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田んぼの生き物調査 東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト その5 T3 石巻市北上地区 6/30

テーマ:東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト
  三度目の調査は石巻市の北上川左岸側に拡がる水田群から。

 北上川は今回の震災で津波がはるか50キロまで遡ったと聞きます。特に河口から13キロまでに堤防の決壊が相次ぎ、その中でも右岸須賀地区は広範囲にわたって水田地帯が水没し、今でもそのほとんどが干潟のままとなっているそうです。残念なことに児童74名が犠牲になった大川小学校もこの場所に位置します。

01 石巻北上川


 上流の石巻市街地側から調査地に向かう途中の写真。
 道路は左岸側の堤防の上を走りますが、復旧されて真新しい土手が痛々しい。

19 初日調査地


 これが今回の調査地です。同じ北上地区に堤防を越えた津波に浸った水田と、かろうじて被災を免れた水田とが混在しています。
 そのうち午前は被災しなかった対照水田の調査。

03 北上地区対照田


 今回は東北新幹線の古川駅が集合場所で、そこから1時間半ほどを3台の車に分乗して移動しました。天候はくもり。時々強い日差しも射しましたが風があって快適な一日でした。

02 調査開始


 いつもどおり向井助教から調査方法のレクチャーを受けて調査開始。
 昨夜は準備でほとんど眠っていないという向井さんの眼は赤く充血していて見るからにお疲れの様子ですが、これもいつもどおりの元気さで分かりやすい説明をしてくれました。

 
04 対照田の様子


 
05 調査の様子


 前回の仙台今泉地区の調査ではうじゃうじゃ居たタマカイエビがすっかり鳴りをひそめて、

23 カイエビ


 こちらでfは、同じ仲間でも形がやや楕円のカイエビが主役でした。

08 チビミズムシ


 他にはチビミズムシや、

07 ヒメモノアラガイ


ヒメモノアラガイなどを見つけました。

09 ソーティング作業


 ここでも和気あいあいと、泥の中から生き物を見つけ出して分類するソーティング作業から、

10 同定作業


 資料を片手にその種類を特定していく同定作業を通じて、初対面の一般調査員はすぐに打ち解けて会話を交わすようになり、大学スタッフの皆さんとも親密になっていきます。今回の調査では東北大の学生さんが3名調査員として加わってくれました。

06 調査票 北上1A


 この対照水田から発見された種数は全部で35。わたしはそのうち14種を見つけましたが、貝(特に二枚貝?)を専門とする斉藤君は何と21種を見つけました。
 調査場所がそれぞれ違うとは言え、捕獲した中に身落としたり細かな同定が出来なかったりすることがきっとあって、それがこの差になっているのかもしれませんね。わたしなどいい加減細かい生き物の見分けがつかなくなっていますから…


11 北上地区被災田


 午後は少しばかり場所を移動した被災田を調査しました。

 ここでも主役はカイエビで、

12 カイエビとヒメアメンボ


 ヒメアメンボの数も多くて、一見生命の気配が少なく感じられた田んぼからは思いのほかたくさんの生き物が見つかりました。

 
14 ミズアブ


 ミズアブとか、

13 ヒメゲンゴロウ幼虫とフタバカゲロウ


 これはよく似ているのですが、尾が2つに分かれている左側が確かヒメゲンゴロウの幼虫で、右がフタバカゲロウの幼虫だと思います。比較するためにうっかり同じ水槽に入れて、フタバカゲロウたちはかわいそうにヒメゲンゴロウの餌になってしまいました。

15 調査票 北上2A


 こんな感じ。
 やはり対照水田よりも発見種数がやや少なく、総数で29、わたしが13種でした。

 午前午後を通じて発見率100パーセントがカイエビ。
 午後の被災田にユスリカの幼虫が多く居たのも特徴的でした。
 被災した田んぼのほうは確かに生き物がやや少ないものの戻ってくる時間はそう長くなく、潮を被ったことが生き物の生息にそれほど大きな影響を与えていないことが分かります。ただ、やはり飛翔などの移動手段を持たず、時間をかけて育っていく貝類などでは明らかに生息数に差が出るようです。


 この日の宿泊地は調査場所からそう離れていない追分温泉といところでして、ここは石巻と北の南三陸町を結ぶ峠に在って、被災された方や支援に当たられた方たちの便宜を尽くしたと聞きました。

16 追分温泉


 何よりも温泉は有り難く…

 こうした写真を掲載するのは本意ではありませんが、この調査に少しでも多くの方が参加してくれるようスタッフの皆さんからも広報活動を仰せつかっていますので…

17 追分温泉の夕食


 こんな夕食が付きます。

 前回同様、スタッフの皆さんが交代で行ってくれる夜のレクチャーも、常に新しいテーマを提出してくれて3回参加させて頂いたわたしにとっても毎回とても楽しみな時間になっています。

 今回はこれまでの調査結果を踏まえた報告もあって、被災した水田の復興に関していろいろと新しい研究成果が生まれつつあることが、実感としてリアルタイムで伝わって来るのでした。

18 レクチャー



 次回も北上川左岸、女川地区の調査ですが、その前に番外編として追分温泉周辺の沢の生き物調査の様子もお伝えします。




 




















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田んぼの生き物調査 東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト T2 その4 七ヶ浜町吉田浜地区 6/17

テーマ:東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト
 朝方まで降り続いた雨もやんで、二日目は徐々に天候も回復していきました。
 この日の調査は七ヶ浜町。
 仙台から北東部の、松島湾に突き出した小さな半島の町です。起伏に富んだ地形で、その低い部分のすべてがかなり内陸まで津波の被害を受けたそうです。

01 七ヶ浜町君ヶ丘公園


 町の水田の99%がいまだに回復の見込みが立たず、わずか1%の田んぼだけで今年は作付を行いました。その数、枚数にして5枚。
 水の流れの少ない半島で、しかも多くの田んぼが低い位置にあるため、除塩に必要な水が十分に確保できないというでした。

02 吉田浜の田んぼ


 それが今回の調査地、吉田浜地区です。
 耕作地としてこのように耕起されている田んぼだけではなく…

 
13 被災水田


 かろうじて瓦礫の撤去だけは終えたという田んぼもまた、多くありました。

 今回の調査は、したがって5枚残った対照水田と、被災水田の方はこうした場所の水たまりからサンプリングを行うことになりました。

03 テント設営


 まずはテントの設営から。
 雨があがってさわやかな風が吹いていました。

04 テント設営


 この場所。

 津波の被害を免れただけあって、谷が深くまで山の中に入り込んでいます。

 
06 テント設営地


 気持ち良い風と鳴き交わす小鳥たちの声だけでなく、さらに多くの生命の気配に満ちた場所でした。

「いい処ですね」
「はい。いい処でしょ」
 決まって向井助教と交わす言葉には、いつも確かな感触があります。

 多くの生命が溢れる場所には濃密な空気や、植物たちの匂いが満ちていて、そこに降り立っただけでそうだと分かる何ものかが存在していて…

 そこがある種のサンクチュアリであることを教えてくれるのでした。

 この被災を免れた5枚の田んぼが、それでも今年作付できたわけが有って、それがこの、

07 設営地上手の溜め池


 豊かに水をたたえた溜め池なのでした。

 それがこのテント設営地のすぐ上に有って、それもまた生命たちを育む大きな要因だったのだと知らされました。

05 コメツブツメクサ


 設営地の足元のコメツブツメクサ。
 今わたしがとても気に入っている花です。


 さて、それでは調査開始。

08 調査開始


 まずは被災しなかった対照水田の泥採取から。

09 泥の採取


 ここだけを見ればとても美しい景色で、ここにいると津波がついそこまで押し寄せたなんて信じられないほどです。

11 対照水田


 昼休みにふらりと下っていった際に、一面に広がっていた田んぼたち。
 しっかりと耕起されて、地力回復のためか大豆の種が播かれていたものもありました。

12 再開準備


 それらが折から戻ってきた日差しを受けて、昨夜からの雨を天に昇らせていました。

 午後からは被災水田の調査。

14 被災水田


 田んぼが要するに湿地であることを教えてくれています。
 昨夜からの雨が、それでもこの場所に生き物たちの棲む場所を生み出していました。

15 被災水田A


 これがわたしの担当した被災水田A。
 まさかこの場所に生き物たちが生息するとは、少なくともそんなに多くの種が集まっているとは、とても思えませんでした。

 こちらは例外的に調査対象としたすぐ近くの泉。

16 泉


 これはおそらく生態系回復のシーズ(種)ですよ。

 そう、占部教授がおっしゃっていたのが驚きでしたが、その時のわたしはあまりに痛々しい被災水田の姿にかなり心が折れていたのでしょう。この場所からサンプリングした担当の方は後ほど、最後の最後までソーティング作業に追われることになりました。

17 泉


 ソーティング開始。

18 ソーティング


 つづく同定作業。

 なんだかね~。

 生き物たちが次々登場するとついつい夢中になって、気がつけば自分のサンプルはほとんど写真に残すことなく保存を終えて、残りは田んぼに帰して、それから初めて写真を撮りそこなったことを思い出すのでした。
 調査中はブログのことなんて全く頭になくなりますから。

 そんなわけで、以下は他の方のサンプルです。もちろん、この中にはわたしも見つけたものも多く含まれます。

20 ヒメゲンゴロウ


 ヒメゲンゴロウ。

22 コガムシ


 それと少し似ているけど、泳ぎ方が全く違うコガムシ。

21 コオイムシ


 なんとも懐かしい、コオイムシ。

23 ミズアブ


 うっかりすると植物と間違えそうなミズアブ。でもこれは、そのうちでもとてもアクティブな仲間たち。

24 ヒラマキミズマイマイ


 貝です。ヒラマキミズマイマイ。
 もしかしたらヒラマキガイモドキかも。(同定には裏返す必要があるのでした)

25 アマガエル


 オタマジャクシからカエルへの変態の最終段階。アマガエルか?
 この時期の田んぼでは、ほかにシュレーゲルアオガエルとニホンアカガエルとトウキョウダルマガエルが見つかります。
 下の区画の赤いうにょうにょはユスリカの幼虫のうち有機物食のユスリカ亜科、かな。(早口言葉並みですね)

26 ヒメゲンゴロウ幼虫


 で、このものすごいのがヒメゲンゴロウの幼虫。平気で共食いしそうな連中。
 その下が、なんだか優雅なマツモムシです。

27 調査結果発表


 これらがすべて被災田から見つかったもの。
 さきほどの泉から出てきたものも多いですが、実はわたしのあの田んぼとはもはや言えなかった「湿地」からもかなりの種数を発見したのでした。

 調査結果報告によれば、全体の発見種数が午前中の対照水田で40種。前日の今泉の対照水田では15種でしたから、いかにこの場所が生き物の宝庫かが分かるというものです。
 しかし午後の被災水田はさらに多くて、42種。例外的に泉や水路も調査したとはいえ、その豊かさには驚かされました。


 この七ヶ浜町での調査によって、わたしの生態系に対する認識は大きく変わりました。

 生き物たちによる生態系回復のスピードは思いのほか早いのではないか。
 その生き物たちを養うのは、その場の水質や土質、気温や湿度や風の流れや日当たりとかいろいろな条件はあるだろうけれど、結局のところもっと巨大な空間そのものではないのか。
 空間の質というのが適切かどうか…
 だから少なくともわれわれはその空間の質を高める方策をこそ、学ばなければならないのだと。

 それは古いイギリスのガーデナーたちによって唱えられる、
「その地の霊の声に耳を傾けよ」
 という言葉にも通じ、
「良い霊(気)」の集まる場所にこそ良質なガーデンができる
 という考え方に一致するものです。

28 T2集合写真


 8月の下旬に、わたしはまたこの七ヶ浜に戻ってくる予定です。

 その時、またどれだけの新しい発見ができるか。
 どんな新しい生き物たちと出会えるか。
 この空間の息遣いに感応できる豊かな感性を、それまで持続して持ち続けることができるのか。
 そしてまた、どんな人たちと出会う事ができるのか。

 いまからとても楽しみなのです。



















































田んぼの生き物調査 東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト その3 T2 勉強会 6/16

テーマ:東日本グリーン復興モニタリングプロジェクト
 
 時間が足早に駆け去っていく音が耳に聞こえるようです。
 バタバタバタバタ…走る

 おそらくはその速度がそれほど速くなっている訳ではなく、
 ついて行くわたしの歩行速度の方が遅くなっているだけなのでしょうが…

 先日、この回のさらにその次、石巻での調査が終わりました。
 現在はさらにその次の調査の準備中。
 このままいつまでたっても最新の報告が出来ないという…まるで、ブログの体をなさないものになってしまいそうで、それが怖いです。

 さて。

 前回に引き続く6月16日のこと。
 多賀城のホテルに戻って入浴と夕食の後、会場を研修室に移して勉強会が開催されました。
 大学スタッフのみなさんは本当にお疲れのところ、風呂に入る間も惜しんでデータをまとめられていたりしていて…本当に頭が下がる思いで参加させてもらいました。
 (その割にしっかりビールとか頂いてしまっていましたが…あ、ここだけのハナシ)

 ここでの要点は3つ。

 今回の調査の意義とそれが市民参加型で行われることの意味。
 田んぼの生き物たちの生きざま、暮らしぶりの実態。
 今回の調査結果とそこから見えてきたもの。

 
01 占部教授と向井助教


 占部教授による最初のレクチャーはとても興味深く、内容の深いものでした。

 
03 海と田んぼからのグリーン復興宣言


 「海と田んぼからのグリーン復興宣言」

 (以下、抜粋です)

 今回の被災地の多くはこうした生態系の恵みを最大限に利用する生活をしてきた地域です。

 今、できるだけ早い復興は共通した願いですが、環境への影響評価を行うことなく、早急に山や森を削り、川や海、そして田んぼの生物多様性や生態系への配慮のない造成は、生態系サービスを低下させて、被災地以外にも多くの二次的な災害を生み出しかねません。

 …この地の農林水産業が享受すべき将来の生態系からの恵みを見据え、…「グリーン復興」を行うことで、…より着実に、力強く復興すると信じます。

 そして、…ひとりひとりの市民として、その計画から積極的に関わり、一緒に支えていくことを宣言いたします。


 この宣言を受けてこれまでに行われてきた活動。

 津波被害からの田んぼの復元。
 瓦礫の撤去と除塩。瓦礫撤去は田んぼの層構造を傷めないように人力で行ったそうです。

 産業復興支援。
「東北サイコウ銀行プロジェクト」による「福幸米」の販売により、農業再開資金を捻出したそうです。

 そして、生態系モニタリング。
 今回の活動では、それが田んぼと干潟、松島湾島嶼において展開されています。

04 なぜ生物モニタリングが必要か


 生態系を調査することで、津波被害の実態を把握し、被害から免れた自然を生態系再生の種(シーズ)としてその活用を図り、地域再生の突破口としたいという熱い思いがここでは語られていました。

05 すべての生態系をモニタリングすることは不可能1


 でも、それは長期にわたって広範な調査が必要とされるに関わらず、人的資源も経済的資源も不足しているという現実があります。たしかに被災地全体で取り組まなければならない課題はあまりにも多く、こうした個々の活動に対してそれがどんなに意義深いと分かっていても、なかなか振り分けるのは難しいのでしょう。

 だから、市民参加型。

 それにはまた別の意味もあります。

 どれだけ研究者ががんばってその成果をまとめても、それが公のものになるまでにはかなりの年月を要します。かなりの年月を要しても、最後まで公開されない成果もあります。
 だからわれわれ市民が、その調査に最初から関わって、しかもそのつどその研究成果に触れることで、それこそ口コミ的に情報が伝達されていく…
 と同時にそこで見つけ出した一定の知見にその場で評価を与え(学会などという面倒くさいものの判断を待つことなく)、共通の認識としての合意をその場で生み出していける。
 そうした意義があるのだそうです。

00 レクチャー風景


 では、はたして全くの素人の調査がどれだけの成果を生み出せるというのか…
 これは当初からわたしが抱いていた疑問でした。
 研究者の皆さんが一般参加者の指導と世話に追われ、慣れない一般市民の面倒を見ている間に、研究者だけで調査を進めた方がはるかに信憑性のあるデータが集まるのではないか?
 グリーンツーリズムの意義はわかるし、実際参加してとても楽しいけれど、それはやはり所詮参加者の満足を優先した、研究者にとっては二義的な活動なのではないか?
 という風に。

 その疑問にも占部教授は力強くその意義を語ってくださいました。

 この12名が1日6枚、2日で12枚の田んぼに散ってそれぞれ違う技能と条件でサンプリングを行ったデータは、研究者が数日を掛けて行う調査に十分匹敵するだけの有効性がある。
 また、そのデータを使いこなすことこそが研究者の使命なのだ、と。
 そして、市民参加型調査の「成果の迅速な普及」と「合意形成の基盤作り」は、研究者だけではできないのだ、と。

 水生生物の中には3年かけて成熟していくものがあり、その過程を3世代に渡って追わないと十分な研究成果を生み出せない。だからこの調査には10年の時間が必要、ともおっしゃっていました。

 …おそらくその時間軸は、これから復興という大事業に取り組んでいくこの地域の人々の持つ時間軸に、等しいのだと思います。


 占部教授のレクチャーはさらに進み、環境の安定性と撹乱(今回の津波がそれです)、種の絶滅の仕組み、捕食と被食防衛、攻撃防衛など、生き物の生態に関するとても面白いお話を伺うことができました。

 そして、

09 新「三陸国立公園(仮)」を軸にした地域の復興


 新「三陸復興国立公園」構想と、そこからの地域復興に話は及びます。
 今回の田んぼのモニタリングもその一環として明確に位置付けられているということでした。

08 水田モニタリング


 今回の調査区域はこのとおり。初回が東松島の鳴瀬、小野、矢本地区。今回の2回目が仙台市近辺の若林区今泉地区と七ヶ浜町吉田浜地区。そして3回目が(先日の6/30、7/1に行ってきたのですが)石巻の北上川左岸地区です。田んぼが夏に一度水を抜く「中干し」期間を開けて、8月に再度それぞれの田んぼの調査を行う予定だそうです。

 そして田んぼの生き物についてはそのエキスパートである向井助教がたくさんの面白いお話を聞かせてくれたのですが…

 できればその話、向井助教の人柄と情熱を感じながら、直に聞いてもらいたいと思います。
 大阪の水田で7000を超える水生生物にマーキングして放し、3年間かけてその追跡調査をした話などはっきり言って…圧巻です。

 
11 田んぼの特徴


 田んぼとは…
 「あぜで区切られた、水を溜めることのできる農地」であり、
 
 人の手で強度に管理された一時的な「湿地」なのだそうです。

10 田んぼの水暦


 この人工的に1年サイクルの環境変化が繰り返され、代掻きや潅水といった攪拌が繰り返される水田という湿地を選んで、そこで暮らす生き物たち。
 向井助教だけでなく、われわれもその生態には思わずのめりこみたくなりそうです。…わたしだけかな?


 そして、最後にその日の調査結果をまとめた占部研究室の鈴木さんからの報告がありました。

16 調査結果報告担当の鈴木さん


 この前の報告でも書いたとおり、午前中の対照水田(被災しなかったけれど比較のために調査する田んぼ)よりも被災した田んぼのほうが、生き物の種類が多かったという結果です。

17 捕獲した種数


 前回の東松島では被災田の方の種数が少なかったですから、2回目にして逆の結果が出たことになる訳で…
 まだまだデータを集めなければ分からないと言え、いろいろ考えさせられて楽しいですね。
 対照水田のドジョウ、被災水田のタマカイエビ…
 被災水田に成虫が飛翔して移動できる生き物が多いのは分かるのですが、タマカイエビは違います。
 聞けばカイエビやタマカイエビの仲間は耐久卵という、乾燥に強く環境が改善されるまで長期間にわたって休眠できる卵によって孵化するのだということでした。

 だから、津波と、そのあとの乾燥に耐えた後、今一斉に孵化したのでしょうか?
 そう言えば先日の石巻の水田ではうじゃうじゃとカイエビが居て、しきりに交尾を繰り返していました。
 
 …何かね、生命の持つダイナミズムみたいなものを感じさせられた瞬間でした。


 (さらに続きます! 2日目の七ヶ浜の調査は…とても楽しかったです)

 

 

















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向井康治

ガーデン工房 結 -YUI-は、埼玉を起点に植物を中心に据えたガーデンデザインと設計・施工を仕事とする会社です。
ただし、面白い仕事であれば時には利益も距離感覚も忘れ去る脳天気ぶり。
だから、この仕事にはいつも様々な出会いがあります。人、植物、もの、本、言葉、音楽…。

結 -YUI- はネットワークです。
それは多彩な技術や知識を持った人々が持てる力を共有し合うこと。
人と自然界の美とが満を持して出会うこと。

わたしが文芸、農業、インド、土木、外構、アウトドアと巡ってきた先の到達点は、おそらくそれらみんなの要素を遺憾なく結集することのできる、小宇宙 「ガーデン」でした。

ガーデンデザイナーとして、ガーデナーとして、これまでの、そしてこれから先の「出会い」を余すことなくお伝え出来ればと思います。

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