冬の西芳寺
テーマ:ガーデン
2011/02/15 06:10
この1月、娘の冬休みを使って再び京都を訪ねました。
2泊3日の慌ただしい旅でしたが、まだ雪の残る修学院離宮、仙洞御所と京都御所、桂離宮、永観堂から法然院に至る哲学の道、仁和寺の大伽藍と、厳しい寒さの中、古都の冬を満喫しました。
どの史跡も素晴らしかった中、それでも圧巻は西芳寺だったと思います。
花の季節でも、最も美しい紅葉の時期でもなく、たしかに冬の庭園は淋しいと思いながら巡って来ただけに、西芳寺庭園の鮮やかな美しさはとても新鮮な驚きでした。
もともと西山のこの地は水の豊かなところ。
日本の冬の、あの乾いた風の影響さえ受けなければ、苔の緑はかくも鮮やかなのですね。
そうすればここには冬の枯れ木立は無く、あるのは豊かな緑と水面の輝き、そしてかすかなセンリョウやマンリョウの実の、朱ばかりです。
いやむしろ、西芳寺庭園の真価はこの冬にこそ発揮されるのではないかとさえ、感じ入ってしまいました。
ね、ほら、分かりますか?
光が庭のずっと奥まで届いています。
冬の角度の低い光線だからそれは遠くまで届き、夏のように強烈な光が乱反射するのでなく、まっすぐな光線はくっきりとした影を産み出すのです。
明暗のコントラストが景色に奥行きを与えます。
そして、紅葉を散らした落葉樹のおかげで随所に明るい空間が生まれます。
その不思議さ。
何とも言えぬ美しさに酔いしれました。
そして、苔と石たちのコラボレーションの妙。
忘れてはいけません。
この西芳寺庭園は一時期忘れ去られてすっかり苔に覆われてしまう以前、池泉回遊式庭園と枯山水の、ふたつの
庭園から構成されていたのでした。
上段の枯山水もすっかり苔の中に埋もれてしまった訳ですが、だからこそ生まれた景色がここにあります。
石と苔と赤い実が織りなす様々なバリエーション。
さらに飛び石、というより延段…
その幾何学的な意匠が、苔の庭に産み落とした思わぬモダニズム。
とても面白いと思いました。
冬の京都。
本当に身の凍る寒さでしたが、心から楽しむことが出来ました。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
2泊3日の慌ただしい旅でしたが、まだ雪の残る修学院離宮、仙洞御所と京都御所、桂離宮、永観堂から法然院に至る哲学の道、仁和寺の大伽藍と、厳しい寒さの中、古都の冬を満喫しました。
どの史跡も素晴らしかった中、それでも圧巻は西芳寺だったと思います。
花の季節でも、最も美しい紅葉の時期でもなく、たしかに冬の庭園は淋しいと思いながら巡って来ただけに、西芳寺庭園の鮮やかな美しさはとても新鮮な驚きでした。
もともと西山のこの地は水の豊かなところ。
日本の冬の、あの乾いた風の影響さえ受けなければ、苔の緑はかくも鮮やかなのですね。
そうすればここには冬の枯れ木立は無く、あるのは豊かな緑と水面の輝き、そしてかすかなセンリョウやマンリョウの実の、朱ばかりです。
いやむしろ、西芳寺庭園の真価はこの冬にこそ発揮されるのではないかとさえ、感じ入ってしまいました。
ね、ほら、分かりますか?
光が庭のずっと奥まで届いています。
冬の角度の低い光線だからそれは遠くまで届き、夏のように強烈な光が乱反射するのでなく、まっすぐな光線はくっきりとした影を産み出すのです。
明暗のコントラストが景色に奥行きを与えます。
そして、紅葉を散らした落葉樹のおかげで随所に明るい空間が生まれます。
その不思議さ。
何とも言えぬ美しさに酔いしれました。
そして、苔と石たちのコラボレーションの妙。
忘れてはいけません。
この西芳寺庭園は一時期忘れ去られてすっかり苔に覆われてしまう以前、池泉回遊式庭園と枯山水の、ふたつの
庭園から構成されていたのでした。
上段の枯山水もすっかり苔の中に埋もれてしまった訳ですが、だからこそ生まれた景色がここにあります。
石と苔と赤い実が織りなす様々なバリエーション。
さらに飛び石、というより延段…
その幾何学的な意匠が、苔の庭に産み落とした思わぬモダニズム。
とても面白いと思いました。
冬の京都。
本当に身の凍る寒さでしたが、心から楽しむことが出来ました。
よろしければ、ホームページもご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
ガーデンメンテナンスと軽井沢レイクガーデン
テーマ:ガーデン
2010/06/08 06:48
また少しブログの更新をサボってしまいました。
以前のことがあったので、心配してメールを下さった方もありましたが、今回は単純に忙しかったせいです。
しばらくの間、楽しい仕事に夢中になっておりました。
とても幸せで贅沢なことです。
申し訳ありません。
さて、仕事がひと段落して次の仕事までの間に、数軒のメンテナンスのご依頼を頂いています。
昨日は秩父市のO様邸の庭。
わたしが初めて本格的に取り組んだガーデンで、2003年から翌年にかけて設計・製作し、以後も手を加えさせて頂いたり、年に数度のメンテナンスをさせて頂いてきました。
それだけでなく、家族ぐるみのおつき合いも長く、医療関係のお仕事をされるご夫婦にはわたしの父親の心配もして頂き、子供同士も仲が良く、特にわたしが家内を亡くした時には本当に親身になって世話を焼いてくださいました。
それだけに手を抜けないメンテナンスなのですが…
今年2度目のメンテナンスをこの時期にお約束しながら、少しずれ込んでしまいました。
先に手入れを終えていたフロントはややラフな感じながらそれなりに風も抜け、ちょうど良い具合。
オリーブの下のバレリーナが見頃を迎えていました。
昨年手入れを怠ってかなり徒長気味のカシワバアジサイ…
すでに花の見頃が近づいてしまえば手の出しようがありませんが、この奔放さ加減は嫌いではありません。
もちろん株が弱るといけないので、今年の秋は大胆に切り戻しましょう。
ローズガーデンのアーチ・ゲートの足元もセダムに覆われて、うかつに歩けないほどになりました。
そして、ややピークを越えたバラたちもまだまだ美しい…
ここ秩父はいつになく朝夕が涼しく、乾いた風も吹くせいでしょうか、今年は長くバラが楽しめます。
しばし、そんなバラたちを眺めながら奥さまとメンテナンスの打合せをするうち、いつしか話は家族や健康や残りの人生の話題に及び、再びガーデンの話題に戻ったときには、そういえば軽井沢はそろそろバラの見頃だったかな、という方向に…
間もなく梅雨だし、仕事も忙しくなるし、そうなるとなかなか行けないし、何と言っても今日はとても天気が良いし…
なんだか今行かないと絶対後悔するのではという強迫観念に、二人同時にとらわれてしまいました。
そういえば、ついさっき、
そろそろお互い歳だし、やりたいことをするに当たっていちいち言い訳をするのはよそうではないか!
と話したばかり。
う~ん。
しばしの葛藤の末、メンテナンスは延期することにしました。
そして一路、軽井沢…
その気になれば確かに1時間半の距離ですので。
で、軽井沢レイクガーデンです。
が、期待に反してバラの開花はまだまだ先の様子でした。
それでも併設されたレストランで食べたリーズナブルで美味しいランチに元気を取り戻し、ガーデンへ。
昨年訪れたときより、当たり前ですがどのバラも株がすっかり充実してたくましくなり、
とても健康でいきいきとしていることに驚かされました。
なによりも真っ赤な若いシュートの美しいこと!
そして、新たに植え足されたと思われるアカンサス・モリスの膨大な量!
これはきっとバラのシーズンの彩りとして、イエローのフレームが欲しかったのだろうねと、
そんな話をしながら思いのほか楽しい見学が出来ました。
他のお客さんも少なくてゆっくり見られたし…
なぜかとても満足。
いくらか宿根草の花も咲いて色彩はそれなりにあったのですが、それでもここ数年でバラを見せるガーデンとしてマイナーチェンジした「軽井沢レイクガーデン」。
バラ以外のシーズンをどう見せるかが今後も大きな課題だろうとは思いますが、逆に言えば開花前のバラをこれほどたくさん、これだけ美しく見せて楽しませてくれるのも、他にはなかなか無いかもしれません。
併設されたホテル・ルゼの庭も、バラを多用したからこそ開花前にはこうしてとてもシックな風情を味わうことも出来ます。
…などと、まだバラの咲いていないガーデンを、こんな風に心から楽しむ客も少ないだろうと話しながら、後にした軽井沢でした。
もちろん、花の見頃の再訪をひそかに誓いながら!
(今月下旬から7月上旬が見頃となるみたいです)
ホームページもよろしければご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
以前のことがあったので、心配してメールを下さった方もありましたが、今回は単純に忙しかったせいです。
しばらくの間、楽しい仕事に夢中になっておりました。
とても幸せで贅沢なことです。
申し訳ありません。
さて、仕事がひと段落して次の仕事までの間に、数軒のメンテナンスのご依頼を頂いています。
昨日は秩父市のO様邸の庭。
わたしが初めて本格的に取り組んだガーデンで、2003年から翌年にかけて設計・製作し、以後も手を加えさせて頂いたり、年に数度のメンテナンスをさせて頂いてきました。
それだけでなく、家族ぐるみのおつき合いも長く、医療関係のお仕事をされるご夫婦にはわたしの父親の心配もして頂き、子供同士も仲が良く、特にわたしが家内を亡くした時には本当に親身になって世話を焼いてくださいました。
それだけに手を抜けないメンテナンスなのですが…
今年2度目のメンテナンスをこの時期にお約束しながら、少しずれ込んでしまいました。
先に手入れを終えていたフロントはややラフな感じながらそれなりに風も抜け、ちょうど良い具合。
オリーブの下のバレリーナが見頃を迎えていました。
昨年手入れを怠ってかなり徒長気味のカシワバアジサイ…
すでに花の見頃が近づいてしまえば手の出しようがありませんが、この奔放さ加減は嫌いではありません。
もちろん株が弱るといけないので、今年の秋は大胆に切り戻しましょう。
ローズガーデンのアーチ・ゲートの足元もセダムに覆われて、うかつに歩けないほどになりました。
そして、ややピークを越えたバラたちもまだまだ美しい…
ここ秩父はいつになく朝夕が涼しく、乾いた風も吹くせいでしょうか、今年は長くバラが楽しめます。
しばし、そんなバラたちを眺めながら奥さまとメンテナンスの打合せをするうち、いつしか話は家族や健康や残りの人生の話題に及び、再びガーデンの話題に戻ったときには、そういえば軽井沢はそろそろバラの見頃だったかな、という方向に…
間もなく梅雨だし、仕事も忙しくなるし、そうなるとなかなか行けないし、何と言っても今日はとても天気が良いし…
なんだか今行かないと絶対後悔するのではという強迫観念に、二人同時にとらわれてしまいました。
そういえば、ついさっき、
そろそろお互い歳だし、やりたいことをするに当たっていちいち言い訳をするのはよそうではないか!
と話したばかり。
う~ん。
しばしの葛藤の末、メンテナンスは延期することにしました。
そして一路、軽井沢…
その気になれば確かに1時間半の距離ですので。
で、軽井沢レイクガーデンです。
が、期待に反してバラの開花はまだまだ先の様子でした。
それでも併設されたレストランで食べたリーズナブルで美味しいランチに元気を取り戻し、ガーデンへ。
昨年訪れたときより、当たり前ですがどのバラも株がすっかり充実してたくましくなり、
とても健康でいきいきとしていることに驚かされました。
なによりも真っ赤な若いシュートの美しいこと!
そして、新たに植え足されたと思われるアカンサス・モリスの膨大な量!
これはきっとバラのシーズンの彩りとして、イエローのフレームが欲しかったのだろうねと、
そんな話をしながら思いのほか楽しい見学が出来ました。
他のお客さんも少なくてゆっくり見られたし…
なぜかとても満足。
いくらか宿根草の花も咲いて色彩はそれなりにあったのですが、それでもここ数年でバラを見せるガーデンとしてマイナーチェンジした「軽井沢レイクガーデン」。
バラ以外のシーズンをどう見せるかが今後も大きな課題だろうとは思いますが、逆に言えば開花前のバラをこれほどたくさん、これだけ美しく見せて楽しませてくれるのも、他にはなかなか無いかもしれません。
併設されたホテル・ルゼの庭も、バラを多用したからこそ開花前にはこうしてとてもシックな風情を味わうことも出来ます。
…などと、まだバラの咲いていないガーデンを、こんな風に心から楽しむ客も少ないだろうと話しながら、後にした軽井沢でした。
もちろん、花の見頃の再訪をひそかに誓いながら!
(今月下旬から7月上旬が見頃となるみたいです)
ホームページもよろしければご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
早春の京都 Ⅱ
テーマ:ガーデン
2010/05/01 05:55
続いては、金閣寺の庭園。
昨日ご紹介した銀閣寺と違ってやや乾いた風情は、銀閣寺が東山に抱かれた地形的な理由によるものか、単に天候の差でしたでしょうか…
園路の起伏も距離も、ひどくおとなしい金閣寺の散策はすでに閉園間際の頃でした。
そして、今回わたしが楽しみにしていたのが、重森三玲庭園美術館。
昨年夏には、東福寺の方丈庭園、竜吟庵の庭と、この昭和の作庭家の作品を2箇所見る機会を得ました。
やはり東山にあるこの庭園美術館は、三玲の旧宅を公開したもの。
完全予約制です。
これは江戸期の建物に三玲みずから設計した茶室を増築し、庭園をつくったそうです。
ご説明いただいた書院からの眺め…
石の組み方に独特のものがあって、昨年の東福寺以来、ファンになりました。
おそらくはわたし自身、けっして作ることのない庭ではありますが、このモダンと伝統のきわどいバランスの妙には、いつもドキドキさせられます。
それでいて眺めていてずっと飽きがこないのは、それだけ空間造形に隙がなく、上質なのだろうと思います。
こちらは様々に意匠が凝らされた茶室の内部。
建物の設計もまた、庭園とほとんど同じスタイルで貫かれていると感じました。
茶室からの庭の眺めです。
眺める角度でいろいろと表情を変化させるのは、やはり石庭の魅力ですね。
さて、今回最終日は伏見から宇治へとまわり、娘の希望では伏見の寺田屋(折りからの竜馬ブームで、ひどい混雑でした)、宇治の平等院、源氏物語ミュージアムを訪ねましたが、わたしのお目当ては伏見の御香宮にある小堀遠州の庭でした。
御香宮は、鳥羽伏見の戦いで新選組を主力とする幕府軍が布陣した伏見奉行所に相対する形で、官軍が陣営を構えた場所として知られています。
この日も宮参りの親子連れでとても賑わいでいましたが、その社務所の裏に江戸初期、伏見奉行として着任した小堀遠州が作庭した庭園のあることはあまり知られておりません。
お世辞にも広い庭とは言えませんが、少なくともその日はわれわれ親子の他に訪れる人もなく、静かでひっそりとした時間を過ごすことが出来ました。
今年の夏も出来ることなら早々に予定を入れて(かなり強引にやらないと無理ですので)、再び京都を訪ねたいと思っています。
ホームページもよろしければご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/
昨日ご紹介した銀閣寺と違ってやや乾いた風情は、銀閣寺が東山に抱かれた地形的な理由によるものか、単に天候の差でしたでしょうか…
園路の起伏も距離も、ひどくおとなしい金閣寺の散策はすでに閉園間際の頃でした。
そして、今回わたしが楽しみにしていたのが、重森三玲庭園美術館。
昨年夏には、東福寺の方丈庭園、竜吟庵の庭と、この昭和の作庭家の作品を2箇所見る機会を得ました。
やはり東山にあるこの庭園美術館は、三玲の旧宅を公開したもの。
完全予約制です。
これは江戸期の建物に三玲みずから設計した茶室を増築し、庭園をつくったそうです。
ご説明いただいた書院からの眺め…
石の組み方に独特のものがあって、昨年の東福寺以来、ファンになりました。
おそらくはわたし自身、けっして作ることのない庭ではありますが、このモダンと伝統のきわどいバランスの妙には、いつもドキドキさせられます。
それでいて眺めていてずっと飽きがこないのは、それだけ空間造形に隙がなく、上質なのだろうと思います。
こちらは様々に意匠が凝らされた茶室の内部。
建物の設計もまた、庭園とほとんど同じスタイルで貫かれていると感じました。
茶室からの庭の眺めです。
眺める角度でいろいろと表情を変化させるのは、やはり石庭の魅力ですね。
さて、今回最終日は伏見から宇治へとまわり、娘の希望では伏見の寺田屋(折りからの竜馬ブームで、ひどい混雑でした)、宇治の平等院、源氏物語ミュージアムを訪ねましたが、わたしのお目当ては伏見の御香宮にある小堀遠州の庭でした。
御香宮は、鳥羽伏見の戦いで新選組を主力とする幕府軍が布陣した伏見奉行所に相対する形で、官軍が陣営を構えた場所として知られています。
この日も宮参りの親子連れでとても賑わいでいましたが、その社務所の裏に江戸初期、伏見奉行として着任した小堀遠州が作庭した庭園のあることはあまり知られておりません。
お世辞にも広い庭とは言えませんが、少なくともその日はわれわれ親子の他に訪れる人もなく、静かでひっそりとした時間を過ごすことが出来ました。
今年の夏も出来ることなら早々に予定を入れて(かなり強引にやらないと無理ですので)、再び京都を訪ねたいと思っています。
ホームページもよろしければご覧下さい。
http://www.yui-garden.com/