シシング・ハースト・キャッスル・ガーデンⅡ~イングリッシュ・ガーデンの旅 02

テーマ:イングリッシュガーデン
自然は直線を好まない

これは著名な風景式庭園の造園家であるウイリアム・モリスの言葉です。
(和訳は中尾真理氏の著作「英国式庭園」講談社選書によるものです)
わたしのとても好きな言葉で、ガーデン・デザインに迷いが生じた時には必ず思い出すようにしています。

ローズガーデン

もちろん、ガーデンは自然そのものではありませんし、ガーデン・デザインは決して自然の再現ではありません。
ですが、人が人工物に囲まれた暮らしに疲れ、自らを取り巻く空間に自然の要素を少しでも多く取り入れたいと願うところからガーデンが始まるとするならば、きわめてバーチャルなものでありながらもガーデンの個々の様子は自然に近しいものであるべきであると、わたしは考えます。
ですから、わたしも直線だけで構成されたガーデンのデザインは好みません。
レンガやブロックを切り刻み、削ったり貼り付けたりして作る幾何学的な工作物も好きではありません。
製作する職人が疲弊するようなガーデンに、本源的に人を癒す力など無いと思うからです。

…それはさておき。

シシング・ハースト・キャッスル・ガーデンの第2回目は、そうした視点も踏まえて庭園を構成する様々な細かい要素を、写真で拾い出しながら紹介していきたいと思いました。

ボーダー

なぜ冒頭で直線にこだわったかと言いますと、この庭園のデザインがとても多くの直線によって構成されているからなのです。
この設計を担当したハロルド・ニコルソンの手によるものですが、庭園の南北を端から端まで結ぶヴュー・ウォークを作ったり、ホワイトガーデン、ローズガーデン、ハーブガーデン、スプリングガーデン、モートウォークなど、主要なガーデンは全て直線によって構成され、直線で結ばれています。

ローズガーデンの先

そして、それら直線が生み出す強さ、固さ、鋭さといった印象を和らげるのが夫人であるヴィタ・サックヴィル・ウェストが選び出した植物の数々です。上記の写真を見ても同じ直線のアプローチが、使う植物次第で柔らかくも固くもなることが分かると思います。そして、ガーデンのひとつひとつはそのように柔らかく、ガーデンとガーデンを結ぶ動線は固くして、庭園全体にリズムとメリハリを付けていることが分かります。
個人のお庭に同じ事を当てはめれば、個々の庭を柔らかくして、それを結ぶラインである境界線上の外構であるとか、都市計画上の道路とかをきっちりした直線で構成することに相当するでしょうか。

そして、その直線自体を構成する素材に目を向ければ、その質感がとても柔らかいことに気付かされます。

舗装01

舗装02

舗装03

そして、さらにそこに植物が入り込んでくると、それは単なる動線ではなくなり、植物を盛る器のひとつとなってしまいます。

階段01

階段02

足元

異なる空間と空間を結ぶ役割を持つゲートや窓もまた、次の空間を切り取るそれ自体が装飾された額縁となり、そのまま次の空間に入り込んでしまうのとはまた、違う風景を現出させてくれます。


ゲート01

ゲート02

窓


さらには、ガーデンの脇役達もそれぞれに個性的でチャーミングでした。

プランタ

ミツバチの巣箱

井戸

まる一日をこのシシング・ハーストで過ごして、それでもまだまだ時間が足りないくらいに素敵な時間を過ごすことが出来ました。いま改めて写真を整理しながら、とても濃厚な時間だったと思いだしています。

と同時に、こんなペースですべての旅程をプログにしていたら、ヘトヘトになるに違いないと先を危ぶみつつ…

あっ、もちろんランチの際にはビールを頂いたことも書き添えて…

食卓

イングリッシュ・ガーデンの旅の初日を終わりにします。

エントランス

2日目は、ローズガーデンが圧巻のリージェンツ・パーク他、です。




















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向井康治

ガーデン工房 結 -YUI-は、埼玉を起点に植物を中心に据えたガーデンデザインと設計・施工を仕事とする会社です。
ただし、面白い仕事であれば時には利益も距離感覚も忘れ去る脳天気ぶり。
だから、この仕事にはいつも様々な出会いがあります。人、植物、もの、本、言葉、音楽…。

結 -YUI- はネットワークです。
それは多彩な技術や知識を持った人々が持てる力を共有し合うこと。
人と自然界の美とが満を持して出会うこと。

わたしが文芸、農業、インド、土木、外構、アウトドアと巡ってきた先の到達点は、おそらくそれらみんなの要素を遺憾なく結集することのできる、小宇宙 「ガーデン」でした。

ガーデンデザイナーとして、ガーデナーとして、これまでの、そしてこれから先の「出会い」を余すことなくお伝え出来ればと思います。

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