青衣の女人
十二日は、青丹によし奈良の都に春を告げ、天平の昔からつづく、お水取りです。
夕刻、舞台造りの二月堂から、籠松明が振りまわされ、火の輪が渦巻き、火の粉が散り、豪快で、見る者を圧倒します。
お水取りは、二週間にわたる東大寺修二会の、行法の一つで、十三日未明(二時頃)、若狭井から香水が汲まれ、二月堂本尊十一面観音に供えられます。
若狭井は、若狭(福井県)小浜の遠敷川とつながっていると伝えられ、若狭では、お水送りの行事があると聞きます。
お水取りの行事の中で、神名帳、過去帳が読まれ、神々の名や、聖武天皇をはじめ、東大寺に巧のあった、多くの人々の名前が、次々に読み上げられます。そのんあかごろ、『青衣の女人』(しょうえのにょにん)と低く唱えられます。
名前も由来わからない、幻の女性です。朧のうちに、心寂しく、高貴な佳人を思い、心が揺らぎます。
修二会の間、二月堂の横にある、三月堂正面に、修二会の結界を示す、しめ縄が、笠に置かれている石燈籠があります。
この石燈籠が、有名な三月堂形石燈籠の本歌です。
鎌倉時代、石大工伊行末により、つくられたことが、銘文からわかります。
江戸時代から、名物燈籠として名高く、写し物が多くつくられています。
蕨手が一部欠けていますが、火袋はやや大きめながら、中台や笠が薄く、屋根の美しい曲線、ゆるく反る軒、高さが270センチと大きな割に、安定した姿で、威圧感がなく良い燈籠です。
丸彫りにちかい、厚肉彫の春日燈籠が全盛ですが、三月堂形石燈籠の上手な写し物を、お庭に入れられては、いかがですか
(三月堂横の手向山八幡宮にわ、八幡形本歌の石燈籠がありますが……)
修二会で、二月堂を飾る、椿の造花があります。
二月堂椿とも呼ばる紙椿は、花芯が黄、花弁が紅と白の紙で作られ、椿の生木に挿されます。
紙椿のように、花弁が、紅と白、色変わりの椿が作出される日が、待たれます。
紙椿を模した、土産の土鈴です。
奈良三名椿の一つ、『糊こぼし』(別名良弁椿)の原木が、東大寺開山堂にあります。
紅地に、糊をこぼしたような白斑の入る、一重咲き、中輪の秀花で、三月から四月にかけて咲きます。
燈籠、椿、まだまだ研究したいです。
コメント
トラックバック
http://blog.niwablo.jp/suharateien/trackback/86910