固有種ニホンイシガメの保全プロジェクト~千葉県君津市~2/16,17

テーマ:自然・生態系
 アースウォッチ・ジャパンの今年最初のプロジェクトに参加しました。

 調査地である君津は「江戸時代より続く伝統的な集落が維持する水田地帯」なのだそうです。そこでは伝統的な用水路の水位調整が為され、そのことで固有種であるニホンイシガメを育んできました。
 今回の調査はかねてからこの場所でニホンイシガメを継続的に調査してきた研究員の皆さんの呼びかけに応じ、2005年に施工された河川の護岸工事と、昨年完成した水田を分断する道路工事による環境改変が、カメたちにどのような影響を与えたか明らかにすることを目的とします。
 仕事を手伝って貰っているSさんに何気なく誘いの言葉を掛けたところ、彼が実はとんでもないカメマニアであることがあきらかになり、もはや迷うことなく調査参加を志願したのでした。

 集合場所の君津駅まで、わが家からはクルマと電車で4時間半。出発は3時半でした。
 東北の調査の時とたいして変わらないというのが驚きです。

01 調査地近くの橋


 これが2005年に開通したという調査地ちかくの橋。K川に掛かる橋です。K川の歴史については昼休み、昼食を食べながらその歴史についてレクチャーを受けました。

 調査チームの構成ですが、ボランティアのわれわれ市民調査員が5名。
 調査の主体となるNPO法人カメネットワークジャパンの皆さん、関連団体や研究機関の皆さんが初日5名、2日目6名。男女比はやや男性が多め、といったところでしょうか?

02 胴長と長手袋装着


 腰まで川に浸かり、泥の中に手を突っ込んでの調査となるため、胴長と長手袋を装着します。
 初日は特に風が強く、しかもそれがとても冷たい風でした。
 ただ、前日までが雨で終了後の月曜日も曇りのち雨の天気でしたから、つかの間の晴れを調査に充てられたのはやはり幸いと言うべきでしょうね。

03 厳寒の川へ


 調査地の川に向かって出発です。
 川に入りさえすれば両岸を土手に囲まれているため、強い風にさらされることは有りませんが、この移動が一番辛かったかもしれません。

04 調査開始地点より下流を臨む


 川に降ります。

05 調査開始地点より上流を臨む


 見ての通りかつての護岸杭が今では朽ち果てています。水田の間を縫う用水の役割を果たす小川ですが、投げ捨てられたゴミも少なくはありません。

06 カメのねぐら?


 冬の今は用水としての役目が無い為水位が下げられ、下がったことで生まれた土手の横手にカメたちは潜り込んで冬を越すのだそうです。

07 調査方法のレクチャー


 それをこのように人海戦術のローラー作戦で、手探りにすべてのカメを捕獲していくというのが、今回の調査です。
 捕獲したカメたちはすべてナンバリングし、測定して大きさや年齢、性別、特徴などを記録して、もとの場所に還していきます。
 固有種のカメたちがほんとうに減少しているのか、外来生物がどの程度侵入しているのか、それがどういった影響を与えているのか、そうしたデータを蓄積して里山の現状を明らかにし、固有種であるニホンイシガメの保全に役立てていくのが、この調査の意義とのこと。

08 調査捕獲開始


 調査開始!

 以後、長手袋をつけて調査に没頭するわたしに写真が撮れる訳が無く…

 それでも時折はこうして、

09 大量捕獲(S氏)


 同行したSさんの収穫をカメラに納める程度の余裕はありました。
 これは2日目の最後の頃ですが、一箇所で8匹という大量捕獲をしたSさんの腕の中です。

 この、

10 ニホンイシガメ(S氏捕獲)


 一番元気なやつがニホンイシガメ。
 聞くのを忘れましたが2歳くらいだったのでしょうか?
 他はすべてクサガメです。

 そう。

 捕獲したほとんどはクサガメで、実はなかなかニホンイシガメを見つけるのは困難なことでした。

11 初日の捕獲(向井)


 これが初日に私が捕獲したすべてです。
 クサガメが5匹。
 Sさんはさすがに優秀で10匹でしたが、それでもやはりクサガメだけ。

 初日は全体でも少なくて28匹。
 うち、ニホンイシガメは1匹だけでした。
 が、そいつが実は、

17 ニホンイシガメ1歳歩く


 とてもやんちゃな1歳児だったのでした。

 かなり、かわいい。

18 ニホンイシガメ1歳測定


 年々数を減らしているように思われるニホンイシガメに、新しい世代が生まれている!

 それがとても喜ばしいことであると、その日さんざん苦労してとうとう一匹も見つけられなかったわたし達には、しみじみ実感として分かるのでした。


 それでも2日目になると一気に捕獲量が増えます。

 先ほどのSさんが発見したように、一箇所にまとまって潜んでいたりして、まとまった量を一気に捕らえることが各所で出来ました。土手に草が生い茂ったり、川の中の堆積物が増したり、カメたちにとって居心地の良い場所が増えてきたせいなのでしょう。わたしもこの、

12 2日目の捕獲 ニホンイシガメ(向井)


 年齢不詳(おそらく7歳か8歳か)の大きなニホンイシガメ1匹を含めて(ついでに外来種のミシシッピアカミミガメ、つまりはミドリガメ1匹も含めて)、17匹を捕獲できました。
 全体でも74匹。うち、ニホンイシガメは5匹です。

 われわれがその中で多くを捕獲できたのは先行して先を進んだからに他なりません。
 研究者の皆さんはわれわれが荒らした後から、それでもかなりの取りこぼしを拾い集められました。さすがと言うよりありません。

 1日分の捕獲を終えると、いったん基地に戻って捕獲したカメたちの計測に入ります。

13 測定


 甲羅の縞を数えて年齢を測定し、ノギスで大きさを測って記録し、

14 撮影


 写真撮影をします。

 その間、部屋の暖かさで目覚めた何匹かは、

16 クサガメ8歳歩く


 元気に歩き出します。

 冬眠中とはいえ川の中の浅いところで眠る彼らは、気温や水温の変化に応じていったん起きては場所を移動させたりするのだそうで、ここで目覚めた彼らも川に戻せばまた、すぐ眠りにつくのだそうです。

15 クサガメ8歳目覚める


 調査はこのあと3月にも行われ、今回の調査の最後の場所から再開して、全長1.5kmの区間をカバーするのだそうです。

 今回の捕獲量はどうも例年の前半調査より多いらしく、そのうちでも新しく発見された若いカメが多かったというのが、なかなか明るい成果だったのだそうです。

 カメたちを川に帰しに行きました。

19 リリース


 この川での調査期間中、かつて調査区間の全域で大量のカメの死体が発見された年が有ったのだそうです。
 生きて発見されたカメからも外傷や欠損が見つかり、どうやら何らかの動物により捕食されたのではないかとい推定が為され、その後の調査でタヌキやアライグマがどうも犯人らしいというところまで、確認されたようです。
 ここ数年の調査では大規模な被害は確認されておらず、以前は見つかったそうした獣の足跡なども今回はわずか一箇所、タヌキらしきもの(犬との判別は難しいのだとか)が見つかっただけで、それもまた何よりのことでした。

20 川に帰る1


 ただ、その後クサガメの数は着実に回復しているなか、ニホンイシガメの数は今回の発見数でも分かるとおり決して増加はしていないのだそうです。2種の交雑も記録されていると言うことで、今後固有種であるニホンイシガメの保全には各機関あげての協力が必要となってくることでしょう。

21 川に帰る2


 幸い、新橋建設に伴う護岸工事や道路工事など人的な環境改変が、カメたちに明確なダメージを与えたというデータは発見されていないようで、今後はやはり今回も発見された外来生物(アライグマもそうですが)であるミシシッピアカミミガメやブラックバス、ここでは未発見ながら周辺では確認されているカミツキガメなどによる影響に注意を払いつつ、速やかに対応していく必要があるのだと思います。

22 川に帰る3


 現在の時点で、おそらく貴重と言える大量の幼い命たちを育てる環境は残されている訳で、そうであるなら今後も彼らを健やかに育てていく責任は、間違いなくわれわれにあるのだと思います。われわれの生きる時代に彼らの生息数が減少していくのだとしたら、それはもう申し開きの出来ないことでしょう。

23 調査結果報告


 昨年の東日本グリーン復興モニタリングプロジェクトもそうでしたが、今回の経験もとても貴重なものでした。
 素敵な研究者の方々と知り合い、その貴重な知見に触れ、温かい人柄にも触れ、加えて魅力的な生き物たちの生態を知ることが出来ました。

 ことしもアースウォッチ・ジャパンは様々な生態系や自然保全に関するプロジェクトを予定しているようです。
 もちろん、東日本グリーン復興モニタリングプロジェクトの田んぼや干潟の調査も…

 どこかでご一緒できれば、嬉しいですね。





 よろしければ、ホームページもご覧下さい。
 http://www.yui-garden.com/















































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向井康治

ガーデン工房 結 -YUI-は、埼玉を起点に植物を中心に据えたガーデンデザインと設計・施工を仕事とする会社です。
ただし、面白い仕事であれば時には利益も距離感覚も忘れ去る脳天気ぶり。
だから、この仕事にはいつも様々な出会いがあります。人、植物、もの、本、言葉、音楽…。

結 -YUI- はネットワークです。
それは多彩な技術や知識を持った人々が持てる力を共有し合うこと。
人と自然界の美とが満を持して出会うこと。

わたしが文芸、農業、インド、土木、外構、アウトドアと巡ってきた先の到達点は、おそらくそれらみんなの要素を遺憾なく結集することのできる、小宇宙 「ガーデン」でした。

ガーデンデザイナーとして、ガーデナーとして、これまでの、そしてこれから先の「出会い」を余すことなくお伝え出来ればと思います。

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