北海道へ 2
ヤスヒトです。
酪農の集積する北海道では飼料の高騰や牛乳価格の低迷で日本の酪農経営が危機的状況に追い詰められ、効率化と大規模化が進められた結果、持続可能な循環処理が出来ないほどの大量のふん尿が発生し、思わぬ環境問題になっていることを知りました。
ふん尿は堆肥化されて再利用されなければ、産業廃棄物です。
中でも乳牛のふん尿は、粘性が高い、泡が発生しやすい、悪臭がある、比重が重い、などの特徴を持つ取扱いの難しい厄介な廃棄物です。
堆肥にする場合、
1頭の乳牛から、ふん尿は1日に50~60kg。
水分を多量に含むため、そのままではドロドロの状態で発酵しません。
そこで水分の量を調整するために、ワラやおがくずなど(敷料といいます)を混ぜて堆肥舎へ積み上げます。
ところが北海道では気温が低く、発酵に関わる細菌の活動時期が短いため、糞尿の分解にも時間がかかります。
100頭以上を飼育する大規模な酪農では毎日のふん尿は膨大な量になります。
野積みされた堆肥から汚水が流れだして河川を汚染する。という環境破壊が大きな社会問題となって、平成16年「家畜排せつ物法」が施行されました。
この法律で堆肥舎や尿溜めなどの設置を義務付けましたが、今でも堆肥舎から堆肥があふれて、尿が排水などに流れている農家もあり、ついには河川だけでなく沿岸漁業への影響も心配されています。
春、ふん尿を撒く時、ここに観光バスは来ないそうです。
厳寒の北海道で冬の間に貯められたふん尿は、春になると一斉に牧草地や農地へ散布されます。
案内してくれた方は「春の撒き時に来てごらん、他の牧場が撒くと、臭いで鼻が曲がるなんてもんじゃないから」「ずっと離れた高速道路走っていてもわかるくらいだからね」と話してくれました。
北海道へ
ヤスヒトです。
今年の1月に
新潟大学の中野教授と、厳寒の北海道へプラントの視察に行ってきました。
この日の気温は、マイナス15度くらい。夕方だったので、気温はどんどん下がり、夜にはマイナス25度まで下がりました。そのまま足が凍りついてしまいそうな寒さで、足踏みをしていないととても立ってはいられません。
プラントのメンテナンスを行っている地元の方が、「この寒さだから、真冬には糞尿はあっという間に凍ってしまう。他の施設ではそれをボイラーで溶かして処理するが、ここは発酵熱を利用して糞尿が凍りつかないように出来る。そんな施設はここだけだよ。」と誇らしげに話して下さいました。
この牧場では250頭余りを飼育していて、
1日の糞尿はなんと12t!
発酵熱で溶かされた糞尿が固形分と水分に分けられ、固形分は堆肥舎へ運ばれます。
水分は3連の発酵塔でおよそ3日間、微生物の力で発酵処理され、もうもうと湯気を上げながら最終プールに溜まって行きます。
1頭当たり約60kgにもなる乳牛の糞尿は85%以上の水分を含みます。
通常そのままでは発酵しないため、木屑やワラ、おがくずなどで水分調整をしないと堆肥化できませんが、この施設では、そのままの糞尿から一気に処理ができます。
そのため、水分を調整する資材を追加することなく、極めて自然に近い状態で発酵処理できます。
しかも、60度以上の発酵により、草の種子や細菌類は死滅してしまい、最終プールに出てくる液肥はこの段階で匂いもかなり軽減されます。
この無希釈連続発酵技術がこの施設の特許技術です。
地元の人が「うしの糞尿の匂いは刺さる」と言うほど、プラントを通す前の匂いは強烈です。
帰りには近くの共同温泉で風呂に入ってから電車に乗りました。