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原発放射能-除染の限界 避難する権利

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原発放射能-除染の限界 避難する権利
 
避難する権利、移住する手段の提供、そのために必要な経済的支援は、条件無しで認めるべきなのです。
その上での原状回復のための措置を考えることになります。その順番は逆では無いのです。

 個人の生命は憲法13条、25条に認められた権利であり、命への被害の発生は最優先で防止されなければなりません。
原発放射能-除染の限界 避難する権利
 放射性物質による人体への影響は、それがどれだけ少ない量であってもゼロでは無いとの考え方から、「実行可能な限り低く」抑えるようにとICRP国際放射線防護委員会の勧告でも指摘されています。
 原子力施設の危険性は、突き詰めればこの放射性物質が拡散されることにより及ぼされる人体への危険性ですから、行政庁が設置を許可した原子力施設に関して、そこから放出される放射性物質による健康影響をゼロに抑える義務が当然にしてあります。
この大原則は、いささかもないがしろにしてはならないのです。

○ 除染とは
 福島原発震災により放出された放射性物質は、おおむね岩手県南部から宮城県、福島県、茨城県、群馬県、栃木県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県を汚染し、さらに新潟県、山形県、秋田県、長野県、静岡県の一部にもその爪痕を残しています。
 この中でも汚染がひどいのは福島県浜通りと中通りですが、特に30キロ圏外では飯館村、伊達市、福島市の一部を含む原発から北西方向の強力な放射能の流れが認められています。
これらの地域は、チェルノブイリ原発事故の際には旧ソ連政府により強制移住させられた地域に相当する放射能が残留しているところもあり、本来ならば退避をすべき地域に相当しますが、国が決めた暫定的避難線量、年間で20ミリシーベルトに達しないとして、ほとんど避難地域から外されています。
 
そこで最近進められているのが汚染を取り除いて被曝線量を引き下げようという「除染」です。

 現在進められている除染は、大きく二通りに分けられます。
まず、平均が毎時1マイクロシーベルトないしは年間1ミリシーベルトを下回る地域における、ホットスポットと呼ばれる比較的汚染の強い場所の除染活動です。
これはほとんど東日本全域にわたって存在する可能性のあるもので、特に雨水が溜まる場所、塵などが吹き溜まる場所、普段から汚染物やゴミなどが溜まっている場所、雨樋、路地裏、屋根の下、高速道路や幹線道路沿いなどが相当します。

このような汚染の除去は積極的に進めるべきで、特に子どもたちが遊ぶ公園や学校などの敷地については詳細な測定を行って除染すべきです。
 茨城、千葉、埼玉、東京、神奈川、群馬、栃木、新潟、山形、秋田、そして岩手などの都市部にはこういう地域が多いと思われます。
宮城については一部に福島県内と同程度の高い地域があることと山林がかなり汚染されていることで、福島県と状況はさして変わらない恐れがありますので、別に考える必要があると思われます。
 
もう一つの除染はまさしく「町ぐるみ除染」とも言うべき様相を呈している福島県内各地で行われる除染です。
除染にかかる費用の大半はおそらくここに投入されることになるでしょう。
 しかしながら、比較的小規模のホットスポットと異なり、こちらの除染は極めて困難な場合が多いのです。

○ 大規模除染の効果
 大量の放射性物質が降り注いだため、地上のみならず家々の屋根はもとより、田畑山林、空き地や公共施設など「面」で汚染されている地域が大規模除染の対象になります。
ほとんどの場合、年間被曝線量が1~20ミリシーベルトに達し、時間線量も数マイクロシーベルトになります。しかもこの汚染地は、簡単な除染では下がりません。
 特に深刻なのは森に囲まれた住宅地や農地です。
除染により放射線量が下がったとしても、数日ないし数ヶ月で元と変わらぬ線量に戻ってしまったり、場合によってはさらに高くなることさえあります。
多くは森に降り注いだ放射性物質が木々の枝葉や地上の腐葉土に蓄積し、時間と共に流れ出してくると考えられます。
 山に続く農地だけで無く、広い農場なども除染は困難です。
また、農業用水は山からの水に依存しますから、山岳地帯が汚染されていれば川の水に含まれる土壌成分はずっと汚染が続きます。
そういうことを念頭に置いて行わなければ、目先の放射性物質を取り除くだけでは効果は上がらないことになります。
 屋根に手を付けないまま庭や玄関先の除染をしても、しばらくして屋根からの汚染で元に戻るように、山をそのままにしたり、河川の水源をそのままにしては下流域の除染はあまり効果が無いのです。
 ならば、どうすれば良いのか。
除染と避難は対立させてはなりません。

○ 避難すべきは避難する
 除染をしている限りは避難できない。
そんな決まりはありません。

少なくても年間被曝線量が1mSvを超える恐れのある地域からは、子どもたちは避難をすべきですし、避難をした後を除染するようにすれば、二次被曝を避けることも出来ます。
 屋根などの除染に高圧放水を行えば、水と共に放射性物質も飛び散る恐れがあります。
その真下を子どもたちが歩いているなどと言うことはあってはならないわけですから、除染をしながら避難もすることが必要です。
また、一定以上の汚染が残ってしまう山林や農地は、除染そのもので被曝を多くしてしまうリスクを考えれば、しばらくは放置するほかないと思われます。
そのような見極めをしながら、被爆を避けるための除染をすべきであり、

闇雲で無理な除染行動は、かえって環境や健康に悪影響を与えかねないと思われます。

○ まず積極的に調査すべき
 いったいどれだけの汚染が、何処にあるのでしょうか。
 最近になってようやく広域の汚染地図が文部科学省から公表されましたが、県ごとに行う航空調査のために県境で切れていたり、ホットスポットは見えなかったりと、かなり荒っぽいものです。
 世田谷区で見つかったホットスポットは今回の原発震災と直接は関係ありませんでしたが、高濃度のラジウム226(*)という放射性物質が長年放置されていたためでした。
これを見つけることが出来たのも市民の綿密な調査のおかげです。
 被曝を避けるにはまず調べることが大事だということが明らかになった事例です。
 詳細で綿密な調査をして、避難すべき、または接近を禁止すべき汚染が無いかを見極めることが重要です。
その後、どこをどう除染すれば被爆が避けられるか、または除染は困難と判断するかを考える必要があります。
 全てを除染するなどということはできませんし、するべきでもありません。除染作業で出る膨大な汚染物の二次汚染も問題になります。
 最大の目的は被曝を避けることだということを、再度確認してほしいと思います。

(*)ラジウム226 キュリー夫妻が発見した放射性物質。ウラン238が崩壊して出来る娘核種の一つ。
半減期1600年でα線とγ線を出してラドン222になる。
世田谷のラジウムは密封されていたとみられ、気体であるラドン222などの系列核種は拡散しなかったと思われる。
強力な発がん性を持ち、現在ではほとんど使われないが以前は夜光時計の文字盤や医療用線源として使われていた。
今回見つかったのはかなり古く、塗装用のものとみられる。
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