キュー・ガーデンズⅠ~イングリッシュ・ガーデンの旅 05
テーマ:イングリッシュガーデン
2009/11/20 06:16
さて、イギリスの旅の3日目はロンドン地下鉄に乗り、王立キュー植物園をめぐる旅です。
先ほどまでわたしは、そこで撮ってきた膨大な量の写真を前に、これをどういった切り口で紹介していけば良いのか、途方に暮れていたところでした。
で、それは昨年6月22日の朝、キュー・ガーデンズ駅から最寄りとなるヴィクトリア・ゲートをくぐったわたしが抱いた感慨と、とても良く似ています。
この広大で、とりとめがなく雑多で、どうしようもなく有名な世界遺産の植物園を、たった一日で消化・吸収するにはいったいどういう周り方をして、何をどう見れば良いのか
目の前にはヴィクトリア時代に建造された大温室パーム・ハウスが、その巨大な姿を現していました。
ここにはイギリス園芸史に名を残してきた歴代のプランツ・ハンターたちが、世界中から収集してきた熱帯植物たちがもちろん今も生きたまま収められています。
さらにこの植物園には、バラを原種から順に辿れるというローズ・ガーデン、もっとも古くて250年の齢を数える巨木たちを始め4万種以上の植物が育てられています。さらには650万種の標本を収蔵すると同時に、1730年の植物園のスタートよりさらに1世紀ちかく古い歴史を持つキュー宮殿や、シャーロット王女のコテージも存在します。
で、途方に暮れたわたしが決めたのは、とにかく植物園であったにしても、個々の植物にとらわれることなく、ガーデンとしての美しい景色を写真にしていこう、そのような視点でひとつひとつのエリアを俯瞰していこう、ということでした。
その上でさらに時間の余裕ができたら、個々の植物ひとつひとつを写真に納めていくつもりでした。
ですからやはりここでも、風景として美しいキューを紹介していこうと思います。
ヴィクトリア・ゲートからパーム・ハウスを左手に見て北に向かうと、小さなウッドランド・ガーデンがあり、その中央にアイオロスの丘があります。アイオロス、ギリシア神話に登場する風の神です。
最初に訪問したのは、その丘の下に拡がるバラのアーチとナーセリー、ハーブ・ガーデンや・ベジタブル・ガーデンなどがまとまったエリアです。
まずは丘の麓を巡ると宿根草を中心としたボーダーには、デルフィニウムやユーフォルビア、アルケミラ・モリスなどが競うように咲き誇っていました。
バラのアーチは連載の初回で紹介しましたので、まずはハーブ・ガーデン。
ベジタブル・ガーデン。
そして、グラス・ガーデン。
その先のデュークズ・ガーデンの由来は分かりませんが、美しいボーダーでした。Dukeさんを記念して作ったか、Dukeさんその人が作ったか…
そして、魅惑のロック・ガーデン!
数々の植物を展示しながらも、その全体像の美しさは見事でした。
もちろん、ここにはその後も何度か戻ってきて、乾燥や暑さに強い植物のリストを作るためアップの写真をシャカシャカ撮りました。
以上、全体で121万m2あると言われるキュー・ガーデンズのうちの、およそ20分の1ほどのエリアのご紹介でしたが、でも、やはりこのあたりがもっとも凝縮された、見応えのあるエリアだろうと思います。
ここで少し余談です。
ケンジントンのホテルは2人で1部屋を使っていましたが、同室の男性が佐野契さん。建築家でいらっしゃいます。
部屋で過ごす時間はさほど長くはありませんでしたが、その短いながらもいろいろと語り明かした濃厚な時間の話題は、当然ながらガーデンと建築でした。
自由時間のほとんどをロンドンの古い建物の見学に充てている佐野さんからは、様々な建築様式についてレクチャーを受けました。ゴシック様式、チュダー朝様式、ネオ・ゴシック、ヴィクトリア朝様式…
一方、わたしはイギリス滞在中ずっと「森と庭園の英国史」という遠山茂樹さんによる著作を読み続けていて、特にこの頃はこのキューの歴史の項を読んでいた最中でしたので、ここのヴィクトリア朝様式建造物であるパーム・ハウスやその他のグラス・ハウスの数々については共通した話題となりました。
これらの美しい建造物群がなければ、世界の植物史はまるで違ったものになっていたに違い有りませんでしたし、キューがもっともいまその卓越した力を発揮している分野、植物の種の保存にも影響を与えたに違い有りません。
そして、この日の話題は1846年、このキューにもたらされたヴィクトリア・レギア…オオオニバスでした。
幾度も試みながらその花がようやく開花したのは1849年のことだと言われています。
午前中、二人は別々にその小さな子供なら楽に乗ることの出来るという巨大ハスの在処を探していたのでした。
パーム・ハウス、テンペレート・ハウスの他にもキューには大小様々なグラス・ハウスが存在しました。ですが、その中をくまなく探してもオオオニバスは発見できませんでした。
ランチの際に佐野さんと再会したわたしは、情報交換しました。
そして「森と庭園の英国史」の中に、ジョゼフ・パクストンがこの植物のために新型の温室を作ったという記述を発見しました。
そして、それはパーム・ハウスから少し離れて森の中に、ひっそりと建っていました。
ウォーターリリー・ハウスと呼ばれる建物の中に、オオオニバスは今もしっかりと生きていたのです。
他のハスたちは美しい花を咲かせていましたが、残念ながらオオオニバスはまだつぼみがほのかに色づき始めた頃でした。
いえいえ、贅沢は申しますまい。
その巨大な葉との出会いは、わたしに十分な感動を与えてくれたのですから。
さて、次回は広大なウッドランドに飛び出して、キュー・ガーデンズの主役たる樹木たちを見て回りましょうか。
先ほどまでわたしは、そこで撮ってきた膨大な量の写真を前に、これをどういった切り口で紹介していけば良いのか、途方に暮れていたところでした。
で、それは昨年6月22日の朝、キュー・ガーデンズ駅から最寄りとなるヴィクトリア・ゲートをくぐったわたしが抱いた感慨と、とても良く似ています。
この広大で、とりとめがなく雑多で、どうしようもなく有名な世界遺産の植物園を、たった一日で消化・吸収するにはいったいどういう周り方をして、何をどう見れば良いのか
目の前にはヴィクトリア時代に建造された大温室パーム・ハウスが、その巨大な姿を現していました。
ここにはイギリス園芸史に名を残してきた歴代のプランツ・ハンターたちが、世界中から収集してきた熱帯植物たちがもちろん今も生きたまま収められています。
さらにこの植物園には、バラを原種から順に辿れるというローズ・ガーデン、もっとも古くて250年の齢を数える巨木たちを始め4万種以上の植物が育てられています。さらには650万種の標本を収蔵すると同時に、1730年の植物園のスタートよりさらに1世紀ちかく古い歴史を持つキュー宮殿や、シャーロット王女のコテージも存在します。
で、途方に暮れたわたしが決めたのは、とにかく植物園であったにしても、個々の植物にとらわれることなく、ガーデンとしての美しい景色を写真にしていこう、そのような視点でひとつひとつのエリアを俯瞰していこう、ということでした。
その上でさらに時間の余裕ができたら、個々の植物ひとつひとつを写真に納めていくつもりでした。
ですからやはりここでも、風景として美しいキューを紹介していこうと思います。
ヴィクトリア・ゲートからパーム・ハウスを左手に見て北に向かうと、小さなウッドランド・ガーデンがあり、その中央にアイオロスの丘があります。アイオロス、ギリシア神話に登場する風の神です。
最初に訪問したのは、その丘の下に拡がるバラのアーチとナーセリー、ハーブ・ガーデンや・ベジタブル・ガーデンなどがまとまったエリアです。
まずは丘の麓を巡ると宿根草を中心としたボーダーには、デルフィニウムやユーフォルビア、アルケミラ・モリスなどが競うように咲き誇っていました。
バラのアーチは連載の初回で紹介しましたので、まずはハーブ・ガーデン。
ベジタブル・ガーデン。
そして、グラス・ガーデン。
その先のデュークズ・ガーデンの由来は分かりませんが、美しいボーダーでした。Dukeさんを記念して作ったか、Dukeさんその人が作ったか…
そして、魅惑のロック・ガーデン!
数々の植物を展示しながらも、その全体像の美しさは見事でした。
もちろん、ここにはその後も何度か戻ってきて、乾燥や暑さに強い植物のリストを作るためアップの写真をシャカシャカ撮りました。
以上、全体で121万m2あると言われるキュー・ガーデンズのうちの、およそ20分の1ほどのエリアのご紹介でしたが、でも、やはりこのあたりがもっとも凝縮された、見応えのあるエリアだろうと思います。
ここで少し余談です。
ケンジントンのホテルは2人で1部屋を使っていましたが、同室の男性が佐野契さん。建築家でいらっしゃいます。
部屋で過ごす時間はさほど長くはありませんでしたが、その短いながらもいろいろと語り明かした濃厚な時間の話題は、当然ながらガーデンと建築でした。
自由時間のほとんどをロンドンの古い建物の見学に充てている佐野さんからは、様々な建築様式についてレクチャーを受けました。ゴシック様式、チュダー朝様式、ネオ・ゴシック、ヴィクトリア朝様式…
一方、わたしはイギリス滞在中ずっと「森と庭園の英国史」という遠山茂樹さんによる著作を読み続けていて、特にこの頃はこのキューの歴史の項を読んでいた最中でしたので、ここのヴィクトリア朝様式建造物であるパーム・ハウスやその他のグラス・ハウスの数々については共通した話題となりました。
これらの美しい建造物群がなければ、世界の植物史はまるで違ったものになっていたに違い有りませんでしたし、キューがもっともいまその卓越した力を発揮している分野、植物の種の保存にも影響を与えたに違い有りません。
そして、この日の話題は1846年、このキューにもたらされたヴィクトリア・レギア…オオオニバスでした。
幾度も試みながらその花がようやく開花したのは1849年のことだと言われています。
午前中、二人は別々にその小さな子供なら楽に乗ることの出来るという巨大ハスの在処を探していたのでした。
パーム・ハウス、テンペレート・ハウスの他にもキューには大小様々なグラス・ハウスが存在しました。ですが、その中をくまなく探してもオオオニバスは発見できませんでした。
ランチの際に佐野さんと再会したわたしは、情報交換しました。
そして「森と庭園の英国史」の中に、ジョゼフ・パクストンがこの植物のために新型の温室を作ったという記述を発見しました。
そして、それはパーム・ハウスから少し離れて森の中に、ひっそりと建っていました。
ウォーターリリー・ハウスと呼ばれる建物の中に、オオオニバスは今もしっかりと生きていたのです。
他のハスたちは美しい花を咲かせていましたが、残念ながらオオオニバスはまだつぼみがほのかに色づき始めた頃でした。
いえいえ、贅沢は申しますまい。
その巨大な葉との出会いは、わたしに十分な感動を与えてくれたのですから。
さて、次回は広大なウッドランドに飛び出して、キュー・ガーデンズの主役たる樹木たちを見て回りましょうか。
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