庭木の病害虫防除 其の3
前回の投稿の続き、実験の経過観察について。
まず、簡単にその実験の内容について整理すると
①つるバラに発生した(やや大量発生ぎみ)
アブラムシに対し、ニームが主原料の資材を
散布し、どのような効果が現れるのか?
②レモンの苗木についたアゲハ蝶の幼虫は、
この散布後、本当に脱皮阻害されるのか?
ということが主旨の新薬剤(資材)の使用実験。
さらに、ニームが害虫駆除材として効果があると
されているポイントを整理しておくと
Ⅰ.害虫を寄せ付けない(忌避効果:きひこうか)
Ⅱ.害虫たちの食欲を抑える(拒食効果)
Ⅲ.完全変態する昆虫の脱皮阻害効果
Ⅳ.益虫(害虫に対する天敵:テントウムシなどの
肉食系昆虫たち)には作用しない
Ⅴ.無毒性・生分解性だから人や環境にやさしく
安全で安心して使える
Ⅵ.化学構造が複雑で耐性がつかない
と、大体このようなものでしょうか・・・
ここから、実験の経過観察についてですが
まずつるバラのアブラムシですが、
今現在、壊滅状態となっています。
その経過を説明していくと、
散布後、5~6日でアブラムシの数は、
約8~9割(あくまでも私の主観で)は、
減少しましたが、まだ1~2割は残っていました。
それ以降、観察を続けていくと日毎に
アブラムシの数は減り続けて行きました。
一体どうやって減っていってるのかと、よくよく
観察を続けていて、あることに気づきました。
「この虫、そういえば昨日も見たよな?」
ある虫(?)が、バラの葉や蕾のうえを忙しく
歩き回っている様子を見て、
「これってテントウムシの幼虫?」と思い、
昆虫図鑑などで改めて確認!
やっぱりそうか。
それ以降、このテントウムシの幼虫の行動を
主体に観察していくと、よ~く見ていると、
アブラムシにかぶりつく(?)(吸いつく)姿を
確認。
しばし観察を続けていると、あっちにもこっちにも
ちっちゃいのやら・・・、その数推定20匹以上。
1匹のテントウムシやその幼虫が1日に
アブラムシを捕食していく数は
20~30匹とのこと。
仮に、この20匹のテントウムシの幼虫が
1日当たり20匹のアブラムシを捕食していけば
1日に400匹のアブラムシが減る。
2日で800匹。3日で1200匹・・・
「これは放っておいても、大丈夫やな・・・」
案の定、散布後10日もすると、アブラムシの
姿は全く見かけなくなった。
一方、レモンの苗木についた、アゲハの幼虫の
その後は。
まず、散布後数日して明らかに感じられたのは
その拒食作用について。
アゲハ蝶は卵から孵化した幼虫は、1・2・3齢・・
幼虫(こげ茶色の状態)から脱皮を繰り返し
終齢幼虫といわれる緑色のものへと変化し
さなぎの状態を経て蝶の姿へと完全変態して
いくが、その間に1匹の幼虫がこのレモンや
ミカンの葉を23~24枚分の量を食べてしまう
とのこと。
半分くらいしか食べないものもあるので、少なく
見積もっても1匹で30枚くらいの葉を食害する。
4~5匹の幼虫でこのレモンの苗木くらいだと
あっという間に丸裸にされてしまうようなものだが
散布後1週間以上経過した状態でこれだけ。
散布を行った時点では、終齢幼虫が1匹、
3~4齢幼虫が3匹確認されていたが、
そのどれもが死んでしまうことはなかった。
さらに、1週間経って全てが終礼幼虫にまで
変化していた。
しかし、終齢幼虫の4匹は、積極的に葉を
食害することなく、じっとしたまま動くことなく
その後も葉の食害は殆どなかった・・・
先にふれた1匹の幼虫のの食害のほとんどは
この終齢幼虫になってからのもので、
一向に葉を食べることのないこれらの終齢幼虫
達は当然大きくなることもなく、小さなまま
ある日を境に、このレモンの苗木から姿を
消してしまった。
死んでそこらに落ちている様子もなく、どこに
行ったか探して、ようやく2匹はさなぎ状態に
なっているのを確認できた。
それから、2~3日していづれもアゲハ蝶に
なることなく死んでしまった。
(かなり見ずらいですが・・・)
今回の実験の経過及び結果を整理してみると
①拒食作用があることは、ほぼ間違いないこと。
②脱皮阻害作用は、完全ではないものの確かに
ある。ただそれは完全変態の時に現れる・・・
③益虫(肉食系昆虫たち)には、作用しない。
④忌避効果については、散布後1週間くらいは、
アゲハ蝶が再三、さらに卵を産みつけようと
このレモンの苗木に近付いてきていたが、その
周りを飛び回っているだけで、寄り付けないと
いった様子で他に飛び立ってしまうといった
光景を何度となく確認できたが、1週間以上
経過すると卵を産みつけている姿が確認された。
光分解の早いこのニームが原料の資材の
忌避効果の作用は1週間といったところか・・・
今回のこの実験を通しての感想として、
この資材に対して、当初想定していた以上の効果
があったことと、全く想定していなかった
効果(?)に気づかされた。
それは、益虫によるもので、
これまで正直、益虫が害虫駆除に役立つといった
認識は非常に薄かった。
テントウムシの幼虫がアブラムシを捕食する様子を
目の当たりにした時、有機農法などに取り組んで
いる方々の思いに感じた気がした。
この瞬間、自分の中でそれまでにはなかった
新たな扉が開かれているような気がしてきた・・・