今週の1冊「ファーマゲドン」後半に、日本の住宅事情を想う
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2015/04/27 08:46
今週の1冊、「ファーマゲドン」、フィリップ・リンベリー著、野中香方子訳、日経BP社です。
あまりに長かったので、今回は後半部分です。
まずは、最も印象に残ったフレーズ2点を以下に。
「第2次世界大戦後、欧米の農業は集約化に向かった。そもそもの動機の一部は崇高なものだった。各国政府はそうすることによって、食料不足と、配給手帳に頼るような日々を早急に終わらせようとした。特に英国民は、大切な食料を運ぶ船をドイツのUボートに沈められた悪夢を忘れられなかった。そうした経験からどの国も食料の自給を目指すようになり、新たな法律が可決され、それがその後数十年の方向性を決めることになった。新戦略は、生産を増やすことに的が絞られていた。生産を倍増させようとする農家を後押しするために、巨額の税金がつぎ込まれたが、その長期的な影響については、ほとんど考慮されなかった。
英国では、1947年の農業法制定を機に、農業は工業化に向かい始めた。米国では、すでにその動きは加速していた。1933年に「ファーム・ビル(農業法)」が定められ、工業化を目指す農家に、補助金が支給されるようになっていたからだ。農家は最新の農業、機械、技術を使うよう奨励され、1種類の作物や家畜を育てるようになった。作物と家畜を交互に育て、家畜の糞が疲弊した土壌を復活させるという、昔ながらのサイクルは失われ、代わりに人工の肥料が使われるようになった。こうして農業は産業になり、自動車やテレビの製造と同じで、品質より量が優先されるようになった。農業革命の始まりだった。
政策と補助金が、この新しい動きを後押しした。農業大学は次世代の農家に新しい方法を教え、アドバイザーやセールスマンが田園地帯を巡って、農家の人々に、「集約化か、さもなければ廃業か」というメッセージを広めた。」
私は、ここに日本の住宅産業を想ってしまいました。最初は戦後復興や震災復興などの住宅事情から、質は問わず量を建てまくる国家的ニーズがあったため、当時のダイワハウスや積水ハウスが必要だったと思います。
しかし、いつしかそのような大量生産プラモデル住宅は必ずしも必要では無くなったにもかかわらず、その時点では既にあまりに巨大化し、企業の利益のみが追及され、日本の住宅事情は劣悪なまま、汚い街並みが未だに拡大再生産され続けています。挙句の果てには、これからのアジアに進出して、その毒を世界中にまき散らそうとしています。
この本にある衝撃の農業の姿(日本の農業の実態は未だ暴かれていませんが)と一緒だなと。
こころある新しい(というか古い)有機農業の担い手が育つように、消費者が自ら行動しよう、というこの本の結論に同じで、こころある建築家と工務店が素晴らしい住宅作り・街作りを出来得る環境を作るのは、やはり消費者自らの選択しかない訳です。
しかし、この本の著者(団体)のような、触媒となれる力ある存在が必要なのかも知れません。あまりに敵は強大です(国土交通省を頂点とする行政、ダイワハウス・積水ハウス他のハウスメーカー、これらの取り巻き大手建材屋など)から。
「わたしたちが何を買うかによって、動物福祉も含め、農業のあり方がいい方向に変わると信じている。「思いやりのある消費」は、質の高い食べ物を選び、世界をファーマゲドンから救う素晴らしい方法だ。わたしはこうアドバイスしたい。まず、地面で生産された食物を買おう。工場ではなく真の農場で作られたものを。残り物を大切にして、食品の廃棄を減らそう。そして、肉を食べすぎずバランスのとれた食事をしよう。地面で生産された食品を買うには、「平飼い」「牧草育ち」「屋外飼育」「有機」というラベルがついているものを選ぼう。反芻動物(羊と牛)の肉と乳を買おう。最も持続可能な選択肢であり、どちらも牧草を食べ物に変える。
豚と家禽は、放し飼いで有機飼育であっても、欠点がある。現在のところ、それらは主に穀物や大豆で育てられている。EUの法律は食品廃棄物を家畜に与えることを禁じている。この法律はいずれ廃止され、自然のリサイクルの名手であるそれらは、再び野を駆け回るようになり、人間が食べられないものを食べられるものに変えてくれるだろう。しかし当面は餌には目をつむり、放牧した豚と鳥の肉と卵を買うことが、よりよい食品を手に入れ、動物によりよい暮らしをもたらす手段となり、未来のより大きな変化を加速することにもなる。
「農場直送」「地方直送」「自然」「新鮮」といったラベルが付いた商品は避けよう。おそらく工場式農場で生産されている。「トウモロコシで育った」というラベルの商品も避けるべきだ。(途中省略)
ファーマゲドンを回避するのは簡単だ。信頼できる地元の生産者や小売店を通じて、地面で育った(平飼いやオーガニック)家畜の産物を買い、それを残さず食べてごみを減らし、あわせて肉を食べ過ぎないようにすれば、田園地帯、自分の健康、動物の福祉のすべてに恩恵を与えつつ、食事を堪能することができる。」
TPP後に世界中から入ってくる食料は、こういった意味で大丈夫なのでしょうか?日本にそれを判断する能力・基準があるのか、ないのでしょうね。
そもそも、日本ではあまりこういった意味での話題が出てきませんが(まさにこの本の通り「産地直送」が最上級に安心・安全みたいな風潮になっていますが)、日本の農・畜・海産物は大丈夫なのでしょうか?中国工場のマックナゲットを酷く非難していましたが、日本でそれが無いと、なぜ信じられるのかしら。
しかし、東京の人達には、すべて口にする物のルートを調べてみるなんて、現実的だとは思えません。地方の農家を親族に持つ人のネットワーク化でもして、絶対的に安心な農業ネットワークでも確立する以外は、東京の人達は救われることはないですね。そんなサービス、もうあるのかな?
それ以外に気になったフレーズを以下に。
「コーネル大学の研究者は、トウモロコシや小麦の生産に入力されるエネルギー量と、出力されるエネルギー量(カロリー)に注目してきた。同大学のデヴィッド・ピメンテルのチームは、牛肉、豚肉、鶏肉の生産についても同様の計算をしてみた。動物が消費した穀類や飼い葉の量と、最終的に生産された動物タンパク質のカロリーを比較したのだ。
トウモロコシについて、その割合は4対1、小麦は2対1だったが、牛肉は40対1、豚肉は14対1、鶏肉は4対1だった。つまり、小麦やトウモロコシ(おそらくは野菜も)の栽培は、食肉の生産よりはるかにエネルギー効率が良いことがわかった。」
「現在、工場式農場の飼料になっている穀物と大豆をすべて直接人間の食糧にすれば、30億人もの圧倒的な数の人を養うことができるはずだ。鶏肉、豚肉、牛肉を作るのにどれほどの植物タンパク質が必要とされるかを考えると、それがはるかに有効な資源の使い方であるのは確かだ。1キログラムの上質な肉を作るのに、平均で6キログラムの穀類などの植物タンパク質が必要となる。しかし、この「肉」のすべてが、人間が食べるにふさわしいわけではない。カナダのマニトバ大学の計算では、工業的な方法で真に食用に適した牛肉を1キログラム作るには、20キログラムもの飼料が必要とされる。豚肉では7.3キログラム、鶏肉では4.5キログラムの飼料が必要となる。
香港を拠点とし、「グローバル・インスティテュート・フォー・トゥモロウ(明日のための世界機関)」というシンクタンクを経営する環境問題研究家、チャンドラン・ナイールは、今後40年で起きる人間と環境の破滅を回避するには、食料価格の決め方を根本的に変える必要があると考える。政治家にはおそらくできないだろうとしながら、彼は、消費者が支払う額と生産にかかる費用の差を是正するために、工場式農業で生産された肉の価格を大幅に上げる必要がある、と主張する。4ドルのハンバーガーの価格は、外部要因(穀物を肉に変える費用や使用される水とエネルギー)を計算に入れると、「ほぼ100ドルになる」と彼は言う。
ナイールはされに話を進めて、急成長する中国とインドの人々が米国人のような生活をすることは不可能であり、その理由は、「それを支えるだけの余裕がないため」と述べている。「アジアの政策立案者や経済学者に味方する知識人の多くは、2050年に50億人になるアジア人が、平均的な米国人と同等の生活をするのは無理だということを示す証拠を否定しようとする」と彼はBBCで話した。同じインタビューで彼は、現在米国人は1年でおよそ90億羽の家禽を消費している、と指摘した。アジアは、米国の約10倍の人口を擁するが、消費する家禽の数は、その2倍に満たない。
もしアジアの食肉消費が予想通りに増えれば、2050年のアジア人は2000億羽の鳥を消費することになる。「そのレベルの消費は起こり得ない。(中略)そうなれば、わたしたちが依存する経済システムは崩壊するだろう」とナイールは言った。」
「村から1キロ半ほど離れたところで、養豚場の周辺に生える木の様子がおかしいことに気付いた。大半はいたって健康そうだが、一群の木だけ、葉が落ちて幹が丸見えになっていた。あたりに人の姿はなかったので、近くまで行ってみることにした。トウモロコシ畑の縁を小走りで木のほうへ向かい、急勾配の土手を上がると、原因がわかった。巨大な泥沼が腐敗臭を漂わせていた。あふれ出たヘドロが数本のポプラの木の根元を覆っている。葉は落ち、枝は枯れ、ポプラは毒された水に沈みつつあった。
この泥沼は自然にできたものではない。急ごしらえの土手がまわりを囲んでいた。このところ気候は乾燥気味だと聞いていたが、汚水は縁の高さまで迫っていた。いつあふれ出てもおかしくない。だが、まわりには食用のトウモロコシが植えられていた。村人から聞いた汚染された土地とはここのことだった。排水は、すぐそばの養豚場から流れ出ていた。牧原がバイオガス・ダイジェスターで取り繕っていても、人目につかないこの場所に豚の糞を処理できていない証拠があった。
皮肉なことに、牧原は環境保全の取り組みが評価されて、国連の認証を受けている。バイオガス・ダイジェスターの煙突は、「UN-CDM(国際連合クリーン開発メカニズム)」の赤い文字で誇らしげに飾られていた。CDMは国際的なCO2排出量取引制度で、この枠組みにもとづいて、国際的企業が先進国による汚染を「詫びる」ために発展途上国の企業に融資している。この養豚場は、まさにその一つに選ばれた。融資したのは日本の企業で、牧原を支援することにより自国でCO2を吐き出し続ける権利を得ている。わたしから見れば、牧原は二重に罪を犯していることになる。中国の環境を破壊しているだけでなく、国連のお墨付きで、何千マイルも遠くの国を友人が汚染するのに手を貸している。わたしたちは恐れていた最悪の環境汚染を確認した。だが、まだ1匹の豚も見ていなかった。」
様々な示唆に富んだ、なかなかに面白い本でした。
皆さんも、是非!
ロートアイアン、ステンドグラス、リフォーム・リノベーション、輸入住宅・店舗デザインは、
グッドライフデザイン株式会社
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朝日に輝く田園調布の銀杏の若葉です
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2015/04/22 07:33
今朝、朝日に輝く田園調布の銀杏の若葉です。
この時期の日本の早朝の空気感はきっと、80歳まで生きようが、今日で人生を終えようが、今一瞬を生きるという感覚の中では世界で一番輝いて見えるのではないでしょうか。
何だかんだ言っても、先達が汚しまた浄化し、結果現在では相当に空気が綺麗になったんでしょうね。海外にちらほら出ると余計にそう感じます。
さて、清涼感はそれくらいにして、日本で最も厳しい規制が掛かった街の一つであろう田園調布の、さらにメインストリートの1本であるこの通りでさえ、汚いですね、街並みが。絶望的です。
電線を地中化したり、この美しい銀杏並木だったり、それなりに頑張っているのですが、さらに一歩踏み込んで、邸宅のデザインと色がバラバラ過ぎる、外構がバラバラ過ぎる、街ぐるみで統一して美しくしようという発想が全く無いからでしょうね。
建設会社側から見たら悪の巣窟に思える田園調布会も、街並みを美しくしたらどうかと思う側から見ると、全くもって手緩いと思えるから面白いものです。
せめて田園調布くらいは、日本に範を示すような統一した街並みを形成して、かつての栄光を取り戻して欲しいものです。
かなり本格的でお洒落な輸入住宅系の邸宅が多いので、せっかくですからその方向で統一してくれたら、なおベターですがね。
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目黒区のクリニックの足場が外れました
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2015/04/21 19:09
目黒区のクリニックの足場が外れました。
私どものロートアイアン(もしくはアイアンワーク)の出番はもう少し後になりますが、この素敵な建物のデザイナーさんの意図を壊さずに、それでいてアクセントとしてどこまで建物を引き立てられるか、楽しみと怖さが両立しています。
さらには少しでもロートアイアン(もしくはアイアンワーク)取り付け後の外観が評判になって、クリニックがより繁盛する助力となれば最高なのですが。
完成した製作品は、今週末いよいよホーチミン出航予定です。
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グーグル検索で「ロートアイアン」でも1ページ目に入りました
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2015/04/18 19:37
グーグル検索で、先日の「アイアンワーク」に続いて「ロートアイアン」でも1ページ目に入りました。
次はトップ5目指して、皆様の相変わらずのご愛顧と応援を、よろしくお願いします!
また、HPの内容もかなり拡充させましたので、お時間のある時にでもチェックしてやってください。こちらも忌憚なきご意見をいただけると、尚幸いです。
私としましては、今後の課題として、
・ベトナム関連の記事や、サービスの拡充
・全く新しいジャンルのロートアイアンのデザインの拡充
・お医者様向け(クライアントがほとんどお医者様なので)の記事や、サービスの拡充
・シニア層向け対応(特にロートアイアン・アイアンワークではない、一般消費者が捉えているキーワードへの対応)
・後から輸入住宅そっくり君サービス創設
この辺りを重点的に拡充させる予定です。
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農・畜産品についても、安倍政権の欺瞞を暴く、今週の1冊です
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2015/04/14 17:11
今週の1冊、「ファーマゲドン」、フィリップ・リンベリー著、野中香方子訳、日経BP社です。
あまりに長いため、今回は前半部分です。
余談ですが、第二の故郷と勝手に思っている大好きな信州の、茅野の有名なジビエ料理店で、ちょうどこの時期タラの芽やフキノトウや美味しい山菜をいただいていた際に、全くもって味が違うのを不思議に思いお店のご夫妻に伺いました。
そうしましたところ、ほぼ全国で流通している物は「養殖品」であると。それこそ道の駅などで売られている「産地直売」ですら怪しいものだと。「何言ってるかね~、お兄さん?」状態でしたね。
いやあ、その時は恥ずかしかったですね。かなりいろいろ名店と言われるお店も行っていたと思っていた頃でしたので、余計でした。
それ以来、農・畜産品については、自分で収穫ルートや栽培ルートや方法を目で見て確認した物しか、信用しなくなりましたわ。
そんな余談もあり、農・畜産品が「国産」と謳ってあると、何で安心なんでしょう?私は常々疑問を覚えていました。
規制緩和をして「企業」が農業に参入出来るようになると、何でバラ色なんでしょう?さらに強く疑念を持っていました。
政治ゲーム屋と化した一部農協の人間も、補助金でしか生きられない一部農家も、どうかと思いますが、「TPP」によって海外製品が安く入ってくると、すべてが上手く行くような論調もどうなのでしょうか?
その疑義に対して、今、世界中で何が起こっているのか、知識の幅を拡げてくれる、かなり衝撃的なノンフィクション作品だと思います。少なくとも、無知ということは危険なことだ(為政者にとっては都合が良いことだ)と、改めて思い直した次第です。
そういった意味では、農・畜産品についても、安倍政権の欺瞞を暴く、ある意味そんな内容にも受け取れると思います。
前書きの一説が最もわかりやすいのでご紹介。
「ありがたいことに今でも英国には、動物が自然の欲求のままに、牧草地を歩きまわって草を食むことのできる農場がかなり残っている。しかし農業の集約化を推進する政策が、反対されることなく続けば、動物を放牧地で幸せに育てようとする農場は、観光農園か、金持ちの私有農場だけになるだろう。英国と欧州の農業は、比較的最近、この集約化のゲームに参入したばかりだが、農業政策は、米国などですでに一般的になった疑わしく問題の多い集約化を奨励する。このまま行けばやがて、大規模養豚場、大規模酪農場、肉牛の密集飼育、それに遺伝子組み換え作物と遺伝子組み換え動物が標準になるだろう。
こうしたシステムが侵入した地域では、その影響がはっきり出ている。田園地帯は不毛になり、生産活動の主軸となっている動物や作物以外は、ほぼ排除されている。家畜にとって集約化はしばしば悲惨な苦しみをもたらし、その結果、生産物の質は落ちる。毎年、世界全体で700億頭もの家畜が生産されているが、そのうち3分の2は工場式畜産によるものだ。それらは生涯を通じて屋内で飼育され、機械のように扱われ、自然の限界以上の生産を強要される。典型的な工場式酪農場の乳牛は、あまりに多くの乳を無理やり生産させられるために、若干5歳で、平均寿命より10年も早く疲弊し、使いものにならなくなる。
家畜たちの苦しみに心を動かされない人でも、集約農業がもたらす大量の廃棄物と高脂肪で低品質の肉についてよく知れば、そのシステムは果たして正しいのだろうかと考え直す気になるだろう。もはや家畜は大地に立つこともなければ、牧草やかいばを食べることもない。それらの餌は遠方から、時にはいくつもの大陸を超えて、運ばれてくる。家畜たちは、世界で生産される穀物の3分の1、大豆粕の90パーセントと、漁獲高の30パーセントを消費する。直接、人間の食料にすれば、何十億もの飢えた人を養える量だ。
一方、飼育の場である小屋は、しばしば病気の温床になる。非常に多くの動物が、きわめて狭い空間に詰め込まれるのだから、無理もないだろう。そのような飼育方法は、病気を防ぐため大量の抗生剤に依存しており、その量は、世界で使用される抗生剤の半分に相当する。その結果として、抗生剤が効かないスーパーバグ(強力な耐性菌)や、新たな致死性のウイルスがうまれるのではないかと懸念されている。」
本章ではこれらを細かく紐解いている訳ですが、印象に残ったフレーズを以下に。
「しかし、わたしには知る由もなかったが、当時すでに鳥の姿は消えつつあった。1979年から20世紀末までに英国の田園地帯では、10種の鳥、1000万羽が姿を消した。それは英国にとどまらず、オックスフォード大学の科学者グループによると、ヨーロッパの鳥類の5分の1にあたる、116種が危機的状況にある。「第二の沈黙の春」の警告として、農業の集約化が原因なのは、「明々白々だ」と彼らは語った。
消えたのは鳥だけではない。家畜の姿も消えた。50年ほど前から、豚、家禽、牛は農場から姿を消し、工場式の畜産場で飼育されるようになった。生け垣で仕切られた農場で作物と家畜が自然とともにうまく循環していた農業は、過去のものになりつつある。英国の田園風景の象徴だった生け垣は消え(1980年から1994年までに10万キロメートルが焼失した)、農家は一種類の作物を集中的に作るようになり、疲れた土を肥沃にしたり害虫を駆除したりするのに、どんどん化学物質を使うようになった。産業革命は田園地帯を直撃し、好ましからざる結果を招いた。
英国鳥類保護協会のクリス・ミードが地域の鳥類クラブで講演をした時のことを覚えている。彼は「State of Nation's Birds(国内鳥類白書)」という本を出版したばかりで、文学や昔話によく登場する鳥、ヒバリ、キジバト、ユリカモメなどの激減について話した。集約農業が「野生生物の砂漠」をもたらすという彼の言葉を忘れることができない。彼の本は、畑のこぼれ種が壊滅的に減ったことを指摘していた。50年前に比べると鳥が食べられる種の量は、10分の1に減ったそうだ。また、化学殺虫剤は、虫を食べる鳥に同様の影響を及ぼしている。
具体的な数字は衝撃的だ。英国鳥類保護協会によると、ここ40年ほどでスズメの90パーセントが消えた。ヨーロッパヤマウズラは90パーセント、キジバトは89パーセント、ハタホオジロは86パーセント、ヒバリは61パーセント、キアオジは56パーセントがいなくなった。ムクドリやウタツグミは鳥の個体数を調査し、1996年に比べて、農地の鳥は半分以下に減ったことを発表した。その調査では、特に1976年から1980年代後半にかけて激減したことが明らかになった。それは、英国の農業が、従来の混合型から集約型へ大きく変化した時代である。」
「野生のマルハババチも飼いならされたミツバチも、深刻な危機に直面している。英国には24種ほどのマルハナバチがいたが、この70年の間に、2種が絶滅した。6種は絶滅の危機に瀕しており、残り半分も危険な状態にある。英国養蜂家協会は、今後10年以内に英国は自国のハチをすべて失うのではないかと恐れている。米国では、1990年代には一般的だった数種が姿を消した。世界のほかの地域でも同様のことが起きている。
ハチの減少が何を意味するのかを考えると寒気がしてくる。果物や野菜の大半は受粉をハチに頼っており、このままハチが減り続けると全世界の農産物の3分の1の先行きが危うくなる。政府がこの問題に気づくのは遅かった。2007年に米国の下院が、北米の受粉媒介者の状況について緊急公聴会を開き、500万ドルをミツバチの調査にあてることを決めたが、その金額はのちに半減された。
農家の人たちにじっと待っている余裕はなかった。彼らは莫大は費用を払って、商業的に飼育されたハチを借り、それをトラックで運ばせている。非常時の窮余の策だ。自然受粉に不可欠な野生のハチは、農薬まみれの単一栽培を行う工業型農業のせいで、生息地を奪われ、駆逐された。今のところ、ハチを貸すビジネスがその代役を務めている。」
「畜産業は膨大な量の抗生剤を使用する。20世紀末に、世界で生産された抗生剤のおよそ半分は食用動物向けだった。ある調査によると、米国で使用される抗生剤の80パーセントは農場で使用され、その70パーセントが病気の治療ではなく、予防や発育促進のために使われているそうだ。現在EUでは、発育促進のために抗生剤を使用することは原則禁止されているが、中には、抜け道を見つける農家もある。病気予防と称して少量の抗生剤を使用し、実際には発育を促進している。米国をはじめほかの国でも、このやり方は合法で、広く行われている。
当然ながら、抗生剤やそのほかの動物用医療品は、家畜の病気を治療するために使われるべきであり、それに異論のある人はいないだろう。だが実際には、貴重な抗生剤が、病気の蔓延をうながす悪質なシステムを支えるために浪費されている。多くの動物を互いと接近した状態で飼う工場式農場は、病気の温床となっている。欧州医薬品庁は、工場式農場は「薬剤耐性菌を進化し、繁殖し、生き続けるのに最適の環境」を提供している、と述べている。
工場式農場は実際に病気を生む。最近もウイルスも病原体は、動物が密集したところでは、とりつく宿主に事欠かないため、絶滅することはない。動物間で感染を繰り返すうちに病原体が突然変異を起こして感染力を強め、動物から人間へ、人間から人間へ感染するようになる恐れもある。。。(途中省略)
神経学者で公衆衛生の専門家であり、オックスフォード動物倫理センターのフェローであるアイシャ・アクタール博士は、「わたしたちは集約農場に膨大な数の動物を閉じ込めることによって、感染力の強い致死性のウイルスを速やかに培養するための実験室を世界中に作ったきた」と断じる。
博士は米国食料医薬局の「健康への新たな脅威とテロに関する対策本部」のメンバーでもあり、「殺したり混乱を引き起こしたりするのは、人間のテロリストに限ったことではない。工場式畜産は、テロリストと同等かおそらくそれ以上の危険性を秘めている」と警告する。」
「一般に鶏肉は、高タンパク質、低脂肪と考えられており、蒸し鶏やゆで鶏といったレシピは、ダイエット食の定番となっている。だが、工場式畜産が鶏肉の栄養価を著しく変えてしまった。もはや鶏肉は、健康的は食品ではなくなった。現在のブロイラーは、体重の5分の1が脂肪である。これは何十年前のりも太りやすい鶏を選択飼育した結果であり、また、餌も一因となっている。工場式養鶏場の鶏は、脂肪がタンパク質よりおよそ40パーセントも多い。
2005年、クロフォードのチームは、現代の鶏肉を分析した結果を発表した。それによると、今日のスーパーマーケットで売られている鶏肉は、1970年代の標準的な鶏肉に比べて、脂肪が3倍近く多く、タンパク質は3分の1しかないそうだ。結果として、現代の一部の鶏肉は、70年代の鶏肉より50パーセントカロリーが多い。クロフォードはまた、現代の肉用鶏はDHA(オメガ3脂肪酸の一種)を、「野鶏(野生の鶏)」の5分の1しか含んでいないことを発見した。
クロフォードは、このような鶏肉の栄養価の著しい変化の原因は工場式畜産にあるとし、伝統的飼育方法では、鶏は活発に運動し、植物や種子を食べていたが、集約的に飼育された現代の鶏は、高カロリーの餌を与えられ、ほとんど動けないことを指摘した。「そのような鶏はもはやタンパク質が豊富な肉ではなく、脂肪をたっぷり含む肉です。理由ははっきりしていて、主に穀物を与えられているためです」」
「1996年、アルゼンチンは南米で初めて遺伝子組み換え作物の栽培を許可した。現在、アルゼンチンで栽培される大豆はすべてGM(遺伝子組み換え)である。当初、その新しい技術は大成功をもたらし、収穫高は173パーセント増えた。しかし、それは続かなかった。GM作物の除草剤耐性をあてにして除草剤を多用するうちに、雑草の耐性が増し、同量の収穫を得るにはより強い薬剤を使わなければならなかったからだ。
その数値は驚くべきものだ。まだGMが使われていなかった1990年、農薬の年間使用量は3500万リットルだった。それが1996年には9800万リットルに跳ね上がり、2000年までにさらに急増して1億4500万リットルとなり、2010年には3億リットルに達した。GM以前に使われていた殺虫剤と除草剤のおよそ10倍である。
事態を憂慮する地元の医師の組織、「農薬散布の町の医師団」のよれば、空中や地上から散布される農薬が住宅、学校、水源、職場にふり注ぐことで、毎年1200万人のアルゼンチン人がその毒素に暴露している。公衆衛生上の深刻な問題は増える一方で、そのような地域では、先天性異常や死産の率も高まっている。
特にひどい影響を受けているのは、サン・ホルヘ近くの貧しい地区、ウルサキだ。その町のがん罹患率は、2000年以降、30パーセントも増えたと報告されている。」
他、魚の養殖のくだりも、かなり刺激的でした。
皆さんも是非!
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