンヒル’、ノルウェーカエデ ‘プリンストンゴールド’、クラブアップル ‘プロフュージョン’…
そしてウッドデッキの中央には奥様がお好きという株立ちのヤマボウシ。
南側の針葉樹の森から西側の落葉樹の林への流れを唐突で不自然なものにしないよう、つなぎにイチイを入れたり、岩の組み方を少しずつ変えていったりという工夫がありました。
角の部分は鋭い角度を和らげるため、当初は図面にある通り、岩を前面に出さず低木の植栽にするつもりでしたし、実際そのように岩の配置をしてみたのですが…
こちらはご主人の希望もあって、南側の力強い石組みをここでも再現することにしました。
それも最初はまだおとなしめに…
それが後ほど岩を追加してこのようになりました。
遠目に見たときこれが結局、貴重なアクセントとなったような気がいたします。
そして、この岩がいったん静かな流れに変わり、北側に曲がると再度力強いものになります。
ここで配慮したのは、外からの景色はこれまでの洋の石組みの流れを保ちながら、内側の和室前の庭からの景色では和(風)の石組みとなるようにすること。
とは言え、そこはガーデン工房 結 -YUI-の庭ですのでたとえ和の庭とは言え、主役はあくまでも植物たちです。
こちらの植栽はやや和の味わいがある樹のうち、外側には常緑を、内側には落葉を配置しました。
ソヨゴ、トウネズミモチ ‘トリカラー’、オガタマ ‘ポートワイン’、ロドレイア、斑入りユズリハ、アセビ、ビバーナム、コハウチハカエデ、ニシキギ、山椒など。
ましてこちらの庭は勝手口側と言え、町の中心に向かう第2の玄関口でも有ります。
そうであれば、当然ながらそれなりのしつらえがあって然るべきで…
できる限りお洒落に、かつローメンテナンスで機能的な庭に仕上がったと思っています。
次回はこの庭が夏を迎えて緑を深めた様子をお伝えしたいと思います。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
近くの土手に桜が満開となった頃、ようやくロックガーテンは一旦の完成となりました。
この頃にはそれまで工事の過程で折に触れて植え込んできた、球根や宿根草たちも目を覚ましてくれています。
ユーフォルビア ‘アミグダロイデス ・パープレア’と原種系チューリップ ‘ブライトジェム’。
冬の間中、楽しませてくれたエリカたち。
さらにコンボルブルズの‘クネオルム’。
シルバーリーフの輝きを増したプンゲンス ‘グロボーサ・グラウカ’。
さらに季節が進んで、
随時宿根草を加えながら、そして5月ともなれば…
庭はどこも賑やかで楽しいものになってくれました。
図面下側が南となります。
建物の配置を斜めにしたため、建物正面の南西の庭と、ガレージのある南東の庭、通行量の多い交差点に面した左手北西の庭、そして和室に面した北東の庭、4つの庭が生まれました。
ここでは便宜上建物正面を南の庭と称して、以下東の庭、西の庭、北の庭というように紹介していきます。
まずは、南の庭。
こちらは建物の外観と「北欧の岩山」のイメージに即して針葉樹でまとめました。
お客さまのご希望でもあるモミと、色彩のコントラストを出すためブルー系のアトラスシーダー、ゴールド系のヨーロッパゴールドとフィリフェラ・オーレア、そしてイチイ…
冬の景色をより豊かにするため矮性種や這性種のコニファー類もたくさん使いたかったのですが、実はこの近隣は著名な梨の生産地でもありまして、赤星病を媒介する恐れのあるビャクシン類の使用は控えた方が良いことが分かりました。そこでこれに代わる「冬も美しい常緑樹」としてヒース=エリカを多用することになった訳です。
エリカは原種に近いものを中心に8種類ほどを入れました。
常緑樹が中心の南の庭ですが、季節の変化と花色を加えるため(それでいて高さは極力抑えるため)、階段とスロープ、ふたつのアプローチの中央にシダレエンジュを入れてみました。
もともと縁起の良い樹とされるエンジュのうちでもシダレ種は珍重されて来たようですが、ここでは落葉後の姿も面白く、花も楽しめ、上に延びて景色を阻害せず玄関前を暗くしないという特性に惹かれました。
玄関から東のガレージに向かう動線は高低差があるために石張りの階段と小さな踊り場があります。
こちらは建物が道路に最も近いため、時間を掛けてコンクリート擁壁による土留め工事を施した箇所。もちろん、完成すればその痕跡はまるで有りませんが…
こちらをわれわれはささやかながら「登山道」と「展望台」と呼んでいます。手すりも当初は鉄製の堅固なものを考えましたが、「山の遊歩道」のイメージを大切にするため、ACQ防腐処理済みの国産杉を使って手作りで製作しました。
東側のガレージは「山の麓の駐車場」のイメージ。
2つの「登山道」が、玄関や北側の庭とつなぎます。
こちらは日当たりが良くて北風を避けられるため、以前のお住まいで大切に育てられてきたソテツを植え込み、これを中心に南洋風の植物でまとめました。
セレノア・ルペンス(ノコギリヤシ)とチャメロプス、アガベとニューサイラン、そしてハーブと多肉植物たち…
そしてここから「北登山道」を登るとささやかな隠れハーブガーデンとキッチンガーデン。こちらは奥様のリクエストでもありました。
一方、西側はリビングの強い西日を遮りつつ小鳥たちの来訪を楽しみ、かつ夕方の景色を楽しむためにささやかな落葉の疎林としました。
シラカバの‘ジャックモンティー’、アオハダ、アメリカヒトツバタゴ、ジューンベリー ‘ロビンヒル’、ノルウェーカエデ ‘プリンストンゴールド’、クラブアップル ‘プロフュージョン’…
そしてウッドデッキの中央には奥様がお好きという株立ちのヤマボウシ。
南側の針葉樹の森から西側の落葉樹の林への流れを唐突で不自然なものにしないよう、つなぎにイチイを入れたり、岩の組み方を少しずつ変えていったりという工夫がありました。
角の部分は鋭い角度を和らげるため、当初は図面にある通り、岩を前面に出さず低木の植栽にするつもりでしたし、実際そのように岩の配置をしてみたのですが…
こちらはご主人の希望もあって、南側の力強い石組みをここでも再現することにしました。
それも最初はまだおとなしめに…
それが後ほど岩を追加してこのようになりました。
遠目に見たときこれが結局、貴重なアクセントとなったような気がいたします。
そして、この岩がいったん静かな流れに変わり、北側に曲がると再度力強いものになります。
ここで配慮したのは、外からの景色はこれまでの洋の石組みの流れを保ちながら、内側の和室前の庭からの景色では和(風)の石組みとなるようにすること。
とは言え、そこはガーデン工房 結 -YUI-の庭ですのでたとえ和の庭とは言え、主役はあくまでも植物たちです。
こちらの植栽はやや和の味わいがある樹のうち、外側には常緑を、内側には落葉を配置しました。
ソヨゴ、トウネズミモチ ‘トリカラー’、オガタマ ‘ポートワイン’、ロドレイア、斑入りユズリハ、アセビ、ビバーナム、コハウチハカエデ、ニシキギ、山椒など。
ましてこちらの庭は勝手口側と言え、町の中心に向かう第2の玄関口でも有ります。
そうであれば、当然ながらそれなりのしつらえがあって然るべきで…
できる限りお洒落に、かつローメンテナンスで機能的な庭に仕上がったと思っています。
次回はこの庭が夏を迎えて緑を深めた様子をお伝えしたいと思います。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/