秋をおきて
11月は旧暦では霜月、11月6日までは二十四節気でも降霜にあたり、11月1日から6日は「霜」の重なる数日間。7日には立冬を控え、いよいよ秋も終わりです。
秋霜を詠んだ和歌の代表といえば、
心あてにをらばやをらむ初霜の置きまどはせる白菊の花(凡河内躬恒/古今集)
訳:手折るならばあて推量で折るしかないだろう。初霜がおりて霜と見分けのつかない白菊を。
でしょうか。
千年を超える昔から、日本人は庭の木や花と、そこに交わる季節の移り変わりを愛でてきました。この時期の北海道で庭に咲く花はあまり多くはありませんが、その一つに挙げられるのが菊です。
昨日まで札幌・帯広・北見の各地でも菊まつりが開催され、盛況でした。
枯れてみすぼらしくなった花は通常あまり好まれませんが、菊に関しては「移菊(うつろいぎく)」という言葉が示す通り、平安貴族は、白菊の組織が霜焼けで損傷し紫がかったものがことさら優美であるとして愛し、別格のものとして扱いました。
この季節、美しいものといえば紅葉ですが、視点を変えるだけで野外にはまだまだ色々な発見があるかもしれません。
秋をおきて時こそ有けれ菊の花うつろふからに色のまされば(紀貫之/古今集)
訳:秋を過ぎてこそ菊は盛りだ。うちしおれていくほどに色の美しさが勝るのだから。
もうすぐ冬です。
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