今週の1冊、「2040年の新世界」、ホッド・リプソン著、東洋経済新報社の後半

テーマ:ブログ


 今週の1冊、「2040年の新世界」、ホッド・リプソン/メルバ・カーマン著、東洋経済新報社です。長いので2回に分けて、今日はその後半。
 3Dプリンタの過去、現在、未来のお話です。
 
 後半では、まずは気になったフレーズを以下に。
 ・物体のデザインのディテールをキャプチャーするのがすばやくも簡単なプロセスになれば、だれもがデザイナーになれる。いったん3Dプリンティングがありふれたものになれば、だれもが製造者になれる。「かつて私が三年かかってデザインの仕方を覚えた複雑な物を、11歳の息子がデザインできるようになるんですよ。」ゴンサロは笑った。
 ゴンサロは続けた。「長期的には、ポイントクラウドのデータからパラメトリックス「形状ライブラリー」を生成することを目標にしています。これはリバースエンジニアリングにとって都合が良く、物体をデジタルな形式で正確に複製したり変化させたりしたい場合に、デザインのプロセスの能率を上げるのにも役に立ちます。要するに、次世代のデザインソフトは、現実をすばやくコンピュータへ持ち込むことになるのです」
 ・最後に、人類にまだ解けていない謎は、生体細胞に「スタート」ボタンが必要という事実だ。今日、たとえ細胞を完璧な形の足場のなかでしかるべき場所に植えつけることができても、その細胞をいったいどうやって始動させるのかは、だれにもわかっていない。自然は、臓器にどうやって仕事を始めさせるのかを知っている。われわれはそれを知らないのだ。
 ・生体情報と、マルチ素材によるコンピュータ主導の高精度食品製造は、健康維持の新たなフロンティアを開拓するだろう。あなたの体が必要とするものに最適化された食材の入ったカートリッジを備える3Dプリンタは、あなたが身につけているセンサーからリアルタイムで無線信号を読み取っている。専属シェフと栄養士がひとつになったようなキッチンの3Dプリンタは、あなたが家に入る時間にぴったり合わせて完璧な食事をプリントアウトする。プリンタはあなたの車がGPSのデータを読み取るので、渋滞に捕まったり遅くまで残業したりしていてもわかるのである。
 ・イェルンの説明によれば、もっと長期的なビジョンは、レスポンシブな3Dプリンタをデザインすることだという。彼が思い描いているのは建設用3Dプリンタで、現場にもち込み、家などの構造物をその場でプリントするものだ。このレスポンシブなプリンタは、センサーから流れ込むデータにリアルタイムで反応する。センサーからのデータは、インテリジェントなデザインソフトによって即座に解釈され、そのソフトがプリンタに、特定の環境の条件に最適化した構造物を作らせる。
 レスポンシブな3Dプリンタは、絶えず更新されるデザインの指示を受け取り、それに従ってプリントプロセスを調整する。将来のレスポンシブなデザインソフトは、プリントする構造物の構造を絶えず調整することができるだろう。インテリジェントなデザインソフトは、構造物をより安定させるために、接地面の形を調整することもできるはずだ。またレスポンシブでインテリジェントなデザインソフトは、形だけでなく、3Dプリンタで用いる素材、あるいは素材の組み合わせ、も、その場で変えられるようになる。
 ・今日の3Dプリンタはすでに、ほぼあらゆる素材で、ナイロンでもガラスでも、チョコレートでもチタンでも、セメントでも生体細胞でも、物体を作れるようになっている。
 任意の形を作り出せるということは、すでに工学デザインを超えて重要な意味をもつ。大量生産(マス・マニュファクチャリング)は、いまや大量特注(マス・カスタマいぜいーション)へと移行しつつある。将来、3Dプリンティングのテクノロジーが向上すれば、だれもが複雑な製品をデザインして作る力を手にするようになる。将来のものづくりにかかわる資源とスキルの壁は低くなり、イノベーションが大衆化され、人類の創造性のロングテールが解き放たれる。
 ・物体の機械的な機能性をコントロールする段階から、情報やエネルギーを処理する仕組みをもコントロールする段階に移るのだ。
 その日が来たら、われわれは(ほぼ)なんでも、携帯電話だろうと、プリンタからそのまま出て来るロボットだろうと、プリントできるようになる。ただし、どんなSFもそうだが、ここにも見過ごしている点がある。このようにしてできるロボットは、現在のロボットとはまったく異なる姿をしているだろう。従来のものづくりに課せられている制約はなくなるからだ。そのロボットは、人間が直接デザインするわけでもない。新たなデザインの余地が大きすぎて、人間には探れないからだ。パッシブな部分構造とアクティブな部分構造の両方で構成されるアクティブなシステムを、それほど自由に作り出せるようになると、新たなデザインの余地と新たな工学のパラダイムへの道が開かれる。それは、生物にも匹敵する協力なパラダイムである。

 本の最後に慶應義塾大学SFCの田中浩也准教授が解説を寄せていまして、
 ・私の所属する慶應義塾大学SFC(湘南藤沢キャンパス)では、「学生ひとりずつが、自分のためのオリジナル(3D)プリンタをつくる」授業を始めようと準備をしている。そして私の研究室では日々開発が進み、卒業生も続々と起業の準備を始めている。

 慶應にこんな研究室があるのだと知り、私も在学中にこれほど面白いテーマがあることを知る立場にあり、またその研究をすることに頭が行っていれば、もっと充実したキャンパスライフになったのかな、などと過去を悔いてみるほど、楽しい書籍の内容でした。
 まあ、これほどのパラダイム転換を生むかも知れないあまりに大き過ぎるテーマでは、慶應の研究室でやっていては世界のトップランナーにはなれないでしょうがね。
 同時に、そもそも最新の核心部分は本には書かないでしょうし、しかも日本語訳ですから訳者がどこまで本質を理解しているかでかなり割り引かれるでしょうし、この分野はもっと凄まじいステージに入っているのかも知れません。想像するだけで凄いことですよね。
 もっと深く知るには原文を英語で読む必要があるでしょうし、日本語訳されていない書籍がアメリカに沢山あるのかも知れません。
 いろいろな意味で、相当程度の覚悟を持って勉強し直したり、死ぬほど考え尽くさないと、イノベーションを生み出すどころか、新しい潮流にさえ置いていかれかねない、そんなことを思ったこの読書でした。


 ロートアイアン、ステンドグラス、人工ラタン、輸入住宅・店舗デザインは、
 グッドライフデザイン株式会社
 http://gl-design.co.jp
 info@gl-design.co.jp
庭ブロ+(プラス)はこちら

プロフィール

グッドライフデザイン株式会社

 私どもグッドライフデザイン株式会社では、ロートアイアンやステンドグラスの製造・輸入・販売の他、輸入住宅のデザイン、リフォーム・リノベーションなどのサービスを行っています。
私どもの製品やデザインやサービスによって、美しい邸宅や店舗を増やしていくことで、いつかは日本の街並みもヨーロッパのように美しくなっていけば最高です。
【ロートアイアンのデザイン、製造、輸入、販売】
 日本では高価であり、しかもデザイン的に合うお洒落な邸宅や店舗が少ないことから、あまり普及が進んでいません。
 私どもでゼロからオリジナルデザインをさせていただき、ハンドメイドで本物を一品生産させていただきますので、必ずお客様のお洒落な生活シーンや店舗シーンをより瀟洒に飾ります。
 また、フランスの植民地であったベトナムの工場で、熟練工が製造しますので、より太くより瀟洒な本物を、より廉価でご提供いたします。

ホームページ

最近のコメント

最近のトラックバック

参加コミュニティ一覧